15

結局駅まで手を繋いで歩いた。


駅に着くと宗田くんは何事もなかったかのようにぱっと手をはなす。

同時に、私は大きく息を吐いた。


「じゃあ、私はこっちなので。」


可憐ちゃんが言う。

可憐ちゃんとは帰る方向が逆だ。


「うん、気を付けてね。」

「あ、俺も同じ方向。可憐ちゃん送るよ。」


小田くんがぱあっと嬉しさ全開の笑顔で言う。

ていうか、いつの間に名前呼びになったんだ。


「俺と仁科はこっちだから。じゃあまたな。」


宗田くんが私を引っ張るように改札へ入れる。

手を振る可憐ちゃんに後ろ髪引かれつつ、宗田くんの後へ続いた。


「仁科、送るよ。」


ホームで電車を待ちつつ、宗田くんが言う。

宗田くんと私の家は一駅違う。

ここからだと私の方が一駅遠いことになる。


「大丈夫だよ。一人で帰れる。どっちかっていうと宗田くんの方が心配よ。一人で帰れる?」


お酒、結構飲んでたと思うけど。

覗き込むように伺うと、へらっとした笑いが返ってきた。


「仁科と一緒にいたい。」


先程の夜桜を見ながら熱っぽい視線を向けられたことを思い出して、顔が熱くなってくるのがわかる。


ちょうど電車が入ってきて、特に返事もしないまま私たちは電車に乗り込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る