第5話 空の器は天上の夢を見る

 アリアドネの本体を破壊するだけとなった時。

「いいや――まだだ」

 ブラッドの声が響き渡った。

 キャノピーを弾き飛ばし、操縦席からブラッドが現れる。彼はネクタイを外し、スーツを脱ぎ捨てていた。

「素晴らしい。まさしく我が研究施設最高の兵器だ」

「嬉しくねえよ」

「だからこそ、外に出すわけにはいかない。おまえという存在は私の手で処理をすることとした」

 何をする気かわからないが、ブラッドがただの人間であることはスキャンした結果わかっている。

 シーズナルが何も言わないのであれば何の問題もないということ。警戒はするが俺をどうにかできることなどない――。

「――がッ――」

 突如として全身を突き抜ける痛覚信号。

 脳髄を駆け巡る衝撃に俺は目を回す。

 研究施設の残った壁を何枚も突き破り、十数枚ほどぶち破ったところで俺はようやく止まった。

「なん……だ……?」

 何をされた。俺は一切気を抜いた覚えはない。

 視覚を正常に稼働させ、注視していた。

 ブラッドの魔力が変な動きをしたと思った瞬間、俺は吹き飛ばされていたのだ。

「訳が分からないという顔だな」

 俺が穿った穴からブラッドが悠々と歩いてくる。

「そこまでの知識を脳裏妖精は教えていないのか? ふむ、知らぬはずはないが検証の余地があるようだ」

「シーズナル……?」

『体験しましたね? あれは魔法機関です』

「魔法機関? 知ってて教えなかったな……?」

『当然です。もうすぐ勝てると調子に乗っているマスターの鼻っ柱をへし折ってくださると思ったので』

 いや、俺、調子に乗ってなくない? とは反論しなかった。反論したところでシーズナルに言い負かされるだけなのだ。

「で、魔法機関ってなんだ?」

『マスターの常識に照らし合わせて考えるのであれば、この世界における魔法と同義です』

 魔法機関。シーズナル曰く、それはこの世界の人間が使うことの出来る世界を変革する力だという。

 熱量が機関を動かすように、己の心の莫大な熱量で以て、己の法を己に満たし外へ広げる超常の業。

 この世界は人族にとって様々な危険があるとは聞いていた。巨人や竜、その他様々な魔獣たち。

 それならば俺は思い至るべきだったのだ、それに対抗する力があるはずだという事実に。

 魔導サイボーグの力があれば何にも煩わされないだとか、敵はいないだとかちょっと考えていた自分が恥ずかしくなる。

 そんなわけがないのだ。やはりシーズナルの言う通り、俺は力を持って少しばかり調子に乗っていたようだ。

『わかればいいのです』

「ありがとうシーズナル」

 シーズナルの在り方は本当にありがたいと思う。思うが、厳しすぎるところもある。

『賢者は歴史に学びますが、愚者は経験でしか学べませんので』

「それ俺が愚者って言ってるよね?」

『まさか。何よりもこれらはマスターの概念にないもの。故に体験した方が早いと思っただけです』

 ともあれ、魔法機関というものを実際に体験してわかったことは、アレは俺が思っているよりも魔法じゃない。

 魔法というよりかは必殺技というか、固有技、そういうレベルのものだろう。個人にとってたった一つの異能力と呼ぶべきものだ。

 竜も巨人も、あらゆる魔獣も、魔王ですら人間族がその想いの総てで倒すと誓いくみ上げた術理だ。

「それがおまえの魔法機関、か」

 ブラッドがいつの間にか身に着けている大外套。それこそがブラッドの魔法機関によって現出した彼の力そのものなのだろう。

「ふむ、どうやら脳裏妖精から説明を受けたようだ。その問いについて答えるならば正解だ。これが私の魔法機関【雷帝の外套は天翔けるケラウノス・サーキット】だ」

 ばちりとブラッドの周囲で紫電が弾ける。

「私は劣等なのでな。出来ることはただ雷の如く進むことだけなのだ。不器用な男と笑うがいい。私は所詮、何かを犠牲にせねば誰かを救えぬ屑でしかない。だが、誰かを救えるのなら喜んで犠牲を差し出そう」

