第398話 大都市ザナドゥ
<モレクの回想から>
ザナドゥで魔術研究所所長としてモレクは従事していた。
とても優秀で、ザナドゥ王からも勲章をもらうほどだった。
ザナドゥは人口150万をほこる大都市。
ダンジョンも保有し、魔素の管理も完璧だった。
機械技術も武装ロイドと魔法の融合が後少しで完成するところだった。
それが完成すれば、操縦者に負担をかけることなく永久機関として動くロイドが完成する。
もしかすれば、意思を持つかもしれない。
そうなれば他国に対して圧倒的に有利な存在になる。
近頃は星の外からのコンタクトもある。
武力は持っておくに越したことはない。
融合するには強力な魔術師の持続的な魔力供給が必要だった。
モレクにしても、そこまでの時間魔力を供給し続けることはできない。
人間では不可能だった。
ただ、人を融合させてしまえば可能だと考えられていた。
モレクの孫、アリス。
生まれながらにして天才かと思われるほどの潜在魔力を備えていた。
アリスから誕生日にもらったプレゼントの指輪。
モレクはまだ開封していなかった。
そんなアリスが昼過ぎに学校へ行ったきり帰って来ないという連絡が入った。
まぁ、授業が長くなっているのだろうという程度に考えて、モレクは研究を進めていた。
翌朝になっても帰って来ないという。
そんな時に、武装ロイドが完成したという報告を受け、アリスのことはとりあえず頭の隅に追いやり急いで完成品を見に行った。
見た瞬間に思った。
見事だと・・。
まるで生きているようだった。
そして、実際に生きていた。
武装ロイドが語りかけてくる。
「おじい様、アリスよ」
!!
モレクは動けなかった。
何故、武装ロイドからアリスの声が聞こえるのだ。
アリスに似せたのか。
モレクは何も考えれなかった。
だが、武装ロイドがずっと語り掛けてくる。
「おじい様、アリスよ・・あぁ、頭が痛いわ・・」
ブーン・・・。
武装ロイドが振動している。
その形がぶれて見える。
高速振動しているようだ。
2重にも3重にも見える。
「た、助けて、おじい様ぁ!!!」
それがモレクの記憶にある最後の言葉だった。
武装ロイドは暴走し、大爆発を起こした。
モレクは意識してはいなかったが、魔法防御をしていたようで助かった。
研究所周辺は廃墟と化していた。
数日が経過し、生き残った連中に聞くとどうやらアリスを媒介にして武装ロイドを作ったという。
王の命令に従ったようだ。
モレクは疑った。
まさかあの王が・・。
だが、聞いてゆくとどうも本当らしい。
そして、王のところへ向かっている時に通路で偶然聞いてしまった。
「あの暴走した武装ロイドに使われていた人間だが、失敗だったようだな」
「あぁ、ダメだ。 人では意識を持ちすぎる。 意思を持たない魔力の高い生命体でなければダメだな」
「そう思うよ。 それしても、あのアリスって女の子。 おじい様が待っているからって言ったら素直について来たな・・」
そこまでだった。
モレクはそれから記憶がない。
・・・・
・・
気が付くと王宮のすべての人間が消えていた。
モレクは思った。
こんな世界、無くなればいいのだと。
そうだ。
破壊してしまえばいい。
すべてを破壊しつくして、人などいなくなればいい。
・・邪神王。
邪神様に委ねよう。
そして、そのためにこの身を捧げよう。
その後、ザナドゥの住人をすべて使ってアムブロシアを作成。
モレク自身に使った。
だが、完全なものなど存在しない。
不老はどうやら確保したようだが、不死ではないようだ。
そして、長い時間を得た。
その時が来るまで待てばいい。
・・・
そう思っていると、絶好のチャンスが来たという次第だ。
都合よく前の世界は滅んだ。
転移することもできた。
まるで邪神王の復活がシナリオ通りであるかのように進んでいる。
この星に来るために前の世界の太陽を邪神が破壊したかのようにさえ思える。
・・・・
・・
「どうですかな、ハイエルフ殿。 作り話にしてはよくできているでしょう」
モレクはゆっくりと立ち上がり、フレイアに背中を向けて部屋を出て行こうとする。
「アリスさんは・・」
フレイアの言葉を背中に聞きながら、モレクは扉を閉めた。
フレイアも言葉にできない。
自分の立場ならどうしただろうか。
そう思うと、軽く頭を振る。
・・・
テツ、私このままじゃ生贄にされそうよ。
フレイアはつぶやくと窓の外を見つめていた。
◇◇
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