第28話 王家の女性たち (改稿済み)
ドレスを着て着飾った美しい美女二人を侍らせ、俺はメイドに案内される。
今回のお茶会は母上の部屋で極秘に行われるらしい。
主な目的はお茶じゃなくてお化粧品だからな。超極秘なのだ。
「お入りください」
メイドが扉を開けてくれる。
俺とジャスミンとリリアーネ嬢は母上の部屋の中に入った。
部屋の中には極わずかのメイドと、六人の美女が優雅に座っていた。
「あら、シランいらっしゃい」
主催者の俺の母上、ドラゴニア王国第三王妃のディセントラ・ドラゴニアが出迎えてくれた。
俺は軽く手を上げて母上に挨拶する。
「呼び出されたので来ましたよー」
ドスッと横に侍るジャスミンから肘撃ちが飛んできた。
あ、あばらが、あばら骨が折れるぅぅぅううう!
緊張気味のジャスミンとリリアーネ嬢が恭しく一礼する。
「コイツが失礼を……」
「いいのよ、実の息子だし」
「あっ、そうでしたね。シランは王子でした」
母上とジャスミンが笑い合っている。
ジャスミンさん? 王子の俺に失礼じゃないですかね?
俺の心の声は誰にも届かない。
そして、ディセントラ母上が緊張しているリリアーネ嬢を見つめた。
「貴女が噂のリリアーネ・ヴェリタスさんね? 《
「お、お初にお目にかかります」
「あらあら。別に今は身内の集まりだからリラックスしてちょうだい。さあ、どうぞ。美味しいお茶とお菓子を用意したの」
ディセントラ母上がジャスミンとリリアーネ嬢をテーブルへと誘う。
俺は放置された。メイドが案内してくれることもない。
ねえ、俺帰っていい? 扱い酷くない?
俺は一人寂しくポツーンと空いた席に座った。
テーブルには他に五人の人物が座っていた。
「一応リリアーネさんに紹介するわね。こちらが第一王妃のアンドレア。アンドレアの娘の第一王女アリーネ。まあ、アリーネはもう結婚して降嫁しているけど」
気品の感じられるスレンダーな女性、アンドレア母上と、顔立ちがそっくりなアリーネ姉上が軽く会釈をした。
「そして、こちらが第二王妃のエリン。そして、その娘の第二王女エルーザと第三王女エミリー」
女性らしい豊満な身体を持つエリン母上と、それを受け継いだエルーザ姉上とエミリー姉上が会釈した。
アンドレア母上とエリン母上には息子もいるけれど、今回はお呼ばれされていない。
「そして最後に私、第三王妃ディセントラよ。そこに座るシランの母親。よろしくね」
気さくな美女の俺の母上。ディセントラ母上の子供は俺しかいない。
ドラゴニア王国の国王は代々複数の妻を持つことが義務付けられている。
最低でも三人は娶らなけれなならないのだ。
一人は国内の貴族から。もう一人は他国の女性。最後の一人は国内の平民の女性。
アンドレア母上が自国の貴族の娘で、エリン母上が他国の貴族の娘、ディセントラ母上が自国の平民の娘だ。
王妃と王女の視線がじーっとリリアーネ嬢に向かう。
「あ、あの……」
視線に耐えられず、オロオロと泣きそうな顔で俺に助けを求めてきたリリアーネ嬢。
可愛らしくて、ちょっとキュンとしてしまったのは俺だけの秘密である。
「……肌が綺麗」
「張りもあって、モッチリしてる」
「髪も艶々」
「サラサラでもある」
「毛先まで輝いてる」
おぉぅ……女性の美の意識って怖い。目がぎらついている。
そのぎらついた瞳がジャスミンやディセントラ母上に向かう。
ジャスミンは居心地が悪そうで、ディセントラ母上は気にせず優雅にティーカップを傾けている。
「……ずっと思ってたけど、ジャスミンも綺麗」
「ディーも綺麗すぎる」
アンドレア母上とエリン母上がじーっと見つめている。
ディセントラ母上がおっとりと微笑んだ。
「今日は秘密を教えるために集まってもらったのよ。でも、その前にちょっとお喋りでも……」
「「「「「早く教えて!」」」」」
おぉぅ……ディセントラ母上はいい性格しているなぁ。
他の王妃や王女を揶揄って遊んでいるぞ、あの人は!
まあ、母上たちも姉上たちもみんな仲がいいから、いつもワイワイ楽しくお喋りしている姿をよく見る。冗談を言い合うのもいつものことだ。
ジャスミンも小さい頃からよく知っているので気にしていないが、初めて目の当たりにしたリリアーネ嬢は青い瞳をパチクリさせている。
「リリアーネ嬢。想像していたのと違うか?」
俺が小声で話しかけると、おっとりとティーカップを傾けるディセントラ母上に詰め寄る王妃と王女たちをチラリと見て、リリアーネ嬢は小さく頷いた。
「は、はい。何と言いますか……」
「王族らしくない方々よね。私は昔から知ってるけど」
ジャスミンが話に割り込んできた。
仕事をしているときは気品と優雅さを表に出し、厳格な王妃や王女なんだけれど、プライベートではワイワイ盛り上がって女子トークする普通の女性なんだよなぁ。
目の前でワチャワチャ騒いでいるのは、妻同士や娘も誘って夜に女子会&お泊り会するような人たちです。
「だからリリアーネ嬢もリラックスしていいぞ。余程のことじゃない限り、母上たちはプライベートで怒ることはないから」
「は、はぁ……あっ、美味しい……」
戸惑いを浮かべたリリアーネ嬢がティーカップを傾け、紅茶の美味しさに思わず笑顔になる。そして、お菓子を口に入れて幸せそうに蕩けた。
俺も適当にお菓子を自分用に取る。
これは俺のお菓子だ!
「はぁ……そんなに急がなくても誰も取らないわよ」
と言いつつも、俺の皿からお菓子を掻っ攫うジャスミン。
なんでっ!? 目の前に沢山あるのに何故俺の皿から奪うんだ!?
更に、ひょいっと反対側から手が伸びてきて、お菓子が取られていった。
「これも美味しいですね」
ジャスミン嬢、お前もか!
そんなに食べると太るぞ! あっ、すんません。嘘です。嘘だから睨まないで!
何故女性って心を読めるんだろう?
ジャスミンとリリアーネ嬢から同時に睨まれた俺。思わず背筋が凍ってしまった。
「……ン? シラン!」
「あっ、はいっ!」
ディセントラ母上の声に思わず敬礼してしまった。
母上たちや姉上たちがじーっと俺を見つめていた。
えっ? 何事? 全然話を聞いていなかった。
「人払いもしてるし、秘密を教えてあげて」
「あっ、はいっ! では、ビュティ召喚!」
即座に話が分かった俺は、使い魔であるスライムのビュティをすぐに召喚するのだった。
べ、別に母上たちや姉上たちの視線が怖かったとか、そんなんじゃないからな!
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