 そうして得た力は遍く全てを照らす雷霆の光。

 魔法機関を発動した今、ブラッドはまさしく雷そのものというわけらしい。

 その速度は今、体感した通りだ。

「私の魔法機関であれば魔導サイボーグの認識速度を振り切れるらしい。さあ、どこまでやれる」

 雷電の先走りが奔る。

 ブラッドが目の前から消え失せると同時に接近警報が鳴り響くも遅い。

 思考が追い付く前にブラッドの速度が俺の思考速度を追い越している。気が付けばもう背後にいる。

「――ッ!!」

『マスター!』

 だから、代わりにシーズナルが反応する。

 身体の初動を彼女が行い、かろうじて振り返る。そこで俺の思考が追い付く。

 腕をクロスし、ブラッドから放たれる拳を受ける。

 雷鳴が轟く。

 衝撃とともに俺の全身を貫くのはまぎれもない電撃そのものだ。

 それは俺にとってあまり良くないものであると理解する。

 莫大な電流はそのまま残っている生身である俺の脳を貫きかねないのを、脳みそそのもので理解した。

 一応、脳を覆う頭蓋はこの身体で最も硬く、毒や熱、冷気など様々なもの耐性がある。

 だが、完璧なものではない。

「もう少し強力な雷撃ならば貴様を処理することが出来るようだ。しかし、素晴らしい。魔導サイボーグは凡人を英雄へと変えてくれる。まさしく人類の希望だ。まだ行けるかね?」

「全然、平気だね」

 平気ではないという演算結果が出ているが気持ちで負けてはいけないという思いが俺に強がらせる。

「ならば耐久テストといこう」

 雷が轟き、稲光が走る。

 衝撃が音よりも速く訪れ、俺の身体はボールのように飛んでいく。

 痛覚反応が極大すぎてセーフティが刺激をカットしてくれたおかげで無事だが、殴られピンボールされるのを見るのは良い気分ではない。

 演算装置とシーズナルが必死に認識領域を更新しているのがわかる。

 光速を認識しなければ、ブラッドの魔法機関を破れない。

 それだけに見えてもまだなにも出来ないのがもどかしい。

「くっ――」

 認識の更新まで俺がもてば良いが、厳しいと言わざるを得ない。

 俺はこの身体の限界を知らない。どこまでやれるのかわからない。

 ――ならどうする?

 打開策が必要だった。

「魔法機関、よ!」

 そこに第三者の声。それが答えを教えてくれた。

 どこかに蹴飛ばしてそのままだったアリシア主任がここに追い付いてきたらしい。

 魔法機関には魔法機関。

 それがこの世界の常識。

 なるほど、確かに魔法機関に賭けて見るのも悪くないだろう。

 問題は、こんな土壇場で使い方も知らないものを使えるかどうかだ。

『マニュアルはあります。参照している余裕はありませんので、マスター次第です』

 視界の片方に表示される文字の羅列。

「い、や、これは」

 理論の最初から書いてあるこんなのどうしろと!

 ただでさえボコボコにされている中でこんなものを呼んで対策手段を構築しろと!?

