第4章-1 全校集会

 学校が終わるとやることは毎日同じ。すぐに学校を出て、一番近くの公園でスカートをズボンに履き替え、大きなサイズのパーカーを着てフードを被る。そして学校の玄関から少し距離を取ったところである人物の下校を待つ。今、目をつけているのは自分と同じ学校に通う二人の生徒(AとB)だ。しかし、過度な接触は相手に不信感を生み、取り返しのつかないことになりかねない。つまりこの尾行は、慎重かつ長期間にわたって計画的に進めていく必要がある。あの二人にあいつとの血縁関係があるのかは定かではないが、調査するに越したことはない。今日はちょうど尾行開始から百日目。今わかっていることは二人の名前と住所、それのみ。少しずつだが、着実に歩を進めている。しかし、この頃Aの尾行は中々に困難になってしまっている。かといってBの情報がたくさん掴めてきているかといえばそうでもない。

「だが焦りは禁物。」

そう自分に言い聞かせてまた時間が過ぎていく。


~月曜日~

 学校に行くのはいつでも憂鬱だ。それも朝だからなおさら。AとBの観察と尾行のためだけに来ているのであって、それがなければ一日中家にいてポテチでも爆食いしていたいものだ。今日こそ有力な情報を掴んでやるぞ、覚悟しておけ。

 教室に入ると、ざわざわといろんな話し声が聞こえる。いつもなら耳を傾けることはないが、今日のざわつきは少し違った。ある生徒は怒りをあらわにし、またある生徒は教師に詰め寄っていた。何があったのか聞くまでもなく、近くの女生徒同士の会話により、全貌が見えてきた。

「なんか、この土日のうちのことらしいんだけどさ、学校にあるいくつかの机にスプレーで暴言が書かれてたらしいよ。他にも駐輪場の壁とか、廊下にも。教師たちが急いで消そうとしたらしいんだけど、なんせ規模が規模だから消しきれなかったらしくて、緊急集会開くんだって。」

「マジ?一限目消えてくれねぇかな~。保健の荻野のセクハラ攻撃がなくなってくれれば私は全然良いんだけど~。」

クラスの中は、楽観視する人と重く捉える人で二分されていた。まぁ俺にとってはどうでもいいことだから、いつも通りに過ごそう。ついでに一限目潰れてほしいなぁ。

「はいちょっと注目ー。八時四十分から緊急集会あるから、体育館シューズ持って大体育館行って。もうあと五分で始まるから早く早く。」

ハァ、めんどいけど行ってやるか。

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