第4話 朝

 目が覚めるといい香りがした。

 トーストと目玉焼き。ついでにハム。


「台所借りたわよ」

「あ、ありがとう」

 起き抜けのままテーブルにつこうとした僕を、雅がたしなめた。


「顔くらい洗ってきなさいよ」

「あ、ああ。ごめん」

「また、謝るー」

「ごめんごめん」

 そう言って、僕は顔を洗う。


 そして、食事をとる。

 美味い。

 美味かった。

「美味しい」

「そう、焼いただけよ」

 雅はそう言って、トーストを囓る。

 素っ気ない。

 だけど、昨夜の必死な表情を見た後だと、この素っ気なさすら味わい深い感じだ。



 一通り食事をすますと、雅が立ち上がった。

 よく見ると、昨日の制服姿だ。

「あたしは学校行くから」

「あ、行ってらっしゃい」

「昨日買った鞄とか、置いておいてもらっていい? ひょっとしたら、また一緒に仕事することがあるかもしれないから」

「大丈夫。預かっておくよ」

「ありがとう。じゃあ、行くわ」

「うん。行ってらっしゃい」



 雅がいなくなると、途端に静かになる。

 いや、別に雅が騒がしくしていたわけではない。

 だから、静かという言葉はちよっとおかしい。



 寂しくなった、というべきか。



 僕はスウェットからジャージに着替えた。

 そして、窓を開けた。


 掃除をしよう。

 雑巾とか、洗剤とか、足りないものはたくさんある。

 午前中に買いに行くと、目立つから、そのあたりはお昼過ぎかな。


 まずは、水回りから。

 そこなら、昔買った洗剤もある。

 洗濯もしなくちゃ。



 幸い、いい天気だ。


 そう。まずは、そこから始めよう。

 僕は、部屋の大掃除を始めた。

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