第147話 古代文明はもしかして転移者の名残か?
しばらくの間、俺がやや放心状態でいると軽食が運ばれてきた。
おいしそうな匂いがする。
その匂いで正気に戻った。
人数分のカップを並べて、紅茶のようなものを入れてくれる。
「テツ・・君たちのところと、食べるものはそれほど変わらないと思うよ。 これも葉っぱを乾燥させて湯を注いだ飲み物だよ。 言語変換されてるので、君たちの国の言葉で伝わると思うが、お茶だと思ってもらえればいい。 後は、茶菓子だね。 どうぞ」
アニム王が
一口飲んでみる。
俺は紅茶関係はあまり飲まないのだが、おいしい。
スッと口に入ってくる。
鼻に甘い感じの匂いが通るが、甘くない。
味はやっぱり紅茶のような味だ。
お菓子の方はどうだろう。
マカロンのような感じだが。
!!
これもおいしい。
「アニム王、とてもおいしいです」
俺の横では、ばあちゃんは用心深く食べていた。
じいちゃんは平気だな。
「そうか、それは良かった」
アニム王が微笑んでいる。
俺は少しいただいてから、昨日の夜に考えていたことをアニム王に伝えてみた。
「アニム王・・以前、言われていたことで、気になったことがあったのです」
アニム王は微笑みながらこちらを見てくる。
「初めてアニム王にお会いした時に、もしかしたら我々の種族はどこかの文明の転移者かもしれないとおっしゃったことがありました。 それがどうもひっかかっていたのです」
アニム王が不思議そうな感じでこちらを見ている。
「確かに・・そんなことを言ったような気がするね」
「ええ、実は私の住んでいるところには、神と名の付く地名が結構あるのです。 そして、それが都市伝説というか、不思議な感じで存在している気がしていたのです。 今までは深く考えもしませんでしたが、改めて考えてみると、もしかして過去の転移者のダンジョンか何かの名残ではないかと思ったりしたのです」
俺が話すとアニム王は興味深そうに俺の話を聞いてくれている。
俺はやや焦りつつも、
「いえ・・私の思い違いかもしれません。 ですが、そう考えると、世界各地にある古代遺跡などもそういった
「ふむ・・それで?」
「はい、それでそういったものを確認しつつ、世界を回ってみようかと思ったりしていたのです。 いえ、そんな大それたことではないのですよ。 単にそう思っただけで、真剣に調査しようとは思っているわけではありませんけどね」
俺はあわてて付け加える。
軽く頭に浮かんでいたものを、アニム王に伝えただけだ。
それよりも、これからのことを考えると、この帝都に両親や家族を住まわせてもらえないか、そちらのことの方が重要だろう。
地上の家は、何かの連絡程度に残しておいてもいいだろう。
そんなことも考えていた。
「なるほど・・そういうこともあるかもしれないね」
アニム王は真剣な顔になって答えてくれる。
「私たちが転移してきて、世界のルールが変化したのは事実だ。 過去においても、そういったことがあっても不思議ではないね。 そうか! だからこそ、魔法・・つまり魔素を使う技術を廃止させたのかもしれないね」
うなずきながらアニム王は言う。
・・・
!!!
なるほど、そうかもしれない。
俺も理解できた。
頻繁に異次元を行ったり来たりすると、お互いが干渉し過ぎるのがよくないのかもしれない。
進化していくには、好ましくないだろう。
ある程度、安定してきた社会に、た新しいシステムが書き換えられる。
落ち着いて社会が発展できない。
進化ってそういうものだろう。
継続しなければ意味がない。
俺の中で何かスッキリしたような気がした。
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