常識的に考えて、俺に惚れるのはお前じゃないだろ・・・
雪宮 雪
第1話 はじまり
私立藍恋学園。二年五組の教室。今は下校時間から暫く経った放課後ということもあり、教室には御門涼太以外の誰も居らずグラウンドから様々な部活の掛け声が静かに響いている。
涼太は机の中から慎重に一通の青春を代表する手紙、所謂ラブレターを取り出した。
-御門くんに伝えたいことがあります。放課後屋上まで来てください。待っています。-
「これってきっと、鈴城さんからだよな?」
鈴城凛。
俺と同じクラスで男子から絶大な人気を誇る少女。涼太は例に漏れず彼女に恋をしている。
勉強も運動もずば抜けて出来がいい上に、高校生ながら子供らしいあどけなさを残した顔。おまけにスタイルも抜群にいい。
ここまでくれば誰もが同じ結論にたどり着いてしまう。彼女は高嶺の花で自分には到底手の届くような人物ではないという結論に。しかし今、机の上に置かれているラブレターは彼女からの物だと、俺には確信があった。
・ ・ ・ ・
涼太は教室から出た後、自然と口角が上がってしまうのを抑えながら屋上へと向かった。どくんどくんと高鳴る心臓。告白されたらどんな返事をしようか?やはりキザなセリフでも一つは用意したほうが良いのだろうか?そんなことを考えているうちに屋上へと続く階段の前に到着した。
「緊張するな・・・」
でも
「俺みたいなモブが鈴城さんと付き合えるなんて、俺もとうとう王道ラノベ主人公の仲間入りかぁ」
約束の場所までの最後の階段。一段一段上っていくうちに、涼太の心臓の鼓動はさらに速まっていく。今から起こる一大イベントに対する期待とほんの少しの不安を胸に、屋上の扉を力強く慎重に開いた。
そして・・・
「お待たせ!遅れてごめんね。それで、俺に伝えたいことって何かな鈴城さ・・・え?」
涼太はそこで言葉を詰まらせてしまった。今、涼太の目の前には予想していた、というよりも確信に近かった人物の学園一の美少女、鈴城凛・・・ではなく見知らぬ少女が立っていた。
涼太はそのとき少女のリボンの色が自分の学年と違うことに気が付いた。
「君、一年生・・・?」
「はい!今年からこの学園に通っています!先輩!」
涼太の問いに少女は元気よく満面の笑みで答えた。
涼太は少し落ち着いたところで、ふと屋上を見渡した。屋上には涼太と少女の二人しか居らず、春の夕日が二人に影を落としている。
「二人しかいないってことは、俺のこと呼んだのって君?」
涼太は恐る恐る尋ねた。
「そうです。私が先輩をお呼びしました。」
少女はさっきまでとは打って変わって真剣に涼太の目を見て、そう答えた。その真剣な表情につられて涼太も妙に緊張してしまう。さらに少女が続ける。
「今日は、先輩に伝えたいことがあります。」
涼太は息をのむ。少女は頬を赤く染めて衝撃的な一言を放った。
「先輩!好きです、付き合ってください!」
まさに予想外だった。
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