走馬燈売りの堕天使-マスティマ-

関隼一

第0話

-序-


刹那


はたりと身体は横たわっていた


僕はきっと、死ぬんだと思う


走馬燈って言うのかな。聞いた事がある。

今無数の映像や音がざわざわと駆け巡っているのがきっと其れなんだろう。

何がどういうものなのかは最早分からないけれど。


しかしこうなってみると死とはなんて無情なんだと耽ってしまう。

今更自分にはどうにも出来ない訳だけど、流れていく何でもない風景や情景がなんだか急に愛おしく感じて離したくなくなってしまう。


あぁ、そうか


僕は生きたかったのか

只、生きたかっただけなんだ


生を失おうとするこの一瞬になって初めて分かるだなんて。

あぁ、なんて不条理なんだろう、今なら世界中総てを愛する事だって出来るだろうに。


もしカミサマが居たとして、こんな小さな願いは聞き届けて貰えるんだろうか。


僕は、世界を

見てみたい、

愛してみたい。


もしこの声が誰かに聴こえていたならば


どうか僕の願いが、叶います様に…


そこでボクの意識は途切れた様な気がする。


どうにも曖昧さが抜けきれないのは

きっと、ずっと耳に残っている柔らかな声に包まれてしまったから。


夢か現か分からない最中に聴こえたあの声。


今にも泣きそうで、それでいて感情が上手く表せない様な声で。


只はっきりと、生きて。と

確かにそう、聴こえたんだ。

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