第65話 癒しの天使

 第61話を加筆修正しました! 

 この章のプロローグですかね? それを最初に付け加えました。

 ぜひお読みください! (2020/1/25)

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 温かな雰囲気のふんだんに木が使用された和やかなお店。

 オレンジ色の照明が安心感を与えてくれる。

 ここは王都にある隠れ家レストラン『こもれびの森』。

 店内は小さな子供の話し声や笑い声が響き渡っている。今日は俺が孤児院の子供たちを連れて来ているのだ。あちこちではしゃいだり走り回ったりするちびっ子たち。とても賑やかだ。

 その店の中のテーブルの一角。華やかな女性たちが集まって女子トークを繰り広げている場所があった。


「本当に馬鹿だと思わない?」

「ええ。馬鹿だと思います」

「馬鹿ですねぇー!」


 短い金髪に綺麗な紫色の瞳の美女の言葉に、黒い長髪で綺麗な青い瞳の女性と栗色の髪をポニーテールにした鳶色の瞳の女性がしきりに頷いて同意する。

 俺の婚約者のジャスミンとリリアーネの二人と、このお店のウェイトレスのソノラだ。

 仲の良い三人はずっと女子トークで盛り上がっている。

 話の主な内容は、とある男の愚痴だ。壮絶な文句だ。次から次に吐き出され、彼女たちの愚痴が止まらない止まらない。

 はい。全部俺の愚痴ですね。

 盛り上がっている三人と同じテーブルで身体を小さくさせながら、俺はひたすら聞きに徹し、店に飾られた植物みたいに店の一部となる。

 逃げようとしたんだが、女性三人に睨まれて動けなかったんです。

 男って女性に逆らえないよね…。

 ソノラが自分の髪をクルクルと指に巻き付けながらため息をつく。


「はぁ…こんなにお綺麗な婚約者さんが二人もいるのに、どうして殿下は毎日娼館に通ったりするんでしょうかね? アホですか?」

「そうなのよ! 本っ当にそう! どれだけ女好きなのよ…」

「はぁ……………でも、羨ましいなぁ…」

「えっ? ソノラ、何か言ったかしら?」

「いいえ! 別に何も!」


 ソノラが慌ててブンブンと首を横に振る。栗色のポニーテールもブンブンと揺れている。

 そう、とジャスミンは話を流し、ソノラはホッと小さく安堵の息を吐く。

 ふと、ジャスミンはリリアーネがそのことに関して愚痴を言っていないことに気づく。


「そういえば、リリアーネはあまり文句を言わないわね」


 リリアーネはキョトンと蒼玉サファイアのような瞳を瞬かせる。


「私、ですか? そうですね。ほんの少しモヤモヤした気持ちもありますが、あまり気にしませんね。シラン様のお考えも理解していますし、第一、私がシラン様に愛されていると感じているので、それだけで十分かと」


 深窓の令嬢がおっとりと幸せそうに微笑む姿に、ジャスミンとソノラが圧倒される。

 俺も思わず見惚れてしまった。


「あぁー。確かにそれはものすっごく感じるけど…」

「うわぁー。釣った魚にエサを与えるのが上手いんですね。一番タチが悪いですねー。流石殿下! 生粋の女誑し。ハーレムを作るために生まれてきた男! 性欲の塊! 絶倫王子!」

「おいコラ! ソノラ!」

「何か間違っていますかぁ?」


 ニコッと鳶色の瞳で微笑まれて、思わず声を上げた俺は身体をシュンと小さくするしかない。


「………………間違っていません」

「「はぁ………これだから男は」」


 ジャスミンは呆れと諦めの感情を滲ませ、ソノラは呆れの中に羨望の声色が混じっている。リリアーネはクスクスと上品に笑うだけだ。

 うぐっ! なんかごめんなさい。男に生まれてきてごめんなさい。でも、みんな綺麗で可愛いからしょうがないじゃん!

 猛烈に謝りたくなり、そして開き直った俺の服の袖をクイクイっと引っ張られる感覚がした。

 ふと見ると、水色の髪に藍玉アクアマリンのように透き通った水色の瞳の幼女が俺を見上げていた。孤児院の女の子で、王都の天使と呼ばれているレナちゃんだ。


「おにいたん! 抱っこ!」

「よし! いいぞー!」

「きゃー!」


 俺がレナちゃんを抱きかかえると、楽しそうな声を上げる。とても可愛い。

 膝の上にストンと座らせて、レナちゃんの頭を優しく撫でる。

 気持ちよさそうに目を細めるレナちゃんが可愛すぎる。流石王都の天使。癒される。


「レナちゃん、お菓子食べるか?」

「んっ! 食べる!」


 クッキーを差し出すと、小さな両手でポムっと掴み、もきゅもきゅと食べ始める。

 その仕草が小動物みたいで可愛らしい。特に、リスみたいに頬を膨らませながら食べるところが…。

 女性三人の愚痴により疲弊した心が癒されていくのを感じる。

 レナちゃんは俺の癒しだ!


「………ロリコン」

「うっさいジャスミン! この可愛さには誰にも敵わないだろ!」

「んきゅ? おねえたん?」

「ぐはっ!?」


 レナちゃんお得意の人を堕とすスマイルが炸裂する。にぱーっと微笑まれたジャスミンが胸を押さえて悶え苦しむ。

 また一人、レナちゃんの虜になったか。


「きゃー! 可愛い!」


 俺の膝の上から天使が消え去った。

 いつの間にかジャスミンの膝の上に天使が移動している。

 一体何が起こったんだ!?


「うぅ……俺の癒しがいなくなった……」

「では、私が癒して差し上げます」

「うぅ~! リリアーネが天使だ!」


 ニコッと微笑んで手を広げたリリアーネに縋りつく。

 婚約者だからイチャイチャしても問題ない!

 リリアーネはよくこうして甘やかしてくれる。俺をダメ人間にさせたいのか? まあ、もう既に俺はダメ人間だけど。

 うわぁー、とジャスミンと孤児院のちびっ子たちにドン引きされ、ソノラは羨ましそうに眺めている。

 それでも俺はリリアーネとイチャイチャするのを止めなかった。

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