『意味がわかる必要はありません。マスターはそういう存在です』

 シーズナルがそう言ってくれて、どういう意味かと思う前に託宣じみた直感が降りてきた。

 理解する必要はない。俺の場合、そういうものとが重要なのだ。

 そうすれば現実はするりとその通りになる――。

「……根源接続:魔法機関――」

 そうそれは常にそこにある。

 己という存在そのものが司る場所。

 魔法機関は己の心の熱量で駆動するのだ。

 それは己が望む己。

 あるいは、世界が望む己の姿そのものだ。

「【空の器は天上の夢を見るデイブレイク・ドリーマー】」

 言葉は滑らかに俺の口から出てきた。

 発動する魔法機関。

 俺の心臓として駆動する魔導炉心の高鳴りが世界を改変するほどの力を生み出す。

 俺の意思が望むままに世界の法則を組み替えていく。

 まさしく魔法機関とは世界を改変し、それを力とするものであると俺は理解せずに受け入れていた。

「――――」

 光が爆ぜる。

 それは翠雷の輝き。

「魔法機関の発動。なるほど魔法機関の寄る辺は肉体ではなく魂……少なくとも脳に準ずるものであることがここに証明された。そして、それは――」

 ブラッドに最後まで言わせることはない。

 俺は光速でブラッドの顔面を殴り飛ばしていた。

 その動きはブラッドが見せたものと同じだ。

「私の魔法機関と同種のものか」

 俺が纏っていたのはブラッドが纏っているのと同じ外套だった。

「いや、まるで同一か――」

 超光速軌道にて連打を叩きこむ。

 ただそれだけでブラッドは俺が使う魔法機関が己が使う魔法機関と同じものであることに気が付いたらしい。

 当然だろう、この魔法機関を使うにあたり最適な動きとして選んだのは目の前にいるブラッドの動きそのものなのだ。

 さんざん受け続けてきた動きだ。魔導サイボーグならばラーニング出来る。

 ただそこに魔導サイボーグとしての能力が載っているのだから必然的に俺の方が上になる。

 どうにも俺の魔法機関とやらはそういう仕様らしい。

「ありえないことだが、許容しよう。そのような仕様もまたないわけではないということか。発想を柔軟にせねば。ありえないことなどないとな」

 同一の魔法機関は存在しない。

 それがこの世界のルールであるらしい。

 だから、俺の魔法機関はブラッドとは違う。ただ同じ能力を有することが出来る代物ということだけだ。

 そう、俺の魔法機関は――。

『相手の魔法機関をコピーする魔法機関』

「いや、そこは俺に言わせてくれよ」

 シーズナルに言われてしまったがそういうことだ。

 俺の魔法機関は敵の魔法機関をコピーして使える。そんな魔法機関だ。

「そして、魔導サイボーグの分、俺の方が上を行く」

『おや、また調子に』

「乗ってない乗ってない」

 純然たる事実なのだから仕方ないではないか。この魔導サイボーグの身体は、普通の人間よりも強いのだ。

 いや、これが調子に乗っているということだな。

 たとえ魔導サイボーグであろうとも、鍛え上げた人間には負けることがあるかもしれない。

 その可能性を考えていないといけない。

『そうです。人に不可能はありません。人とはいずれこの星の海の果てへと至る可能性にあふれた種族なのですから』

「なら、油断せずに、だな」

 骨格内積層武装格納庫から武装を取り出す。

 武骨な高周波ブレード。それはさながら竜の牙のような代物だった。

 高周波ブレードは基本的にありとあらゆるものを斬り裂ける。しかし、その切れ味にも違いがある。

 もとになるブレードが強ければ強いほど高周波ブレードの切れ味は上がる。

 この高周波ブレードはその中でも破格だ。

 葬天竜牙クインゲ・アトモスフェーレという。

 紛れもなく竜種の牙から削り出され研ぎ澄まされた刃だ。

