第380話 邪神教団


俺はギルドを後にして家に向かう。

先にフレイアが帰ってくれているはずだ。

そう思いつつ、ばあちゃんの家に向かった。

時間は8時くらいになっていただろうか。

ばあちゃんの家に到着し、中へ入れてもらう。

・・・・・

・・・

無事に帰ってきたことを喜んでくれ、いっぱい言葉を浴びせてくれるが頭に残らない。

俺はどんな顔をしていただろうか。

疲れた顔をしていたのは間違いないと思う。

ばあちゃんが、「疲れているだろうから休んでおいで」という言葉は聞こえた。

俺は軽く微笑み、うなずく。

一度家に帰って寝るよと、ばあちゃんの家を後にして俺は帰っていく。


俺は寝室に入ってそのまま横になる。

上を向き天井を見つめる。

・・・・

・・

俺は弱い。

弱すぎる。

レベルがある世界になって、レベルに依存して強さを得ていただけだ。

まさか、ミランさんやウルダがやられるとは思ってもみなかった。

いくらレベルがあっても死ぬ。

頭の中にいろいろと浮かぶ。

・・・・

なんだろう、はっきりと思い出せない。

いろんな物事は考えることができる。

ミランさんの笑顔を思い出そうとしても、顔がイメージできない。

ミランさんが語りかけてくれた言葉はいろいろと声もついて思い出せるのに、ミランさんの顔がよくわからない。

人って、大事なものは失ってみるまでわからないのだろうか。

そして、失って思い出そうとしてもはっきりとは思い出せない。

その思い出そうとする対象のものに触れると、一気に鮮明になるのに思い出すことができない。

しかも今はその対象がない。


調子に乗っていたよ・・あぁ・・ミランさん・・とてもいい人だった。

うぅ・・・

・・・・

・・・

俺はどうやら泣きながら寝ていたようだ。


俺の家のドアをノックする音が遠くで聞こえる。

その音で目が覚めた。

コン、コン、コン・・。

俺はバッと起き上がり、急いで玄関へ向かう。

時間は22時を過ぎている。

かなり寝たみたいだな。

ドアを開けるとエレンさんがいた。

「こんばんは、テツ様」

エレンさんがそう言いながら微笑んでいる。

俺は少しうろたえてしまったが、とりあえず中へ入ってもらおう。

「どうぞ」

エレンさんを家の中に案内した。


エレンさんに席に座ってもらい、俺も座る。

「あ、何か飲み物を・・」

俺がそういって席を立とうとすると、エレンさんが言葉を出す。

「テツ様、お構いなく。 実はお話があって伺いました」

エレンさんがそう言って話始める。

どうやらギルマス、ミランはアサシンと相打ちをしたらしい。

あの黒い魔石には、ミランの記憶が埋め込まれていたそうだ。

エレンさんにいろいろと遺言のようなものを残していたという。

昔にミランが倒したアサシンの兄弟に倒されたようだ。

・・・・・

・・・

「テツ様、お気をつけください。 ミランのような男でも油断をすればやられます」

エレンさんはそういって俺の心配をしてくれる。

まだ自分も完全に回復していないだろうに・・強い人だな。


そして、そのアサシンは邪神教団によって雇われていたようだとも言う。

また、転移してくる前の世界で、高位の暗殺者3名が確認されていた。

そのうちの1人はミランが倒した。

その兄弟によってやられてしまったが、おそらくウルダの方には残り1人の暗殺者が向かったのではないかとエレンさんは推測。

「邪神教団・・」

俺はつぶやきながらも、いまいちその存在がよくわからない。

良くないものだというのはわかっている。

だが、いったい何のためにそんな教団が存在するのかがわからない。

エレンさんの説明でも、ただ破壊のために存在しているとしか思えないという。

なるほど・・わからない存在ということだけはわかっているんだな。

そんなことを思って、俺は少し笑ってしまった。


「エレンさん・・これからどうするつもりなのですか?」

俺は聞いてみた。

ギルマスがいなくなってどうするのだろう。

少し心配した。

俺が聞くと、エレンさんは微笑みながら言う。

「テツ様、ここにミランの意思を受け継ぐものがおりますわ」

そういってお腹を撫でる。

!!

「エレンさん、それって・・」

「ええ、ミランの子です」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る