第三夜・電化製品に寄生する仮面の海月
バス事故の報道
「さて、どうしようかな……」
僕は悩んだ挙句、
一つ、気掛かりなことがあった。一日が経ち、世間であのバス事故がどの様に報道されているのか興味が沸いていた。
一応、手持ちの携帯電話でニュースサイトなどを調べてみたが、件のバス事故に関する記事はいくつかアップされているようだった。
しかし、
日々、新たなニュースや事件が巻き起こっているのだから仕方のないことにも思える。
——まぁ、世間の関心がどうであれ、当事者の僕からすれば人生を根底から覆した重大なニュースである。いくら辛い現実がそこにあろうとも、目を背けて良いものではない——。
ひかりに教えられたこともあり、僕は現実と向き合う覚悟を決めた。
書店に行って新聞や雑誌の記事を読み、更に事故についての情報を集めていく。
今朝方発売されたばかりの新聞に『バス事故死傷者二十五名。生存者は——皮肉にも大事故を引き起こした人物』との見出しがあった。
僕はその見出しに、首を傾げてしまう。
事故の直後、確かにあそこには二十六人全員がおり、生存を確認していた。生存──即ちそれは、結果的には死んだ人間の数である。
どうやらその中に、一人生存者が紛れていたようだ。
さらに記事を読み進めていくと、その生存者がバス運転手の山田であることが分かった。隣町の病院に搬送され、今も治療を受けているらしい。
また、記事にはこんなことも書かれていた。
『意識を取り戻した山田氏は錯乱状態にあり、意味不明な発言を繰り返している』
『女の子の幽霊が飛び出し、ハンドルを切ったところバスが転落した』
『死神が乗客たちを次々に殺していった』
——それは、当事者でなければとても信じられそうもない内容ばかりであった。
実際にそれを体験した僕からすれば、山田が嘘をついていないことは瞭然である。
そんな山田を、この記事の筆者は『責任逃れのための粗末な言い訳だ』と痛烈に批判していた。
「隣町か……」
僕は何の気なしに山田に会ってみようと考えた。
山田にあったからといって状況が変わるわけでもないのだが、同じ死線を潜り抜けてきた仲間であるのでお見舞いくらいは行ってみることにする。
それに、もしかしたら、他の被害者たちもそこに集まっているかもしれない。
新聞を丁寧に畳んで、棚に戻す。
ふと、書店の店長がポカーンと口を開けたままこちらを見詰めているのに気が付いて、僕はいそいそと店を後にした。
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