異世界に召喚されたら奴隷として売られて魔導サイボーグに改造されました
梶倉テイク
誕生、魔導サイボーグ
プロローグ
「なん……で……」
研究施設のアラームが鳴り響く中で俺の目の前でへたり込んでいた彼女の声が響く。
「なんだって?」
丁度、襲ってきた敵を殴り返すと同時に、施設の一部が爆発を起こす。
爆風に彼女のくすんだぼさぼさの金髪と汚れた白衣がたなびく。
「理由なんているのかよ」
「だって……」
連鎖する爆発。施設保安部隊の怒声と魔導射撃音が周囲の音という音を氾濫させる。
彼女の蒼色の瞳はわけがわからない、意味がわからないというように涙でぬれて揺れ動いている。
そんな中で彼女は自分にナイフを突き刺すかのように言葉を絞り出す。
「だって……私は、助けてもらえる資格なんて、なにもない……!」
俺は迫りくる軍勢に対して拳を振るい、その魔弾を防ぐ。高周波ブレードの一撃を相殺、へし折りぶっ飛ばす。
そんな苛烈な戦闘の中でも彼女の声だけははっきりと聞こえていた。
「酷いことばっかりしてきた。命令だからって、仕方ないって言い聞かせて、ずっと、ずっと……! あなたにも酷いことばかりやってきた……!」
「そうだな」
そう答えながら前を見据えれば、しびれを切らしたらしい保安部隊は魔導大砲を取り出してきていた。
戦争用大砲による強力な一撃が来る。
『現戦力では防ぐことは困難。
背中の装甲が展開され
右腕部を覆う巨大な装甲武装。
名前は
「オラァ!」
それを思い切り振りぬく。
右腕から凄まじい衝撃が伝うが、その瞬間、破城篭手の機能が解放される。
篭手内部のトリガーが引かれ莫大な魔導爆発が巻き起こり、大砲の一撃を力任せに相殺した。
「けどな、それでもおまえは助けてっていっただろうが」
「わからない……わからないわよ……」
ぺたんと薄い尻を床につけて、内面とは裏腹に見た目通りに子供のように泣きじゃくる彼女の薄い胸倉をつかむ。
その軽さに、その小ささに、本当に子どものようだと思いながら、彼女に言う。
「それでもな。男ってのは、泣いてる女の子が助けてって言ったら、助けちまう生き物なんだよ!」
怒りはある。
恨みはある。
それでも泣いてる女の子が助けてと伸ばしてきた手を振り払うなんてことは出来ない。
だってそれをしてしまえば、この施設で実験を繰り返す連中と同じになってしまう。
「あとで礼とか報いは受けてもらう。だから、おとなしく俺に助けられてろ」
俺は彼女を下ろし、敵へと向き直る。
「行くぜ――」
俺は敵へ向けて拳を振り上げた――。
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