嫌悪に触れて

嫌悪に触れて


 知らなければよかったことを知って、それは胸の中でどろどろと淀み流れていきます。黒く艶のあるその液体は身体中に染み渡って僕の指先から嫌悪感として気化していきます。


 いよいよ頭の中まで溶け込んでしまったらどうしようという不安に駆られてしまって、小刻みに震えてしまいます。


 最近、自分自身が人より欠陥が多く余計なことまで考えてしまう愚かな人であることを自覚しました。もうどうしようもないのです。もうどうしていいかもわかりません。

 今まで必死に目をつぶって、目を背けて、見えないように聞こえないようにしていただけなのです。

 それがただ白日の元に晒されて、どうしようもなく悲しいだけなのです。


 道ゆく人はそんな事は露知らず、ただただ僕の耳元へ雑踏を届けてくれます。


 この雑踏を愛せたら、僕は少しでも変われるでしょうか。誰に問いかけたのかもよくわからないしょうもない疑問は、電車のドアから漏れ出した足音と暖気に混ざってふわりと改札を通って消えていきました。


 はい、それまでよ。これからも。

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