「降参するなら今だぞ」

「降参はしないとも。私は死ぬまで止まらない。ここから逃げるのだろう。ならば殺せ」

「……そうか」

 互いに雷速機動に入る。

 超光速の世界の中、あらゆるすべてがスローになる。

 その中で、風が吹き抜けた。

 風が刃を運んでくれる。

 俺の刃は、ブラッドの拳よりも速く届いた。

 四肢を切り裂き、両断する。生々しい感触が気持ち悪い。

 一瞬の交差だ。

 だが、雷と化した俺たちにはそれで十分すぎる。

 どさりと、ブラッドが地面へと堕ちた。

「ああ、くそ。なんであんたらはこんな気持ち悪いことができるんだよ!」

「く、なぜ? 決まっている人類のためだ」

「なんで、そんなこと言えるんだよ、それならもっと別の方法だってあったはずだろ!」

「…………」

 ブラッドは答えない。もはや答えられない。

 俺はさらになにか言おうとして。

「っ――」

 施設が爆発する。

『あと数分のうちにこの施設は完璧に消滅します』

「時間がないか」

『他の研究者たちはすでに避難済みで残るは我々だけです』

「なら良かった、アリシア、最後に言っておくことは?」

「一言だけ……さようなら所長。間違ってたけど、あなたの思想だけは、素晴らしいと思ってました。罪は、必ず償います」

 そうブラッドに別れを告げたアリシア主任を抱え、俺は全力でその場から逃げ出す。

 背後で爆発が巻き起こる。

 ブラッドは爆発に完全に飲み込まれた。研究施設にあった大量の兵器類も同時に連鎖し爆発したおかげでセンサー類が総て意味をなさい。

 だが、きっとブラッドは死んだだろう。あの状態では生きているはずはない。

 俺たちはとにかく走った。

 止まったのは研究施設から遠く、森の中だ。

「今日は、これくらいにするか」

 俺は走っていられるが、アリシア主任の方が耐えられない。

「げぇゥ――」

 降ろした途端また吐いている。

 あまりにも憐れだったので背中をさすってやった。生まれたての小鹿のようにぷるぷると震えている。

「とりあえず、野営の準備をしよう」

『はい、指示をしますので、その通りに動いてください』

「了解」

 ひとまずアリシア主任を置いて、シーズナルの指示通り野営の準備をする。

 魔導サイボーグの身体能力とシーズナルの指示があれば、あらよあらよという間に焚火は起こり、眠れるだけのスペースが出来上がる。

 ちゃっかり獣除けの罠まで仕掛けられたので、シーズナル様様である。彼女がいなければ俺はきっとさっさと野垂れ死ぬだろう。

 魔導サイボーグがどれほどで野垂れ死ぬかはわからないが。

「ふぅ……長い一日だった」

『お疲れ様でしたマスター』

「おう。先生もお疲れ。アリシア主任は、落ち着いたか?」

「ええ……でも、本当に、これで……?」

「まあ、とりあえずあんたは自由だよ、アリシア主任」

「そっか……ありがとう……ええと……」

「哲也、甲野哲也だ。哲也の方が名前な。あとは脳裏妖精のシーズナルがいるんだけど、アリシア主任には見えないし声も聞こえないみたいだから紹介は省くよ」

「そう……彼女にもお礼をいっておいてください。助けてくれてありがとう。それと、あなたたちをそんなことにしてごめんなさい、と。謝って赦されるとは思わないけれど……」

『そうですね、首をねじ切っていいのなら許しましょう』

 ――だから、先生苛烈すぎだって。

『だから、甘いマスターでバランスを取っているのです』

 ――はいはい。

「改めて、私の名前はアリシア・ビロード。アリシアと呼んで」

「もう呼んでるよ、アリシア主任」

「もう主任じゃないから主任を付けないで良いってことよ。……本当に、ごめんなさい。謝ってすむことじゃないけれど……償いは必ずするから……なんだったらこの命でも、私の体でも好きにしていいから」

