第144話 帝都で宿泊か?
凛と颯がゴクゴクと遠慮なく飲んでいる。
「おいしい~」
俺も一口いただいた。
・・
おいしい。
それほど甘くはなく、濃くて後からさっぱりとした感じだ。
「これは、私の国の果実を絞ったものです。 栄養ありますよ」
アニム王が教えてくれる。
「アニム王、元気になられましたね」
俺はアニム王の明るい顔を見ながら言葉を出す。
「ありがとう、テツ。 やはり仲間がいるのはいいものだね」
アニム王はそういいながら、みんなを見渡していた。
そういえば、みんなを紹介してなかったな。
ばあちゃんのところに立ち寄っただけだった。
「アニム王、紹介します。 こちらから私の嫁と、嫁の母。 頭にワイバーンが乗ってるのが颯、続いて凛。 そして優、全員私の子供たちです。 あ、それとこの美人がエルフのフレイアですね」
すぐにフレイアが反応。
「テ、テツ・・貴様、またエルフをバカにして・・」
耳を真っ赤にして椅子から立ち上がった。
アニム王は笑いながら聞いてくれている。
当然、俺はフレイアに頭を殴られた。
「さて、これからどうするかを考えなきゃいけないね」
アニム王は言う。
「アニム王、拠点ができたので一安心じゃないのですか?」
「それはそうなのだが、少し迷っているのだよ」
俺は不思議に思った。
何故このままではいけないのだろうか。
安心できる街だと思う。
「今の空中都市では、この人数でいっぱいだ。 また空中都市を増やせば、人も受け入れられるだろう。 だがね・・人はやはり地上で暮らすのがいいと思うのだよ」
なるほど・・そういうものかもしれない。
俺はうなずきながら聞いている。
「いや、テツ・・気にしないでくれ。 これは私の問題だから。 さて、今日はもう遅くなってきている。 この帝都で泊まっていくといい」
アニム王がそう言い、宿泊所などを紹介してくれる。
俺は地上にばあちゃんたちがいるので、今日は帰ろうと思っていた。
まぁ、嫁などはここで滞在してもらっても問題はないだろう。
外が好きな人だしな、お義母さんもね。
「アニム王・・ありがたいのですが、私は地上へ帰り、また明日の朝来させてもらいます。 ただ、私以外の家族ですが、皆がよければご厚意に甘えさせていただきます」
そう言って嫁たちに確認してみた。
・・・
即答だった。
ここで宿泊するそうだ。
「では、よろしくお願いします」
俺はゆっくりと席を立つ。
「テツ、地上へはどう行くつもりだい?」
アニム王が声をかけてくる。
「え? 颯・・というか、魔物に送ってもらおうかと思っていましたが・・」
アニム王が立ち上がって近寄って来た。
俺の横に来て、アニム王が手を前に出して何か言葉を発している。
目の前に、畳一枚くらいの大きさの白い壁みたいなのが現れた。
見ていたみんなが、おお・・という声を出している。
「テツ、これはゲートといって、私が1度行ったところなら瞬間的に移動できる空間魔法だよ。 これを使って帰るといい。 テツの家には先ほど行かせてもらったからね」
アニム王が俺の手に魔石のぶら下がったペンダントみたいなのをくれた。
「それを何かの扉につければ、この空間とその扉がつながるようになるよ」
アニム王はそういうと、俺に握手をしてきた。
俺はしっかりとアニム王の手を握り返す。
「アニム王、ありがとうございます。 この短い時間にいろいろありましたが、これからもよろしくお願いします。 では、また明日・・家族を頼みます」
アニム王がうなずく。
みんながテーブルのところでまたね~とか言って手を振っていた。
俺はそれを見つつ、ゲートをくぐる。
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