第103話 フレイアさん・・女は強いですな


俺が優の方をチラッと見ると、首を横に振っていた。

自分のレベルは伝えてないようだ。

それは良かった。


「嫁さん・・俺も優もレベルは結構上がったけど、死にそうにもなったからな・・」

簡単にレベルが上がったと思ってもらっては困る。

・・・

嫁のいいたいことはわかる。

パーティに入れてもらって、経験値をもらおうと思っているのだろう。

アホか!!

絶対に嫌だ。


俺の気が向いたら、

それだけだ。

それに基礎レベルは上げてやっただろう。

俺の言い方が、かなり上から目線なのはわかる。

だが、今までどれだけ、俺に対して無礼なことを言い続けてきたことか?

毎日、小さないじめの連続だぞ。

・・・

そんなことを考えたら、抑えきれそうにない感じになってきた。

いろんなことが頭に浮かんでくる。


嫁は口ごもって何か言いたそうにしている。

「・・優とか・・」

「嫁さん、もしかしてパーティに入れてもらって経験値をもらいたいわけか?」

俺は言葉にしてみた。

嫁は何も言わない。

図星だろう。

「いやいや、それは違うだろう。 基本は自分で獲得しなきゃ。 それに基礎レベルは上げてやっただろ?」

俺はやや言葉を強くして言った。

「・・してやった? また始まった・・その上から目線・・」

嫁が言う。

ん?

何か話が変わっていってないか?

こいつ、話題チェンジの天才か?

「いやいや、今は違う話だったよな?」

俺がそういうと、嫁はまたブツブツとつぶやいていた。


「でも、家を離れると不安だし・・」

え?

お前くらい離れても問題ないんですけど。

俺は黙って聞いている。

でもまぁ、嫁さんに死なれたら子供たちはかわいそうだよな。

子どもたちはよくなついてるし。


「優がいるんだから、優について行ってもらって、地道にレベル上げるしかないんじゃないか?」

「でも、パパと優って、レベルの高い魔物も倒したんでしょ?」

嫁が小さな声で言う。

確かに倒した。

だが、それは自分たちのレベルに見合ってギリギリの選択をし続けたからだ。

この嫁は、そのおいしいところだけをよこせと言っているんだ。

こりゃ、俺たちのレベルが30超えなんて言えないな。


「そりゃ、レベルの高い魔物を倒したけど、命がけだったシーンは結構あったぞ。 自分は何にもしないで、おいしいとこ取りって・・ありえないだろ」

俺は思うところを言ってみる。

「この近所では、ワーウルフ位しかいないし、みんなももっとレベルの高い魔物と戦いたいって言ってるし・・」

まだ言うのか、この嫁は・・アホなのか?

生き延びられるようになっただけ、マシだろう。

それにしても、俺は驚いた。

「ほんとにそんなこと言ってるのか?」

俺は言葉を続ける。

「そりゃ、最初は基本レベルがなきゃ生き延びられないだろうから、そこまでは強制的に上げる必要があると思う。 でも、後は分相応と思うぞ。 実力に見合わない能力は、極端な話・・死ぬぞ」

俺は話していて、だんだん強い口調になっていたようだ。


嫁は、周りの人たちを見ていると、レベルを上げたくなったのだろうか?

特に目的もあるわけでもなさそうだが。

人が高級車を持っていたら、うらやましい、そんな感じなのだろうか。

俺には理解できない感覚だな。

今の世界は、ゲームのような感じだがゲームじゃない。

詰んでしまえば、終わりだ。


それにしても近所の人たちも、自分たちのレベルが上がってきたことで認識が甘くなってないか?

都市部へ行けばレベルの高い魔物はいる。

だが、即死だろう。

まさか戦車でも倒せない魔物がゴロゴロいるとは考えられないだろうな。

それでも、嫁はどうも納得がいかないらしい。

でも、それにはやはり積み重ねが必要だと思う。

いきなり宝くじで大金を手にしても、使う能力が備わっていなければ意味がないし、むしろ害だろう。

そこが理解できない・・できないのだろうな。

理解できていれば、そういう言葉は出てこないだろう。


「嫁さん・・あのさ、やっぱ自分で上げていくしかないと思うぞ。 楽して上げてもなぁ。 それに、無理に上げなくても今は脅威じゃないだろう。 凛がいきなりレベル20くらいになっても、6歳だぞ・・どうするんだって感じだな」

俺は言ってみる。

嫁はまだブツブツ言ってるな。

う~ん、どうしたものか?

俺は考えていた。


「おい、そこの人間の女!」

俺の後ろから、透き通った声が響く。

フレイアが階段を登って来て、俺の後ろに居たようだ。

気づかなかったな。

嫁がフレイアの方をみる。


「人間の女。 途中から話を聞いていたが、自分だけが楽をしてレベルを上げたいのか?」

嫁は何も言わない。 

フレイアが続ける。

「テツが楽をしてレベルを上げたと思っているのか?」

フレイアさん・・俺は、楽をして上げました。

すみません。

アニム王に助けてもらいました。

すみません。

俺は念仏のように唱えていた。


「私が少し手助けしたが、魔物との戦いは、それは凄まじいものだったぞ。 普通はパーティで倒すような魔物に向かって行って・・一言でいえば、運がよかったのかもしれないが、それでも自分の力で今を得たのだ。 そこら辺をもう1度考えてみたほうがよくはないか? 人間の女!」

フレイアはそう言って、颯の方へ歩いて行った。

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