第4話 2人だと思ったのに

 --私には気になっている男子がいる。その人は今、新しいことを始めようと突っ走っている。

 放課後の音楽室前は、運動部員の声こそ聞こえるものの、人影はない。

 一人立って待っているのも疲れるからと、凛は座った。

 

「はぁ……」


 だんだんと暖かくなってきたものの、夕方ともなると少し寒い。本も持っていないし、何をしようか……と考えていると。


「あ、あのっ……軽音部の方ですかっ?」


 静かだった廊下に清らかな声が響く--。


「ふぇ!? あっは、はい!」


驚いた凛は変な声で返答する。


「あ、あの私、軽音部に入部したいんですけど……」


その少女のことを凛は知っていた。が、話すのは初めてだった。だって、この少女はいつも教室で本を読んでいて、ほとんどクラスメイトとは話さないことで有名だから。

 でもそんな彼女が入部希望者だなんて。それがわかるとすぐに凛は立ち上がる。


「え! 嬉しい! ありがとう! それで、楽器を弾いた経験はある?」


「はい! ギターなら!」


「まじ!?!?」


少女の後ろに唐突に現れた男は、来て早々驚嘆する。


「優人! 速かったねー!!」


「あぁ! 全力疾走したから! それはともかく、丁度よかったな!」


「うん」


ポンポン話が進む。


「そうなんですか?」


1人ついて行けていない春華はるか


「あぁ! 清野きよのさん、よかったら俺にギター教えてくれませんか!? お願いします!」


「もちろんです!」


元気になり始めた春華と、元から元気な優人。一方で、少し哀しげな表情を浮かべる凛。


(正直、2人きりで、私が色々教えてあげたかったんだけどなぁ……)








 

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2次元的恋愛の作り方 変太郎 @uchu

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