【短編】月下の妖鬼

和葉

プロローグ

彼はただ、一点を見つめていた。

部屋の高くに据えられた格子窓こうしまど

隔離かくりされたこの場所で、彼にとって唯一ともいえる外界との接点……。


着物のあわせから覗く、あざだらけの身体を抱きかかえ、彼はその時を待っていた。

寒さを凌ぐものといえば、使い古した毛布一枚きり。身を切るような夜の寒さの中、彼は陶然とうぜんとした面持ちで、ただ『それ』を待ち続けていた。


ほんの少しの間、彼のために顔を覗かせる、丸く美しい、輝く『それ』……。

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