君のとなりで呼吸(いき)がしたい
一澄けい
プロローグ 夢見る程に望んだとして
もしも、この世界に「運命の出会い」なんてものがあったなら。僕は間違いなく、彼女と出会いを「運命」だと呼ぶのだろう。
本来なら交わらないであろう、僕と君の人生が、奇跡のように交わったあの瞬間のことを「運命」と呼ばずになんと言えばいいのか。僕はそれ以外に、相応しいことばを知らなかった。
彼女と過ごした日々は短かったけれども、その楽しくも一瞬で過ぎ去った日々は、僕の記憶に鮮烈に残っていて。
今も尚、呪いのように、僕に絡みついて離れ
い。
**
また、今日も夢を見た。
もう二度と戻らない、望んでもきっと戻ってこない、彼女と過ごしたあの頃の夢だ。かつて彼女と過ごした時間をなぞるように、僕は、彼女と過ごした日々の夢を見て。そして。
目が覚めて、そのあと、それが夢だったことにひどく落胆する。
もう、彼女と会うことはないと、分かっているのに。それでも彼女との再会を夢見ている自分に、うんざりしながら目覚めることが、最早、僕の「あたりまえ」となりつつあった。
彼女との出会いは、奇跡だった。
奇跡だからこそ、二度目はない。奇跡は二度も、起こらない。
だからこそ、もう、彼女に会うことはない。
僕はそう思っていたし、それでいいと思っていた。
そう、思っていたのに。
入学式のあの日。静寂が支配する、人気のない教室の片隅で。
僕と彼女の人生が、再び交わることになるなんて。この時の僕は、夢にも思わなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます