追いかけっこの結末
ひかりの声から遠ざかるように走っていた僕の目の前に、何者かが立ち塞がった。
「梅宮さん!?」
僕は思わず声を張り上げた。
どうしてこの人が此処に居るのだろうか。
逃げてと言ったはずなのに、これでは一緒に捕まってしまう──。
「ご苦労様……」
梅宮は柔和な笑顔を浮かべた。
「ここっ……よ……!」
ひかりのガラガラ声が聞こえてきたのは、廊下のすぐ後ろからであった。
喉をやられたひかりの声は、ある時から僕の耳には入らなくなっていた。それでも、彼女はこうして居場所を知らせるために声を出し続けてくれていたらしい。
ひかりと一緒に、狼と羊もすぐ側まで迫って来ていた。
梅宮は微動だにせず──そして、呟いた。
「時間だよ……」
すると、直前まで血気盛んだった狼と羊は床にガックリと膝を付いた。そして、そのまま煙となって消えてしまったのだ。
「……えっ?」
何が起こったのか、僕には分からなかった。
目配せをすると梅宮は顎をシャクって窓の外を指す。
地平線から朝日が顔を覗かせていた。いつの間にか一夜が明け、死神の時間が終わりを告げていた。
必死で屋敷の中を駆け回っていたので、そのことがすっかり意識から消えていた。
ようやく念願の日の出を迎えることができたのである。
「お、終わったぁぁあ!」
途端に緊張の糸が切れ、僕はその場にへたり込んだ。
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