警察署
警察署は住宅街を抜け、商店街を進んだ先にあった。
署の前には門番宜しく腕を組んだ警官が立っていた。
横を通り過ぎようとすると、警官から鋭い視線を向けられたので、何もやましいことはないのに思わず体を強張らせてしまう。
「こんにちは」
その挨拶は、ひかりに向けられたものであった。
「こんにちは」
ひかりも愛想良く挨拶を返す。
着物姿のひかりは、町中でもかなり目立つ存在である。そんなひかりが警察署を訪れたのだから、警官の注意が向くのも当然である。
「何かご用ですか?」
「ええっと……」
警官に尋ねられ、ひかりは口篭っていた。
実際のところ、僕の単なる付き添いで来たのだから、ひかりに用があるわけではない。
ひかりは返答に困って、しどろもどろになってしまっていた。そんな最中、ひかりからアイコンタクトが送られる。
──ここは任せて先に行け。
僕は素直にひかりの言うことに従うことにした。
確かに、生者であるひかりが用もなく警察署内を──ましてや、警察署の深部にある遺体霊安室をうろつくというのは無理がある。
幽霊である僕が一人で探索した方が、行動はしやすい。
「行ってくるよ。君は何処かで休んでいてくれよ。上手くいったら、後で合流するから」
警官と対面しているひかりからの返事はない。
──代わりに、ひかりは深々と頷いた。
僕はひかりとここで別れて、正面入り口から堂々と警察署へと入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます