第10話 ダンジョンモンスター

 入り口の兵士たちに許可をもらい、少し薄暗いダンジョン内部へと足を踏み入れた。




 真っ直ぐ続く一本道の先、奥の方は見通すことが出来ないぐらい薄暗いために不安な気分にさせられる。ダンジョン内部は、魔法で動作している光源が半永久的に中を照らし続けているが、この光源の光が若干弱いために真っ暗闇にはならないが輝度が足りないために薄暗くなっている。

 もっと遠くを見通したい場合は、松明などの照明道具をダンジョンへと持ち込めば良いのだが、毎回使うとなると費用がバカにならないし手荷物にもなる。

 魔法使いなら光を発生させる魔法を使えば照明道具も要らなくなるが、魔法を使うということは常に魔力を消費し続けること、魔法を使い続けている時にモンスターの奇襲を受けると別の魔法を使って対応することが出来ないというデメリットが大きすぎて、結局は緊急時以外の使用は控える事になる。そのため、最終的には少し薄暗い中でも目を凝らしてダンジョンを進むのが冒険者の定番となっている。


 長い通路を歩いて行くと、突き当りに階段があるのが見えてくる。階段までたどり着くと、フレデリカさんとシモーネさんと一度視線を合わせてから頷き合って階段を降りる。 

 階段を降りた先には3方向に分かれた、高さ5mに幅が10mぐらいある大きな道がある。内部は結構広いので、剣を振ったり魔法を放ったりするのには問題なさそうだった。

 クロッコ姉妹はいつも勘を頼って進む方向を決めているそうだが、それだと少し効率が悪いかもしれないと思って、僕が魔法で経路を探ることにした。


「魔力の消費は大丈夫か? 戦闘をするつもりなら、なるべく温存したほうが良いかもしれないぞ? 自衛のために少しは魔力を残しておく必要があるだろう?」

「コレぐらいの魔法ならいくら使っても大丈夫な位は鍛えているんですよ。ソレに、本当に無理そうなら相談して頼らせてもらいます」

 フレデリカさんは魔法使いとパーティを組んだ経験から、なるべく魔力を節約したほうが良いと忠告してくれた。しかし、実際に探索の魔法につていは全然魔力を使わないし大丈夫だと僕は考える。

 フレデリカさんは少し納得の言っていない顔をしていたが、僕が頼りにするかもしれないと伝えると、俄然やる気を出して任せろと非常に頼りになる返事を返してくれた。


 魔法を使って、今居る階層を調べて頭のなかに地図を作っていく。それほど広い階層ではないようで、5分ほどで頭のなかに今居る階層の全体地図を作成、そして次の階層へ降りるための階段がある場所へ向かう経路を描く事ができた。僕は魔法で調べた経路に沿って、クロッコ姉妹を案内しながらダンジョンを奥へと進んでいった。


 しばらくダンジョン内部の道を進んでいくと探索魔法に反応があった。反応のある方向へ注意を向けると、4本足で駆けてくるモンスターのものと思われる足音が聞こえてきた。


「前の方に何かいます。多分モンスターですが、コチラに走って向かってきています。モンスターの姿を確認してから攻撃に移って下さい」

 魔法で探った情報を2人に向かって報告し共有。フレデリカさんが大剣をしっかりと構えて備える。シモーネさんは弓を構え直して、無限矢を一本取り出してから矢を放つ準備をする。

「見えた! アーリーウルフが一匹、私が先に!」

 フレデリカさんが声を上げながら剣を振り上げて突っ込む。僕は彼女の援護をするために牽制用の魔法を放つ。


現れたモンスターの名はアーリーウルフ。体長はだいたい100cmぐらいの大きなオオカミ型モンスター、4本足を上手く使って素早く駆ける。アーリーウルフは素早い動きで翻弄するため為に、剣や弓で捉えるのが難しくて倒すのが少し面倒なモンスターと言われている。


 僕はフレデリカさんを援護するために、炎で創りだした矢“ファイヤアロー”を1本モンスターに向け発射。

 威力よりも矢のスピードを重視した魔法で、狙いを適当に定めて放つ。アーリーウルフに当って動きを止めた! と思ったら、ワーウルフは光の粒になって消えてしまった。

「あれ?」

 思わぬ効果に声が出た。


 ダンジョン内部に居るモンスターは攻撃を受けたり、傷を受けて血を流し続けると生命力が無くなる。そして、生命力が無くなればモンスターは死体になるのではなくて光の粒子になって、しばらくすると空中に溶けて消えていく。その時に、ドロップがあれば空間からアイテムが出現仕組みになっている。

 だから、ダンジョン内にはモンスターの死体が転がっているところを見ることはない。そして、ダンジョン内にいる一定のモンスターが倒されるとダンジョン内のどこかで復活して、またダンジョン内をさまよい続けるらしい。


 つまり、僕の牽制で放ったファイヤアローを受けたワーウルフが光の粒になったと言うことは……。

 僕は呆然と光の粒を見つめていた。そして、フレデリカさんが剣を振り上げた状態で顔をコチラに向ける。意気込んで突っ込んで行ったフレデリカさんの顔は恥ずかしそうな表情をしていた。

「えっと……、魔法は詳しくないし分からんのだが、すごい魔法だな!」

 剣を下ろして、彼女は僕とシモーネさんの元へと戻ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る