第337話 シルビアと一緒


シルビアは弓を取り出すと背中へ背負っていた。

サマになっているな。 

似合う。

それに、背負ってると胸が特に強調されている。

こ、これは・・ごっつぁんです!


俺がそんなことを考えていると、シルビアが心配そうな顔でこちらを向く。

「テツ、どこか調子が悪いのか? 変な顔をしてるが・・」

「い、いや、問題ない。 この頃忙しかったからな」

俺はとりあえずそう答える。

「そうか、気をつけろよ」

シルビアは一応気遣ってくれているようだ。


「シルビア、ダンジョンは何階層まで行っているんだ?」

どの階層から始まるのか気になったので、俺は聞いてみた。

「私はそれほど活動してないからな。 でも、ダンジョンは一応25階層まではカウントしてるぞ」

「そうか・・」

俺はぼんやりと返答。 

なぜなら、シルビアの胸が気になるからだ。

気になるどころではない。

それしか考えれない!

これでは、戦う前に俺が死ぬ!

どうにかこのアホな考えを消さなきゃいけない。

俺達はダンジョンの入口まで来てしまった。

シルビアの胸に俺の目線が引き寄せられる。

クッ・・な、何とかなるだろう・・たぶん。


俺とシルビアはダンジョンの入口でカードを提示して、パネルを通過させる。

階段を降りながらパパパと階層をカウントさせて25に合わせた。

階段を降りると、25階層のフロアが広がっていた。

シルビアはレベル30だったはずだ。 

俺がレベル42。

さて、この辺りの魔物はそれほどレベルの高い魔物が出るわけじゃない。

「シルビア、スピード重視で次の階層へと進んで行くけど、大丈夫か?」

俺はとりあえず聞いてみる。

「問題ないぞ、テツ。 よろしく頼む」

俺たちは次の階層への入口がある場所へと一直線で向かう。


この辺りの階層には、ちらほらパーティを見かける。

レベル的には25程度のパーティだろう。

ソロで行動している奴もいるようだ。

俺達は、そんな連中に構うことなく移動する。

この階層のボスだろうと思われる魔物がいるが、この辺りの魔物なら俺が倒すまでもない。

シルビアに倒してもらう。


ゲートキーパー的なボスも、1時間もすればリポップするだろう。

また、誰かが倒したその隙に次の階層へ行ってもいい。

ただ、実力に見合わない行動をすると、その代償は高くつくのでほとんどの冒険者はきちんと順を追ってダンジョンを攻略しているようだ。


シルビアは弓をいっぱいに引き絞り、スカッと放す感じで矢を放つ。

矢はフレイアと同じく、魔力で生成しているようだ。

濃い紫色といったらいいのだろうか、きれいな軌跡を描きながら矢が飛んでいく。

魔物にヒットし倒すと、シルビアは普通に弓を背負い直す。

俺はただシルビアについて行く感じだ。

だが、シルビアが弓を背負い直す度に俺の目線が引き寄せられる。

俺の意思とは関係ない。

鉄の意思を持ってしても、この目線の動き・・俺には難しい。

もしかして、シルビアの隠れたスキルなんじゃないのか?

敵なら、おそらく俺は死ぬ。


そのまま移動を重視して、29階層まで来た。

ここまでそれほど問題はない。

29階層のフロアに立つと、きれいな星空が見える。

フレイアと来たときも星空だったよな。

ここって、いつも星空なのか?

そんなことを思いつつ、索敵してみる。

ピピピ・・エリアの中心付近にレベル28:ワイバーンが5匹ほどいた。

人の気配はない。

シルビアもレベルが一つ上がって今は31になっている。


時間は10時過ぎ。

シルビアがゆっくりと歩いて、ワイバーンの方向へ近づいて行く。

「シルビア、大丈夫か?」

俺はつい聞いてみた。

「あぁ、問題ない。 もしもの時は、テツが守ってくれるのだろ?」

シルビアがニヤッとしながら言う。

俺もゆっくりとうなずき、一緒に歩いて行く。

シルビアが弓を引き絞り、矢を放つ。


ヒュン! と、風を切る音とともに矢が飛んでいく。

相変わらず、濃い紫色の軌跡を描く。

続いて2本、3本と連射をしていた。

5匹目のワイバーンには当たらなかったようだ。

ワイバーンが急降下しながら接近してくる。

シルビアが次の矢を構えようとしているが、間に合わない感じだ。


俺がトンと軽く移動して、ワイバーンを斬った。

俺達の周りにきれいな魔石が転がっている。

「シルビア、この魔石もらってもいいか?」

俺がそう聞くと、肩で息をしながらシルビアが返事をする。

「はぁ、はぁ・・あぁ、いいぞ。 はぁ・・はぁ・・」

「どうしたんだ、シルビア?」

俺は驚いた。

あれほど軽快に弓を引き、矢を放っていたはずなのに。

「・・ふぅ、迷惑をかけたな。 実はな、矢を放つ時に魔力を込めているんだ。 威力が違うからな。 ただ、ここまで休みなしで来ただろう。 魔力切れだ」

シルビアがその場にしゃがみ込み、苦笑いしながら言う。


そうだった。 

全然休憩せずに突っ走って来て、ほとんどシルビアが倒していたからな。

「シルビア、すまない。 気が付かなかったよ」

「いや、テツが気にすることじゃない。 私が不甲斐ないだけだ」

シルビアはそういいつつ、身体を起こした。

!!

「そうだ。 シルビア、これを飲め」

俺はアイテムボックスから、前にフレイアに作ってもらっていた魔力回復薬を取り出した。

「テツ、これは・・」

「あぁ、魔力回復薬だ。 フレイアに作ってもらったものだ」

シルビアはうれしそうに遠慮なく飲んでいた。


「ふぅ・・身体が軽くなったよ。 ありがとう」

シルビアがにっこりとしてお礼を言ってくれる。

ドキッとする。

こういった仕草って、グッとくるな。 

プラスこのスタイルだ。

このダンジョン魔石集め、正解だな。

さて、次の階層30階層へ行こう。

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