第117話 俺が、細か過ぎるのか?
俺は食べながら、合間を見てシルビアに話しかける。
「シルビア、明日の朝に出発しようと思うが、いいかな?」
「テツ! そうか、ありがとう。 よろしく頼む」
シルビアはうれしそうだ。
「シルビア、ルナ王の居場所はわかるのか?」
問題はこれだ。
居場所がある程度でもわからなければ、意味がないからな。
「それなんだが、この星の魔素は乱れているからな。 わかりづらいが、気配というか、それはわかるぞ。 ただ、薄い感じなので、かなり距離があると思うが・・」
シルビアは答える。
「そうか」
でも、わかるんだな。
それがわかればいい。
俺は軽く答えて、後はフレイアに留守番をお願いする。
「すまないな、フレイア。 よろしく頼むよ」
フレイアはうなずいてくれる。
「シルビア、それでルナ王だが、どこら辺りにいると感じている?」
シルビアは、パッと顔を上げる。
・・・・
しばらく目を閉じて集中している。
「ルナ様だが・・こちらの方向にいると思う。 だが、さっきも言ったが薄い感じだ。 ただ、この感じを濃くしていくと出会えると思う」
シルビアはそういって、指を向けていた。
「そうか、では明日その方向へ向かって行こう」
俺はそう言って、ばあちゃんにシルビアとフレイアを頼んだ。
俺も上に行って、明日の準備をしなきゃ。
2階では食事も終わり、スラちゃんが出たごみを食べていた。
便利だな、スライム。
バーンはパタパタと颯の周りを飛んでいる。
食べものは、人間のと同じで大丈夫なようだ。
そのうちゴブリンなんかを与えるという。
それはそれで、グロいな。
俺は嫁に明日の朝、出発することを伝える。
「はぁ・・あのねパパ、ほんとに好き勝手にして・・こっちも大変なのよ」
嫁が愚痴る。
ん?
何が大変なのだろう。
魔物の脅威もほとんどないし、買い物も普通にできるようになっただろうに。
お金か?
俺は黙って聞いていた。
「ご近所さんと連携して魔物を倒したり、子供たちのこれからのことを考えると・・どうしていいかわからないの」
嫁は今までの常識の中から抜け出せないようだ。
「あのさ、もう今までの日本じゃないし世界じゃない。 自分の力でルールを作っていかなきゃいけない」
俺はそこで一呼吸置いた。
嫁も少しは聞く気になったのか、こちらを見ていた。
「もし、ご近所さんのご機嫌とかを調整しないと問題が起こるのなら、勝手にやってもらえばいい。 もう基本は教えたはずだ。 それだけでもおつりがくるぞ。 それにこの環境がどうしても合わなければここから出て行けばいい。 この世界はもう誰のものでもない。 今までだって、人間が勝手に自分たちのものだと思っていただけだ」
俺はそう言いながら思った。
そうだよ。
その通りだよ。
俺は自分の言葉に感心してしまった。
「どこかに新しい集団を作って暮らしてもいい。 俺はそう思うぞ」
そうなんだよと思いながら、俺はうなずく。
自分たちで基準を作っていけばいいじゃないか。
アニム王たちと一緒に、新しい国造りとまではいかないまでも、そういった集落を作っていけばいいんじゃないのか?
別に人間にこだわらなくてもいいだろう。
すでにエルフやダークエルフもいる。
そういった人たちと一緒に新しい世界を作るのって、楽しいんじゃないか?
「パパはね、そうやって簡単に言うけど、そんなに簡単にわりきれるわけないじゃないの」
嫁が不機嫌そうな顔で言う。
「いや、それはお前が過去のしがらみを考え過ぎてるんじゃないか? それに、今までだってかなり楽な生活を送ってきただろう」
俺はついつい言ってしまった。
「え? 全然楽じゃないでしょ! パパはお金なんて全然稼いで来ないし・・」
嫁は力強く言う。
「そうか、お金なぁ・・これからの世界では、今までのお金なんて使えないだろ。
それに、楽って言ったのは、家事や子育てなど、普通の嫁ならすることの1/3もしてないってことだ。 今まで、年末の大掃除なんて俺以外したことないだろ。 それに風呂掃除やトイレ掃除、お前の掃除と言えば掃除機をかけるだけ。 拭き掃除なんてしたことないしな」
俺もついついしゃべり過ぎたと思う。
だが、いろいろと次から次へと浮かんでくる。
子どもの朝ご飯や遊んでやることなどなど・・。
嫁は黙っていた。
そりゃ言えるはずもないだろう。
嫁はただ、金、金と言っても無茶苦茶贅沢をするわけではない。
いや、待てよ。
よく高いシャンプーや化粧品を買ってたな。
それに、何とかのファンクラブ、ネイルにピアス、髪もよく手入れに行っていたよな、金もないのに。
車も、軽自動車にしろと言っても、見栄を張ってかどうかわからないが、乗用車のまま変更しなかったしな。
維持費だけでどれだけ必要だったと思っている。
おまけに、俺には生活費を1円もくれたこともない。
小遣いがないのはわかるが、俺の収入はすべて家に入れているのに・・。
あぁぁぁぁ・・。
考えてたら無数に浮かんでくる。
・・・
やめだ、やめ!!
いや、俺が細かいだけか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます