るんらら
春日陽一
第1話 どこかの妖精のような冒険のような
ときどき思う。
うんと小さくなって、もっともっと小さくなって、家の中を駆け回りたい。
冷たいステンレスの上を滑るように走り抜け、底が見えない谷間を7mmのパスタで超えるスリルを味わいたい。ふわふわと揺れる白いカーテンを抜けると、山積みになった書籍の階段が永遠と私を空へと招くのだろう。楽しそう。
でも、たぶん寂しい世界なんだ、きっと。
天井で輝く光は夜も朝も伝えてくれないし、冷たい風を受け入れ続ける小窓の存在、それを目の前にして自分の力では閉めることもできない。洗い立てのシャツは天使のような甘い香りで、私の進路を無邪気に妨げる。途方もなく続く畳の上で、ときどき見えないささくれに傷つく。優しくはない。
そう考えると、小さくなっても変わらないんだな世界。
るんらら 春日陽一 @kasugayouiti
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