サイコパス~婚活カウンセラー池上緋美子の極秘ファイル~
坂崎文明
File No.1 振り向かない男
「イケメンメガネ君、さっきの面談どう思う?」
うちのボスというか、結婚相談所エンジェルハートの所長、
いわゆるアルビノ、先天性色素欠乏症、白子症などと似ているが、彼女の場合、何か重要な事に気づいた際、ちょっと興奮してなるらしい。
詳しい仕組みはよく知らないけど、長い髪のなかなかの美貌の三十五歳の彼女が、なかなか結婚しない理由のひとつなのかなとも思う。
「所長、イケメンと言われるのは光栄ですが、僕には
無駄だと思いつつ、一応、反論してみる。まさか、もう三ヶ月も勤務してる新入社員の名前を覚えてないとは思わないが。一応、この会社の婚活カウンセラーをしている。二十五歳独身、彼女募集中である。
「分かったわ。それはともかく、さっきの会員さんの
緋美子の口角がゆっくりと上がる。笑ってるんだろうけど、何か不穏な気配を感じる。
「辻褄の合わない話ですよね。斐川さんの交際してる男性会員さんは三十五歳で、彼女は二十八歳。共働きなど希望通りの条件を満たしてるのに。しかも、彼は同時進行の交際相手もいないし。そろそろ半年過ぎるし、何故、彼は告白しないのか謎です。ちなみに、わたしに担当変わってくれたら、男に告白させる秘技を十個ほど伝授できますが」
話しに割り込んできたのは、
ショートカットの可愛い系ゆるふわ女子だが、男に告白させる秘技を十個も習得していることに驚いた。重度のBL小説ファンとの噂も聞くが、とにかく、熱い女であり、既婚者でもあるので説得力がある。
「萌亜ちゃん、横取りは良くないわよ。あなたも気づかないぐらいだから、新人君には荷は重いけど、これも一人前になるための試練だから」
所長はあくまで僕の名前は言わない方針らしい。一人前になれば呼んでくれるのか。
「所長、まさかアレですか!?」
萌亜が何か思いついたように叫んだ。
「まさかのソレよ」
「なるほど」
女同士のテレパシーか何からしいけど、納得したように、萌亜はにっこりしている。
「え? 何かあるんですか? その男性会員に? それとも斐川さんの方?」
頭の中ははてなマークだらけだが、とりあえず、ヒントでも貰えないかと質問してみた。
「全く分からないの?」
池上所長があきれたような表情で僕の方を見た。
「仕方がないわね。萌亜先輩がヒントを出してあげよう! ヒント1 男性会員さんは学生時代から好きな人がいて、その人は結婚して幸せになっているが、いい友人関係が続いている」
凄くご機嫌な笑顔で萌亜先輩のヒントはそこで終わった。
ちょっと考えてみたが、何も浮かばないというか、このどこがヒントなんだ?
「その、どこがヒントなんですか?」
口に出して言ってみた。
「ダメね」
池上所長はため息をつく。
「全くね」
萌亜先輩もテンションが下がっている。
「私、大体、わかりました」
結婚相談所エンジェルハート唯一の事務員、
僕と同じメガネ女子で清楚でおしとやかな優等生キャラである。
二十一歳でなかなか可愛いのだが、普段、あまりしゃべらないので何を考えてるのか分からない所がある。
「ヒント2 萌亜先輩は少し勘違いしてるかも」
黄瀬事務員から意外なダメ出しが来た。
「……まさか!? そういうことだったのか!」
萌亜先輩は何かに気づいたようだ。
僕には何がなんだか分からないが。
「ほほう。黄瀬ちゃん、若いのになかなかやるわね」
池上所長はちょっと黄瀬事務員を見直したらしい。
「そして、ヒント3 その男性会員からイケメンメガネ君宛の手紙を預かっている」
池上所長がすっくと席を立ち、僕に手紙の入った封筒を渡してくれた。
「きゃー! まさかまさかの展開ですね! 所長!」
萌亜先輩が興奮して声が裏返りかけている。テンションマックスである。
一体、どういうことなんだ!
「―――げっ」
封筒から手紙を取り出して読んだが、人間、驚きすぎると擬音が出ることをはじめて知った。
内容はご想像にお任せするが、要約すると愛の告白だった。
数週間後、結婚相談所エンジェルハートに面談に来た斐川泉はその男性会員からプロポーズされて喜んでいた。
池上所長に「いい仕事したわね」とはじめて褒められたが、萌亜先輩からは「何で愛を受け止めてあげないのよ!」と責められた。
黄瀬ちゃんはそれを見て、クスクス笑っていた。
こんな職場、嫌だ。
(あとがき)
サイコパスがホンネを見抜く技を大公開/岡田斗司夫 チャンネル登録者数 11.7万人
https://youtu.be/kE-dxPufYYk
この話の原案はこの動画なんですが、全く同じになってしまうとアレなので、性別入れ替えたり若干、話を捻ってます。
意味の分からない読者のために一応、二話で真相解説を入れますが、結婚相談所エジェルハートのメンバー紹介ということで、一話はこんな感じで切った方がいいかと。
次回のネタ考えないといけないので、三話ぐらいまで思いついていたはずだが、忘れてしまったので、また何か考えます。
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