第9話 入場!ダンジョン探索

 広場での話し合いを終えて、リーヴァダンジョンの入り口へとやって来た僕達3人。




 リーヴァダンジョンは水辺の近くにあるダンジョンで、ダンジョン入り口の外壁は赤いレンガで覆われているために遠目からでも非常に目立って分かりやすい。そして、大きく開かれた出入り口は真っ直ぐになって道が続いている。しかし、先の方は薄暗くて奥まではハッキリと見えないために不気味さを感じる。


 赤いレンガの出入り口を見て薄っすらとしていた記憶が蘇ってきた。僕が短い間だが冒険者をしていた時に挑戦したことのあるダンジョンだったようで、たしか2,3回ぐらい来たことがあるような覚えがある。

しかし、あまり印象的ではなかったためにダンジョンについて覚えていることは2つだけ。

 一つは、ダンジョン内の気温は常に一定に保たれているために、わざわざ防寒・防暑のための防具や道具を揃える必要が無く気軽に攻略できる事。ダンジョンの中には炎を象徴としたダンジョンや氷を象徴としたダンジョンがあって、そこを攻略する場合はダンジョンに見合った暑さ対策、寒さ対策の準備をしないと大変な目に合う事がある。しかし、何故かココのダンジョンは内部の気温は24℃から上下1℃以上の変化はなく殆ど一定に保たれいてる。

 もう一つは、入り口から真っ直ぐ続く長い道があって、モンスターが出現する地下へと入っていく階段は100mもある長い道を進んだ先にある事だけ覚えていた。


 ダンジョン出入り口付近には、王国の女性兵士たちが立って警戒をしたり、少し離れた場所を歩いて見回ったりしている。コレも歪な世界の常識で、兵士の殆ど全員が女性である。現に、ココのダンジョンを守っている見える範囲に居る兵士達は全員女性のようだった。

 彼女達はプレートアーマーを身に着けていて、剣を腰にさしているために、かなりの威圧を感じるだろう。だが、僕にとって女性とアーマーの組み合わせがギャップに思えて、なんとなく見ていて可愛さを兼ね備えたかっこよさを感じる。


 彼女たち兵士は、冒険者のダンジョン入出管理、一般人や許可のない冒険者や盗賊がダンジョンへ立ち入らないように見張りをする事と、ダンジョン内部からモンスターが何かの拍子で溢れ出てきた時に討伐、無理ならば進攻を食い止めて街の方へ行かせないようにする警備等など、いくつかの仕事をしている。


「こんにちは」

 ダンジョンの入場許可証を魔空間から取り出して、出入り口付近を警戒している兵士の1人に声をかける。すると、女性兵士が直ぐに凛とした声を返してくれた。

「あぁ、こんにちは。ダンジョンか?」

「そうです。コレをお願いします」

 兵士の質問に、すかさず手に持っていたダンジョン入場許可証を渡して確認してもらう。しばらく確認が終わるまで待っていると、チェックしていた兵士が顔を上げて僕の顔を凝視し始めた。


「君は男性のようだね。済まない気が付かなかったよ」

「いえ、大丈夫ですよ。多分このローブのせいですね。このローブに魔法がかかっていまして、僕が男であることを気付きにくくさせてるんですよ」

 もう少し正確に説明するなら、ローブには人の意識を逸らす魔法とローブを被った時に顔の部分を暗くする魔法などの効果がある。そのために、ローブを着た人間の存在に気付きにくくなったり、気づいたとしてもローブを被った人間の顔を見ようと思わなくなる。さらに、顔の部分を覗いて見てもローブの奥は暗くなっているために僕が男性であることは気付きにくくなっている。

 男が重宝される世界だが、逆に希少だからこそ金になり人攫いに狙われる危険性もある。1人行動の多い僕は彼女たち人攫いの格好の餌食とされているので、この僕が身に着けているローブはそんな危険な目に合わないようにするための危機回避の手段の一つである。


 入場許可証を確認し終えた兵士は、側に立っていたもう一人の兵士にも確認するように命令して渡す。入場許可証を受け取ったもう一人の兵士はどこかへ行って、チェックしているようだ。多分、複製や偽装されていないかのチェックをするのだろうか、それともダブルチェックで間違いないようにする為だろうか。


 他の兵士が入場許可証をチェックしている間に考えを巡らせていると、最初に声をかけた兵士が話しかけてきた。

「どのくらい潜るつもりだ?」

「今日1日だけの予定です。夜になれば帰ってくると思います」

 兵士の視線は僕にだけ向いていて、後ろの姉妹はチラと一瞬見ただけ。だから、僕が対応して兵士の質問に答えていく。

 世間話として会話をしていくと、どうやら最近のダンジョン内のモンスターは凶暴になっているそうで、何人もの冒険者達が重症を負っているとのこと。幸い、死亡者は出ていないそうだが兵士に十分注意するように言い含められた。


「後ろの2人はくれぐれも無理のないように、そして彼に怪我の無いように十分注意すること。わかったな?」

「わかってるよ。彼は、傷一つ無いように守るさ」

 兵士が後ろにるフレデリカさんとシモーネさんの2人にも声をかけたと思ったら、少し高圧的な態度で2人に忠告する。そんな兵士に負けないような勢いで、フレデリカさんが言い返す。

 フレデリカさんと兵士との間が、少し空気がピリッと緊張したように感じたが、丁度その時になってダンジョンの入場許可証の確認に行っていた兵士が戻ってきた。


「チェック完了、問題有りませんでした。どうぞ」

 戻ってきた兵士は、僕達と話していた兵士に入場許可証を渡す。最後にもう一度だけ目を通して僕に返却してくれる。


「入ってよろしい。何度も言うようだが、十分気をつけるように。ご武運を」

 厳重なチェックを抜けて、ダンジョンへと足を踏み入れる僕達3人組。


「それじゃあ、張り切って行きましょうか」

「よっしゃっ! 行こう」「えぇ」

 僕の掛け声でテンションを上げてフレデリカさんは前衛の位置へ、シモーネさんが淡白な返事とは裏腹に気迫の篭った瞳をして弓を取り出し、何時でも撃てるように準備する。そして、僕は魔空間に仕舞ってあった戦闘用の杖を取り出して臨戦態勢を整え歩き出した。

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