第46話 ワンコの懐き具合
南無三宝ながら、授業の合間……昼休みになる頃には、ワンコの話題は学校中に広まっていた。
おのれライン。
足が速すぎる。
『転校生が陰キャに告った』
は大いに拡散されるのだった。
情報化社会の弊害よ。
まぁ陰キャと思われてるのは良い事だけど。
「陽子。陽子。陽子」
隣の席の五十鈴は嬉しそうだ。
――
「恨まれて生まれた子なのだろうか?」
と、悪い意味で想像をかき立てられる名だ。
某詩人を想起させる。
ついでに後ろに用意させられた席には、愛すべきクラスメイトが座り、交代する形で、五十鈴は私の隣の席に座っていた。
教卓前が私。
両隣に春人と五十鈴。
「むー……」
何やら春人は不満そうだ。
「何でっしゃろ?」
「何でも無いけど……」
本当でしょうね?
そこまで清々しくすっ惚けるなら、ツッコむのも野暮……なのか。
どこかやぶ蛇な感じも想起させますし……ここは大人の体を装って触らぬ神に祟りなしを地で行きましょうぞ。
「陽子!」
「はいはい」
「学食に案内してください! ここの学食は知らないんですけど! でもやっぱり学生なら学食を使うべきと存じます! 何より陽子と一緒なら昼食も華やぐというものでしょう! 違いますか!?」
本当にワンコに懐かれた気分。
「別にソレはいいけど」
「僕も……」
とは春人。
「両手に花……か?」
……何故こんな事に。
「ワン!」
嬉しそうに吠えたのは五十鈴。
そして学食へ。
「春人は何で女装してるの?」
ほう。
一目で女装と看破するか。
「女装嗜好が……あるので……」
「ふぅん? イケメンなのに」
ホントソレ。
宝の持ち腐れにも程がある。
ブーメラン。
で、
「オススメは?」
「おろしポン酢唐揚げ定食」
「じゃあそれ!」
考えて生きているのだろうか?
この子は……。
なんか条件反射で動いているような気配。
私はささみチーズカツ定食。
春人は煮魚の定食。
「陽子は可愛いね!」
「陰キャじゃない?」
「それで陰キャ気取ってるつもり?」
え?
変装できてるって思ってるの私だけ?
「超可愛いよ?」
「さいでっか」
ささみカツをあぐあぐ。
「ね、部活は入ってる? 小生も入部するし!」
「仮入部」
「何処に?」
「手芸部」
「手芸部と来ましたか」
「無理する必要はござんせんよ」
「家庭科で5を取る程度には出来るよ?」
「そりゃ重畳」
「あう……」
春人は何が言いたいんだろう?
「大丈夫」
とは五十鈴。
「抜け駆けはしないから」
――?
「あう……バレてる……?」
何が?
「でも待ってあげるのが優しさでもないからね!」
「あう……」
だから何よ?
「五十鈴さんは……聡すぎる……」
「空気読むのは習慣になっちゃって」
まぁそれだけの尊貌ならね。
「ていうか手芸部かぁ」
「仮入部」
そもそも春人の付き添いだし。
その春人にしても、プロ顔負けのアトリエ持ってるし。
ぶっちゃけ空気を読むとか聡すぎるとか、意味わかないんですけども……私は何かをしちゃっているんでしょうか?
「ワンワン。陽子。家に遊びに行って良い?」
「構いませんけど……本当に宜しいので?」
「我が家に来てもいいけど?」
「機会があれば」
クイ、と裾が引っ張られた。
春人の精一杯の抵抗。
「遊びに来ますか?」
「よろしく……お願いします……」
うーん。
マーベラス。
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