君のとなりで呼吸(いき)がしたい

一澄けい

プロローグ 夢見る程に望んだとして

もしも、この世界に「運命の出会い」なんてものがあったなら。僕は間違いなく、彼女と出会いを「運命」だと呼ぶのだろう。

本来なら交わらないであろう、僕と君の人生が、奇跡のように交わったあの瞬間のことを「運命」と呼ばずになんと言えばいいのか。僕はそれ以外に、相応しいことばを知らなかった。

彼女と過ごした日々は短かったけれども、その楽しくも一瞬で過ぎ去った日々は、僕の記憶に鮮烈に残っていて。


今も尚、呪いのように、僕に絡みついて離れ

い。


**


また、今日も夢を見た。

もう二度と戻らない、望んでもきっと戻ってこない、彼女と過ごしたあの頃の夢だ。かつて彼女と過ごした時間をなぞるように、僕は、彼女と過ごした日々の夢を見て。そして。

目が覚めて、そのあと、それが夢だったことにひどく落胆する。

もう、彼女と会うことはないと、分かっているのに。それでも彼女との再会を夢見ている自分に、うんざりしながら目覚めることが、最早、僕の「あたりまえ」となりつつあった。


彼女との出会いは、奇跡だった。

奇跡だからこそ、二度目はない。奇跡は二度も、起こらない。

だからこそ、もう、彼女に会うことはない。

僕はそう思っていたし、それでいいと思っていた。

そう、思っていたのに。


入学式のあの日。静寂が支配する、人気のない教室の片隅で。


僕と彼女の人生が、再び交わることになるなんて。この時の僕は、夢にも思わなかったのだ。

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