修験者の皆様のお手伝い

本日、講談社文庫さまから出していただいている「杜ノ国」シリーズの最終巻、『杜ノ国の光ル森』が発売となりました。

完結編です。


これは祝わねばならない、と、今日はワインを片手に書いています。

さっきまでチューハイ(アルコール度数5%)でしたが、もういいや、どうにでもなれー!と、赤ワイン(アルコール度数14.5%)を飲みはじめました。

もういいんじゃないでしょうか。

いい感じに酔っぱらっています。


ほろ酔いだとどんな文章を書くのかなーという実験で書いてみようと思い至り、ここに書いています。

(ということは円堂さん……明日には消えるかもしれないですね…!)

(そういうことですね、円堂さん)


「杜ノ国」シリーズは全4巻になりました。

字数でいうと60万字くらいで、大長編と呼んでいいのではないかと思います。

大長編を書くのは、わたしは3度目ですが、始めるためには情熱を、終わるためには知性を必要とする…と、思っています。

終わるのはめっちゃ大変なんですよ。

自分の感覚ですが、読者さまが思っているよりもずっと大変です。多分。


ともあれ、この話を書くあいだに、いろんな出来事がありました。

あれもこれも何かの項目ではランキング1位なので、甲乙つけがたいんですが、一番特殊だったのが、水行かな、と思います。


読んでくださった方はお分かりかと思うのですが、「杜ノ国」シリーズには水行がたびたび登場します。

それが日本のうんぬんだからなんですが、水行とはいったいなんぞや、どんなもんなんや?

というところから、わたしははじまったので、まずは滝行に出かけました。


私の周りには、私が尊敬する面白い友人、知人がたくさんいらっしゃるのですが、十年以上お世話になっている美容師さんがいて、髪をカットしに行った時に、髪を優雅にブローしながら、こんな話をしました。

「円堂さん、わたし、この前ね、滝行にいったんですよ」

「滝行? 滝ですか?」

「はい、滝です。ちっちゃいんですけどね。興味ありますか? よかったら連絡先教えますよ~」

滝行。

めっちゃ興味ありました。なにせ、滝行が出てくる話を書いています。

すぐ電話しました。

電話をかけたら、おじいさんが出ました。

「突然ご連絡して申し訳ありません、滝行がしたいんです!」

と、頼みました。

すると、にこやかな声で、

「いいですよ、じゃあ当日、きてください」

と、いっていただきました。

(後で知ったのですが、人間国宝級の凄い方でした。)


そのご縁で、滝行へ行くべく、白装束を購入しました。

滝行をするための持ち物が、男性なら褌or白装束、女性は白装束だったのです。

Amazonで購入したのですが、カートに入れると、「ご一緒にこちらもいかがですか?」と、藁人形と五寸釘のセットを勧められました。

このセット(白装束+藁人形&五寸釘)が売れているのか…と、ふしぎな世界を見たりもしました。

夫も行きたいといったので、ふたりぶんの白装束を購入して、滝行に行きました。

いろいろ割愛しますが、般若心経を唱えながら滝に打たれてきました。


とにかく、たまたま電話をした方が凄い方だったのです。

「ありがとうございました!」

と、お礼を言いにいったら、

「ヒバをとる人を募集してるけど、くる?」

といっていただいて、ヒバがなにかもよくわからないまま、なんかおもしろそう!という子ども同然の好奇心ワクワクで「行きたいです!」とお願いしました。


ヒバ。

わたしは、なんのことやらさっぱりだったんですけど、ヒバは檜葉と書きます。

檜の葉っぱです。

ビバ!じゃないです。

ヒバです。

修験道のお寺では、祭礼の際に、ヒバの葉と護摩木を組んで、護摩を焚きます。

私は大変未熟で、いまだに詳しくわかっていないのですが、護摩とはなんぞや、山伏とは、修験道とは、ということも、すこしずつ覚えることができました。

とりあえずですね、わたしが電話をかけた方が、日本における修験道の超絶偉い方だったのでした。

そのご縁で、水行に行った後で、かれこれ三年近く、修験道の山伏さんや、僧侶の皆様にまじって護摩用の檜葉を準備するボランティアを続けています。


山に入って、木を切って、集めて、護摩用に束ねて――。

朝9時に山の中で集合!というスケジュールなので、本当に好きな人しか集まりません。

我が家も、休日に6時起床、7時半出発で集合地点に向かいます。

でも、ものすごく楽しいです。


作業そのものも楽しいですが、わたしが準備を手伝った檜葉は、祭礼で護摩に使われます。

大きなお祭りなので、大勢の皆様が集まります。

皆様、祈りにいらっしゃいます。

山伏の皆さまが祈祷をして、煙を天へあげて、天と地上を繋ぐ柱にして(ほんとに、煙を見事に操るんですよ。技術が受け継がれているんだろうなぁ…)、いらっしゃった方々が祈るんですよ。

わたしは、その方々が祈るための材料を準備しています。

なんというかもう、かけがえのない作業だなぁ…と、毎回思います。

わたしがもしも、たまに訪れて護摩に祈るだけだったら、わたしが叶えられる祈りはわたしの分だけですが、準備を手伝うことによって、祭礼にいらっしゃる大勢の方々の祈りを叶えるお手伝いができるんです。

叶えられるかもしれなかった願いが、自分ひとりぶんではなく、大勢のぶんになるんです。

すごい…となりました。

わたしは末端の作業者ですが、山伏や僧侶の皆様方はもっといろいろ感じるところがおありなんじゃないでしょうか。


ほかにもたくさんあるんですが、一番はこれだと思います。

物語を書いたおかげで、わたしの世界がひろがりました。

やめられないですよね。

楽しいです。


(※すこし修正しました。やっぱり酔っぱらってる時に文章を書いちゃいけないですね)

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