第6話  1840年プレイエルの「ピアニーノ」


第1音楽室のほうで演奏会のことを書きますが、ここではとにかく「ピアニーノ」の響き。とくに残響。忘れないうちに。


2019年11月8日の宗次ホールで耳にした、ショパン作品をショパン存命中に使われたフォルテピアノで聴く稀有な機会に恵まれた。演奏家は平井千絵さん。その残響は、まるで たなびくようでした。


モダンピアノの響きが一直線に壁めがけて飛んでくるとしたら、ピアニーノはいったん音が雲のようにまとまってぼわんとのんき漂っている感じがしたのです。



あの愛の逃避行として知られるマヨルカ島の、荒れ果てた僧院の一室でひとり作曲をするショパン。このピアニーノと同型のものがパリから運ばれたとか。


このピアノフォルテから出てくる音で、24の前奏曲集は作られたんだ、もわもわした残響をショパンも耳にしていたんだ、と思うとやはり感無量でした。


有名な「雨だれ」、胃腸薬のCMに使われている短い曲以外にも、名作ぞろいでどれも前奏曲。前奏曲とか間奏曲とか、ロマン派の時代には本来の意味から離れて、バラードや舟歌のように楽曲を印象付けますね。

24の前奏曲をこの日全曲聴いて、もっとそれぞれの世界に入り込みたいと思いました。



さて、このコンサートとは別に、ここのところ頭のなかをぐるぐるしているのは、ショパンとシューマンの関係性。2回あったことがあるのだけど、ショパンとリスト、あるいはシューマンとメンデルスゾーンのように親しくはならなかったんですね。1810年生まれ同士で性格はシャイなふたり。きっと近所に住んでいたら、すごく仲良くなったのではないかなあ。

リストやメンデルスゾーンみたいな人たちなら、2回会えば十分だろうけど。







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