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「帰るなよ。」


そう呟く彼は、私を捕らえて離さない。

帰りたくても帰れないんですけど、なんて思える辺り、まだ私に冷静さは残っていそうだ。


だけど、私は立ったまま、宗田くんは座った状態で抱きつかれているというこの状況に、自然と鼓動は早くなっていく。


「わかったから、とりあえず上がろうか。」


どうしたらいいかわからないけど、とにかくいつまでも玄関先にいるのはよろしくない。

私は何とか宗田くんを家の中に引っ張り上げ、 ベッドまで辿り着いた。


1DKだけど、洋室が12畳くらいあるんじゃないのと思うくらい広い部屋だ。

テーブルとソファ、ベッドが置かれていてもまだまだ余裕はある。

うちの1DK(6畳)とは大違いだ。


ベッドに座った宗田くんは、立ったままの私をまた抱きしめてきた。

さすがにこのシチュエーションは動揺する。


「仁科、帰らないで。」


甘い言葉を呟くと、抱きしめる力が強くなる。

これは甘えられているのだろうか。

帰らないと、私どうなっちゃうの?

やばい?

やばいかな?


ドキドキと、心臓の音が激しくなってきた。

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