「そういうのは良いよ」

 なにせ、がりがりに痩せているのだ。あまりにも可哀そうとか憐れという気持ちの方が先に来てそういう気分になれない。

 あとはシーズナルがいるから恥ずかしさが勝るというのもある。

『気にしなくて結構ですよ、マスター。どうぞくんずほぐれつどうぞ』

 シーズナルは無視しておこう。

 やせ細ったアリシアは、きっとあまりものが喉を通らなかったのだろう。それくらいまで病むのならもっと早くにやめてくれればよかったのにとも思う。

 ただ、アリシアがやめなかったら俺はどうなっていたかわからない。鉱山とかに売られて野垂れ死んでいたかもしれない。

 それでアリシアのことが赦されるとかは思わないが、その前に気になった言葉があった。

「というかこの身体そういうことできるのか?」

 男子高校生にとってそれは結構死活問題……とまではいかないが最重要案件だ。どうなんだ。

 サイズはかなりのものだったのは確認しているが、機能までは確認してなかった。なんでついてるんだと思ったものだ。

 サイボーグってそういうことあまり出来ないような印象があるのだが。

「出来るわ。兵士にとって必要でしょう? ストレスの解消とか」

「もともと兵器目的だからそういうことが出来るようになっていると」

 色々と下世話なことを考えてしまうが、仕方ないだろう。俺はまだ思春期の男子高校生なのだ。

 それが何をどうして魔導サイボーグとかいうものに改造され、異世界で野宿なんてやっているのだろうか。

 もっとこう、勇者とかそういうものになりたかった。

『では、私と出会いたくなかったと?』

 ――それをいうのはずるいよ。

 しれっと俺の視界ではシーズナルは俺の隣に座って肩を寄せてくるし、なぜか彼女の匂いまでする気がする。

『嗅覚や触覚に侵入してますので、触れた感触があるのは当然ですよ。疑似的ではありますが』

 なるほど、そういうこともできるのか。となると色々とエロい妄想が鎌首をもたげてくる。

 それを頭を振って慌てて払う。

「けど、それがわかったとしてあんたを抱くとか襲うのはないな。もっと肉つけろよ、軽すぎだぞ」

「…………」

 そう言ってやったら、なぜか無言でアリシアは泣き出した。

「ちょ、何で泣く!?」

『流石マスター、泣かすとは鬼畜ですね。もっとやってください』

「いや、ちょ、そんなつもりはって何か悪かったか!?」

「ち、違うの、だって、心配されるなんて、思わなくて……」

「いや、あんた心配になるくらい痩せてるんだぞ、そら心配もするだろ」

「でも私は……あなたに酷いことを」

「あー、もういいからそれは。あんたが償うっていったんだから、それでこの話は終わってんだよ」

「でも――」

「でももなし。別に俺は聖人君主ってわけじゃないけどさ、美人の女の人とか殺せねえよ。それが助けてとか言われたらさ」

「……ふふ、なにそれ」

「お、やっと笑ったな。その方がいいぞ」

「じょ、冗談はやめて、ここんなときに……!」

『ジゴロですか。そうですか』

 ――だれがジゴロだ、誰が。

『自覚無しと来ましたか。やれやれ。きっとあなたの幼馴染という方も苦労したのでしょうね』

「なんで、熊谷の話が出てくるんだ……?」

『やれやれ』

 なぜかシーズナルにあきれられた。意味がわからない。どこがジゴロなのだろうか、普通に心配しているだけというのに。

『普通、自分を切り刻んで改造した相手を心配何てするはずないんですけどね。そういうところが良いのですけど』

「ともあれ、とりあえずどっか腰を落ち着ける場所を探さないとな」

『この付近では早々に我々の捜索がされたりして煩わしそうですね。辺境など一時的に避難してみては?』

「そうだな、辺境に行くか。そこでほとぼりが冷めたら熊谷とかクラスメートも探すか。生きてるといいんだけど」

「あ、そ、それなら私もついていっていい? もう研究所はないし……それに償いしないといけないから。そ、その、なんでもするから」

『マスターの判断に従います』

「そうだな。なら、一緒に行くか。その代わりこき使うからな」

「ええ、もちろんよ。奴隷の契約でもなんでもするわ」

「いや、そこまではいらねえよ……よろしく頼む。俺はこの世界のことについて何も知らないからな」

「ええ、よろしくお願いします。御主人様」

 ……ちょっとくらっと来たのは内緒だ。

『ふむ、マスターは奴隷とかメイド属性に弱いと』

 うるさーい!

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