第36話 数字

ある素晴らしい掌編集のひとつめの作品には、病院の待合室で数字を眺める様子が何度も出てきた。

集中治療室だったか、おそらく重篤だったからそうに違いない。

主人公の目線は、ホワイトボードにある数字に目がいくのね。

たしか、患者の年齢だった気がする。5つほど並んでいるの。


話はおおよそ覚えているけれど、一番はっきりしているのは数字が出てきたこと。


病院に重篤な患者、待合室にいる家族。重い現実を、数字でわざと軽くしているというか、数字でくくるのね。

いえしかし。いつ終わるとも知れない時間を、たぶん本も音楽も役に立たなくて、することがないからたまたま目に入ったものを考え続ける。すごく自然な流れ。


毎日夕方のコロナ感染者数を確認するようになって、増えていくときはハラハラしたけれど、少なくなってきたら何だか変な気持ちになった。

減って良かったけど、この数字は収束を約束していない。全体図が見えないのだから、見通しは立てようがない。


じっとして家にいるのは「ステイホーム」に従うからではなく、なすすべがないから。

土日は検査数が少ないとかなんとか、テレビから数字の説明が聞こえてくるけど、聞き飽きたなあ。


自分で検査数やほかの値をネットサーフィンしていたら、待合室で主人公が数字を眺めていた掌編を思い出した、というわけ。












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