人間との交流  商売開始

 これはチャンスですね


 コン太はそう思った人間どもが村に入ってきたが、どうみても商人といういでたちであった



 コン太達の一番大事な事は女王の安全、しかし女王の王国をつくるという目的のためにはモフ達では力不足や知識不足なところはあった。そこで人間との交易は不可欠だと考えていた、となるとこの場合は



「よくぞ来ていただきました人間の方々、私はこの縫いぐるみ達の長でコン太と申します」



 嘘はいってない、モフ達のまとめ役として長というのは正しい、ただその上の女王がいるとは言っていないだけで




「おお、流暢に話す人形がでてきたぞ、私はヒガーシ・ラヘーン国近辺で行商人をしているマッチョ商人だ、こちらに来たのは縫いぐるみ達を見かけて後をおってきたためだ」




 なるほど、モフ達を見かけて追ってきたということか、それ自体は事実であろうが、こちらの出方を見ているのであろう、なぜここに来たのかしか述べないな



「そうでしたかコン、モフ達、失礼我々縫いぐるみは自らをモフと呼びます。モフ達はここでみんなで暮らせる家を作っているコン、そうだもし良ければマッチョ商人さんたちもここで一休みすればいいコン」




「おお、それは助かる、商売上普段は大山は通らないのだが、今回は急ぎの仕事でこちらを通らなくてはならなくてね、どこか安全な所で体力を回復させたいと思っていたところなんだ、いやー本当に助かるよ」




 つまり我々に危害を加えず、また周りの魔物から守り、食糧の提供をしろと、また長居はしないよということだな、つまりモフ達が有益なものかどうかの判断というところか。




 相手は初めて見るモフ達に驚いてはいたが、見た目から強くはないと判断しているのであろう、まあそれは実際間違ってはいないのであろうが、未知のものに対してなかなかに根性が座っているというか、警戒心が薄いというか、まあそれはモフ達もだが。




 モフ達は結局は女王が無事ならあとはどうでもいいし、女王にも今はクマ太がついていざとなったら逃げろと言ってあるし、将来的には交易を進めたいからこれに乗っていくか





「どうぞコン!ゆっくり休んでいってコン!場所はあそこの建物を使ってコン!あそこは壁にまだ葉っぱを付けてないから、モフ達の家の景色も良く見えるコン!そうだ、水とか食べ物はいるコン?」





 ここでは無害な縫いぐるみを装う、そして建物はモフ達を監視できるような建物を提供、向こうはモフ達を疑っているだろうしこの気遣いは必要だろう、向こうもこれでモフ達がただの縫いぐるみでないということは気付くかもしれない、あと向こうの出方を見るために食糧の提供も伝えた、これで相手が我々から搾取を前提にしているのか、対等の立場で見ているのかを判断する




「おお!それは助かるよ、君たちはお金を使っているのかい?なにで支払えば良いかわからないな」




そういって行商人は言う、これは当たりだ


この行商人はこちらを対等な存在として見ている、そして好奇心旺盛で商売気も十分、この商人から交易を進めていこう



「コン達はお金は使ってないコン!それよりもいろいろ欲しいものがあるコン、その辺を休みながら話すコン!」



 そうコン太はそう言って行商人たちと休憩するための建物へ向かっていった










数日後


「おーいコン太―!戻ってきたぞー」


 そう言いながらモフ達の村へやって来たのは、先日やってきたマッチョ商人たち


 あれから数時間滞在してモフ達の村を出て行った、また帰りにやってくると言っていたから用事を終わらせて帰ってきたのであろう



「おかえりコン!待っていたコン!」



 マッチョ商人達がこっちにくるのは把握していた、あれからマッチョ商人が向かっていったほうを重点的に、かつ全体も監視業務をするようクマ太に要望していた



「おお、また家もモフ達も増えてるなあ」



そう言いながらマッチョ商人は笑顔で近づいてきた



「おかげさまでコン、マッチョ商人達も商売はうまくいったコン?」



「こちらもおかげさまでな、途中で休憩できたから早く向こうの町へつくことができたよ、それとこいつは向こうの町で買ってきた頼まれていたものだ」



 そう言いながらマッチョ商人は持っていた包みをあけた




「今回は山道で馬車は使えなかったから少ないが、ノコギリが3本と手入れ道具だ」




「ありがとうコン、これでやっと木を加工と木の伐採がやりやすくなるコン!お代は前回と今回の食糧と、動物の毛で作った服3着コン!」




 それは動物の毛で作られた服で胸元には胸ポケットとワンポイントにモフの姿の刺繍も施してある、前回の話し合いで行商人が提案してきた、こちらの世界ではまだまだ服は高いものだということで、庶民の服はだいたいがおさがりか中古品がおおいとのことだった




「おお!やっぱり思った通りいい出来だ、それにこの胸元のポケットはいいな、便利そうだ!そして何よりこの糸で作ってあるのか?これはモフの絵か、こいつはすごい!こりゃ良い値段で売れそうだ、1着自分用に欲しいくらいだな」




 マッチョ商人達はコン太の持ってきた服を気に入ったようだった




「気に入ってくれて嬉しいコン、おまけの品も入れておくコン」


「いやーいろいろ悪いねえ、ノコギリ3本じゃちと物々交換には釣り合わなかったかな?」


 そういってマッチョ商人はガハハと笑う




「こっちこそ助かるコン!ここに来る人は全然いないし、ここまで持ってきてくれるだけ大助かりだコン!また工具類お願いするコン、こっちもいろいろ用意しておくコン」




「まかせとけ!またすぐに来るぞ」



 コン太とマッチョ商人は良い商売相手が見つかったとお互いににやりと笑いあっている




「そうだ、今日はここに泊まらせてくれないか?流石に大山を上ると何日か野営をしなくちゃならねえが、野営はキツイんだよなあ、一日ゆっくり休めりゃあ、ここの往復もだいぶ楽にならあ」






 コン太は少し驚く、ここまで早くにこちらを信用してくるとは思わなかった、もちろん完全には信用というのは無いだろうが、それだけ相手側にとってこちらは友好的、有益に見えたことということだろう






「それはいいコン!行商人さんたちなら大歓迎コン!今晩は宴だコン」


 その夜はマッチョ商人にとってもモフ達にとっても良い夜になった






 マッチョ商人は豊富にある大山のおいしい果物とモフ達では余らせていた大量の肉を食い、そしてモフ達にとっては友好的な人間の滞在というのはモフ達の王国をつくるためには必要なことだったし、なによりも人と関わることを女王は喜んでいることをモフ達は感じ、結果モフ達も人と関わることに良い感情を感じることとなった






 そして夜は平和的、友好的に更けていった

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