嘶く馬たちの群れ
あの着物の女の子のことがどうにも気掛かりで、どこかで会えないものかと町の中を当てもなく歩いた。
当然、広い町の中で特定の一人と再会などできるわけもなく、時間は無駄に過ぎていった。
誰かに助けを求めたり自宅を目指したりした方が有意義にも思えたが、何故だかあの女の子と再会する方が優先度は高いように思えた。
どうやら女の子はどこか建物の中に入ってしまったようだ。それか、この町から離れてしまったのだろう。——結果として、丸一日時間を
僕は上空に星が
──ヒヒーン!
夜の
僕は自身の耳を疑った。町の中に
それなのに一箇所からではなく、様々な方角から——まるで共鳴でもし合うかのように、その鳴き声は
その一つ、馬の嘶きと
僕の頭の中に、ある予感が
「まさか……ね」
妙な胸騒ぎがした。まさかと思いつつも、この馬の嘶きの主も死神や仮面といった
僕はアパートの
──ヒヒーン! ブルブル!
——確かにそれは馬であった。
しかし、存在しているのは頭部と
明らかに、僕が知っているような自然界に生息している馬のフォルムとは違う。
異形の姿形の馬が、僕の目の前を通り過ぎて行った。
「ヒヒーン!」
——ヒヒーン!
馬が嘶くと、遠くから別の馬からの応答が返ってくる。まるで、お互いの位置や状況を確認し合うかのように、馬は
まさか、僕のことを探しているのではないかと、思わず息を飲んでしまう。
それ程に馬は僕の近くをウロウロとして、なかなか遠くへは行ってくれなかった。いつこちらに気が付いても
緊迫した状況が続く
「……じゃあ、駅前のコンビニに行ってみるよ。買って来るのはアイスだけで良い?」
ジャージ上下の青年が玄関から出て来るなり、部屋の中へと呼び掛けた。
部屋の中から「よろしくぅー」と、若い女性からの
青年は溜め息を吐きながらドアの鍵を締めた。
──これは、チャンスなのではないか?
民家での出来事を思い返す。
中年男性の体に入り込んだ僕に、仮面は手を出すことを
もしかしたら、この青年の力を借りれば
サンダルをパタパタと鳴らす青年の足音がこちらに近付いて来る。
僕は身を
──青年は僕のことに気が付いてはいない。
やはり、僕に気が付いた着物の女の子は異例だったのだろう。
手を伸ばし、僕は青年の体に触れた──。
思った通りであった。僕は青年の体に
僕の思惑は成功であった。
——他人に触れれば、その体に入り込むことが出来る。
青年に憑依した僕は、何食わぬ顔をして表の通りに出た。
馬は脚を止めて、
どうやら馬は、僕が青年の肉体に入り込んでいることに気が付いていないようだ。また、何かを探すかのように辺りに視線を走らせていた。
「よぉし、行けそうだ!」
ところが、そう楽観した僕は、中年男性に憑依した時の
突然、僕は青年の体から
——通りを
思わぬ事態に、僕の体は硬直してしまう。
──ヒヒーン!
別の場所から、馬の嘶きが響いてきた。
「ヒヒーン!」
それに応えるかのように、目の前の馬が嘶く。
馬と目を合わせながら僕はゆっくりと後ろに下がった。視線さえ逸らさなければ、
そんな僕のことを、どうやら馬は黙って見逃してくれないようだ。馬の四つの蹄がその場でトコトコとそれぞれウォーミングアップの
──ブヒヒーン!
中空に漂っていた馬の首が嘶き、口を開いた。その口は顔の側面まで裂け、口の中に生えている鋭い牙が
あれに噛まれれば一溜まりもないだろう。
自身の嘶きを開戦の
僕は
そのまま
そこからは
──ヒヒーン!
──ヒヒーン!
あちこちから馬の嘶きが上がる。
僕のことを包囲でもするかのように、
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