第251話 ドワーフのおやじ
店の中に入ってみると、右側に武器、左側に防具などが並べられていた。
真正面にはカウンターがあって、ドワーフのおやじがいた。
ドワーフのおやじがジロッとこちらを見て、また下を向いている。
俺も黙って武器を眺めてみた。
なるほど・・結構いいものがあるな。
鑑定を使ってみる。
どれも☆が1~2個程度の評価がついている。
攻撃を上げるものとか、アイテムボックスが備わっている道具もある。
俺が眺めていると、おやじが話しかけてくる。
「お前さん、帝都の住人かね?」
低い、しぶい声だ。
「あ、はい、そうです」
少し驚いたが返答する。
おやじはそう聞くと黙って俺を見つめていた。
おっさんに見つめられてもな。
「おやじさん、ドワーフのお店っていつできたんですか?」
俺は聞いてみた。
「ついさっきだよ」
え?
おそらくアホ面だったろう。
俺はその場で立ったまま、おやじを眺めていた。
そうだよな・・ドワーフなんて今まで見かけなかったし。
俺が動かずに呆けていると、おやじが話しかけてくる。
「お前さん、レベルは結構あるんじゃないか? ワシではわからなんな」
「え、あ、はい・・」
俺が言葉に詰まりながら答えていると、入り口のドアが開いた。
若い冒険者だろうか。
ワイワイ言いながら入ってきた。
「おい、ここドワーフの店だってよ」
「ほんとか?」
「いやいや、もしそうなら俺たち向きだな・・」
何やら勝手なことを話しながら、3人の男が入ってくる。
すると、ドワーフのおやじが立ち上がり、入ってきた冒険者の方へ歩いて行く。
「お前さんたち、場所を間違えてやせんかね?」
おやじ・・威圧感があるな。
俺はそう思ってみていた。
「な、なんだよ、おっさん!」
冒険者の一人が声を震わせながら答える。
「この店はな、レベル25未満の冒険者はお断りなんだ。 表の看板にも書いてあるだろ」
ドワーフのおやじは疲れたような顔で話している。
え?
そんなの書いてたっけ?
俺がそう思っていると、冒険者の一人が外へ出て行って確認していた。
・・・
「兄貴、確かに書いてあります!」
「お、おやじ、そんなの関係あるかよ。 お金はあるんだ。 武器を売ってくれ」
おやじの威圧感に負けそうだが、兄貴と呼ばれた冒険者は胸を張って言う。
「ふぅ・・お前さんな、武器はな生きているんだ。 持ち主を選ぶんだよ。 もし扱えるのなら売ってやるよ」
ドワーフのおやじはそういって道を開けた。
冒険者たちはみんなで武器の並べてあるところへ行っていろいろ見ていた。
「兄貴、これなんか・・・」
「いや、あっちの方がいいんじゃないか?」
・・・・
・・
冒険者たちは目を輝かせながら話していたが、一人が武器を持とうとする。
!
「あれ?」
武器に触れるが、微動だにしない。
「おい、何してるんだ?」
「いえ、この武器・・持ち上がらないんですよ」
「はぁ? 何言ってるんだ? そんなバカなことが・・」
そういって、兄貴と呼ばれた男も武器に触れ持ち上げようとするが動かない。
・・・
「おやじ! この武器、壁に固定してるんじゃないのか?」
冒険者たちは言う。
ドワーフのおやじが面倒くさそうに近づいて行き、武器を手に取った。
ふわっと、武器が壁から離れる。
そして、そのまま武器をその冒険者に渡してやった。
ドサ!!!
武器を持ったまま、冒険者全員が床に突っ伏している。
「「「うぐぐぐ・・・」」」
「「「た、助けてくれ・・・」」」
ドワーフのおやじがひょいと武器を拾いあげて元の壁に戻す。
冒険者たちは転びそうになりながら、慌てて店を出て行った。
・・・
「いやいや、すまんね」
ドワーフのおやじが苦笑しながら話しかけてきた。
俺も微笑みながら答える。
「ま、あんなものでしょう」
おやじがカウンターへ戻ろうとして俺の横へ来たときに、俺の刀を見た。
そのままおやじの動きが止まる。
「お前さん、その武器・・少し見せてもらってもいいか?」
ドワーフのおやじがおそるおそる聞いてくる。
別に隠すものでもないので、俺は腰から飛燕を外しおやじに渡してみた。
ドサ!!
今度はおやじが、さっきの冒険者と同じ姿になっていた。
「た、助けてくれ・・」
俺は飛燕を手に取り、自分の腰のところにゆっくりと戻す。
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