第294話 レア・レイドルド



男は驚いた!

つややかに輝く黒髪。 

目はパッチリと大きく、スレンダーな体型。

日本のアニメキャラのようだと思ってしまった。

男はその声を聞きながら、自分を助けてくれたであろう桃色の女の人の両手を握ってお礼を言った。

「あ、ありがとうございます。 助けてくれたのですね・・・」

そう心から感謝を込めて言った時だ。

桃色の女の人が握られた手を震わせながら、男の手を振り払う。


「・・ビ、ビチクソが・・手を放せ」

「え?」

男は何を言っているのか意味がわからなかった。

桃色の女の人の顔を見た。

!!

目が合わせられない。 

凄まじく恐ろしい顔になっている。

先ほどまでの天使のような顔はどこへ行ったんだ?

そんなことを思っていると桃色の髪の女の人は立ち上がる。

「貴様ぁ!! 少し優しくしてりゃあ図に乗りやがって!!」

今にも男を殴ろうとしていた。

「あらあら、セレネーいけませんわよ。 異世界人をおどしては」

レアがそう声をかけるとセレネーはピタッと固まる。 

そして、男を放り出しレアの横で片膝をつく。

普通の表情に戻っていた。


「自己紹介がまだでしたわね。 わたくし、レア・レイドルドと申します。 アニム王国の辺境防衛を受け持っている武装国家の一つ、レイドルド帝国皇女ですの」

レアがそう言うものの、男は何を言っているんだという反応だ。

その反応を見つつ、レアは微笑む。

「とはいえ、そんな説明をしても異世界人には理解できないかもしれませんわね。 魔素を含まない文明しか持たない下等種族のようですし・・それよりもあなた、この国の住人ですの?」

レアは質問をしてみる。

男は状況が全くつかめない。

言葉を返さずにいると、セレネーが一歩前に近寄って男の胸ぐらをつかみ持ち上げる。

「貴様、レア様がお言葉をかけてくださっているのだ。 サッサと答えぬか!!」

セレネーが段々と声を荒げて言う。

「あらあら、セレネーさん。 先ほども異世界人を脅してはいけないと言いませんでしたか?」

レアがそういうと、セレネーは手を放し男をそのまま落とした。

セレネーは片膝をつきレアに謝罪。


男は軽く尻餅をついたが、すぐに起き上がってレアに答える。

「い、いったい、何が起こっているのか俺には理解できません。 ですが、俺がこの国の住人なのは間違いありません」

「そうですか。 では、この国のトップの方とお話できますか?」

レアは普通に聞いている。

「ト、トップ・・大統領ですか?」

男は驚いてしまった。

まさか大統領に会わせろとは・・この女たちは頭がおかしいのか。

異世界人がどうのこうの言っているが、何だ?

見た目も少し違う。 

俺が知っているどこの国にも、レイドルド帝国なんて名前の国はない。

だが、言葉は丁寧に話すし俺を助けてくれたのも事実なのだろう。

SF映画の世界が目の前で起きてるような感じだ。 

夢じゃない。

男はそんなことを考えていた。


「この国のトップの方は、大統領というのですね。 お会いできますか? その前にあなたお名前は?」

レアが聞く。

「あ、はい。 俺はキースといいます」

男は言われるままに答える。

「そう、キースね。 ではキース、その大統領のところへ案内しなさい」

レアは当たり前のようにいう。

そんなことを話しているうちに、フローラたちが戻ってきた。


「あら、レア様。 その男目覚めましたか?」

エリスがレアの前で軽く挨拶をして声をかけた。

「男、レア様が案内しろと言っているのだ。 返事は!! サッサと答えぬか!」

セレネーがまた威圧的に言ってくる。

キースはビクッとしながら答える。

「あ、はい!! 大統領に会いたいと言われましても、ここニューヨークから首都ワシントンまでは400キロ近くあります。 すぐにとは・・」

「キース、あなた場所はおわかりになるのですね」

レアがそういいながら、フローラの方を向く。

フローラがうなずきながらキースに近づく。


フローラがキースの頭に手を置き、目を閉じた。

すぐに目を開けてレアを見る。

「レア様、わかりました。 かなり近い距離にあります。 走ればすぐかと・・」

「そうですか、フローラありがとうございます。 では、出発しますか。 誰か、そのキースを連れていらしてくださらないかしら」

「はい」

背中に大剣をかけている女の子、アウラが答える。

フローラはキースの記憶を読み取っていた。


◇◇


レア・レイドルド(レベル44):(レイドルド帝国皇女)大魔導士:ローアマスター

フローラ(レベル42):(姫のロイヤルガード)大魔術師

アウラ(レベル42):(姫のロイヤルガード)大剣使い:剣聖

エリス(レベル42):(姫のロイヤルガード)レイピアの達人:グレイトフェンサー

メリッサ(レベル42):(姫のロイヤルガード)格闘家:拳神

セレネー(レベル42):(姫のロイヤルガード)ハイプリースト

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る