第333話 すまない、見たことはあるんだが
俺は少し恐縮かつ緊張しながら聞いてみる。
「すみません。 軽い気持ちで見学に来てみたのですが、もうすぐ授業が始まるというのにお邪魔してしまって・・」
俺がそう言うと、笑いながら答えてくれた。
「あはは・・テツ殿、そんなに
そういって、ケラケラと笑っている人がいる。
「は、はぁ・・」
俺は曖昧な返事を返してその人を見た。
?
よく見ると、どこかで見たようなそんな気がするが。
俺がそんな視線を送ると相手が気づいたらしい。
「テツ殿、私のことがおわかりになりませんか?」
相手はそういってジッと俺を見ている。
「う~ん・・どこかで見たような気がするのですが、すみません」
俺がそういうと、少ししょぼんとしたような顔をしてつぶやく。
「はぁ、残念です。 私は記憶に残る女ではなかったのですね」
おいぃ!
その誤解を招く発言はやめろ!!
心の声です、はい。
俺はそう言われて、もう一度見つめる。
やはりわからない。
でも、見たことはある。
相手が少しモジモジしながら、
「テツ殿、そう見つめられると照れるのですが・・では答え合わせといきますか。 へレメスです。 ドワーフ国から帝都への帰りにワイバーンで送らせてもらった帝都騎士団第一隊員です」
ヘレメスがそういうと、思い出した。
!!
確か、俺はワイバーンに乗った瞬間に寝たような気がするが・・そうか。
俺はうんうんとうなずきながら、思い出せずにいたことをお詫びした。
ヘレメス達騎士団は、順番で学校に派遣されたりして、生徒の状態をみたりしているそうだ。
なるほど、治安も維持できるしいろいろ便利がいいのだろう。
俺は、学園長から素養を調べてみたらと言われたことを伝える。
「そうですか・・わかりました。 では、こちらへ」
ヘレメスがそういって案内してくれる。
後をついていくと教練場だろうか、そんな場所へ連れて行ってくれた。
部屋がいくつかの空間に仕切られている。
「テツ殿、ここで人の素養を判断するのですが、私がみてもテツ殿は・・」
ヘレメスが小声になりながらブツブツ言っている。
「では、テツ殿、これから始めてみたいと思います」
そういって、小さな水晶のような球の前に連れて行かれた。
「テツ殿、これは
ヘレメスの言われるまま、俺は手をかざす。
球が少し光ったかと思うと、ヘレメスが魔晶球を眺め横のパネルを見ていた。
「う~ん・・テツ殿、魔術師ですか?」
「いや、職種は魔術師じゃないんだが・・」
俺がそう答えると、ヘレメスは困ったような顔をしている。
「魔力量が凄まじく多いということではないのですが、通常よりは多いのです。 あ、それと職種は余程のことがない限り聞かれませんからご安心を。 個人情報を知るのは責任が伴いますからね」
ヘレメスがウインクをしながら言う。
「テツ殿、では少し魔法を見せてもらってもいいですか? どのような魔法を使われているのか知っておきたいのです」
ヘレメスが真面目な顔で聞いてくる。
「ヘレメス・・どんな魔法を使えばいいんだ?」
俺は何をやっていいのかわからない。
「そうですねぇ・・自分の一番得意な魔法とか、強力な魔法をみなさん使われたりしますが、テツ殿も自分の得意な魔法であれば問題ないかと思います」
ヘレメスが答えてくれる。
・・・
俺は悩んだ。
スーパーノヴァを撃つと、おそらくここら一帯が吹き飛ぶ。
そして俺も立っていられない。
フレアではどうだろう?
これもヤバいかもしれない。
俺が悩んでいると、ヘレメスが言葉をかけてきた。
「テツ殿、それほど心配されなくても大丈夫ですよ。 この部屋は魔法防御されていますし、魔法力は壁で吸収されて外へは影響が出ないようになっています」
「ヘレメス、本当に大丈夫か? 俺の魔法って自分ではどれくらいのものかわからないんだ」
俺はそう答えるしかできない。
「ま、撃ってみればわかりますよ」
ヘレメスが気軽に言ってくれる。
よし、それならフレアを使ってみよう。
これなら1度使ったくらいでは、俺も倒れることはないだろう。
壁も魔法防御されているというし。
何せ、帝都の建物なんだ。
信用しよう。
俺はそう思うと一歩前へ出て、集中した。
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