第101話 颯・・辛かったな


「フレイアさん・・加護がなくなったらどうなるんですか?」

俺は移動しながら聞いてみた。

フレイアはポーン、ポーンと跳ねながら走ってる感じだ。


「まずは、寿命だな。 その交配した種族の寿命になる。 エルフは長命種族で、だいたい500年くらいは生きるからな。 後は、魔法などの制限を受け、初級くらいしか使えなくなるんじゃなかったかな? 私もはっきりとはわからないんだ」

フレイアが答える。

なるほど。

そりゃ、デメリットが大きいな。

俺は素直にそう思った。

そして、女系で男が生まれない。

エルフ族こそ男に免疫がないのかも?

そんなことを考えたりもした。

後は他愛ない会話をしながら移動。

・・・

・・

すぐに俺の家が近づいてくる。

そのうち、いろいろと聞いていこう。

今はこのエルフをどう紹介すればいいのか。

その方が気になる。

「フレイアさん、もうすぐ私の家なのですが、その首後ろのフードを被ってもらえませんか?」

「ん? どうしてだ?」

「い、いえ・・先ほども言ったように、この星の住人はエルフなど見たこともないのです。 なんというか・・その反応が怖いのですよ」

俺もどう説明していいのかわからない。

「ふむ・・ま、いいだろう」

フレイアは素直にフードを頭にかけていた。

耳はきれいに隠れているが、その美人さは余計に引き立つような気がする。


ん?

俺の家の前で人が集まっていた。

俺は近づいて行く。

どうしたのかと思ってみていると、颯がそこで座っていた。

まずはご近所さんに挨拶だな。

「あ、こんにちは~」

「あ、町田さん、こんにち・・・」

!!!!!

全員の注目を浴びてしまった。

フレイアが、だ。


ま、そうなるわな。

「あ、俺の友人のフレイアです」

と、とりあえず紹介しておこう。

ただ金髪だからな。

どう説明したものか。

俺がそんなことを考えていると、何やら重い雰囲気を感じる。

段々と男の視線がきつくなるのは気のせいではないだろう。

フレイアが近寄って来て、挨拶をする。

「フレイアです、よろしく」

その一言で十分だろう。

男どもみんなの背筋がピンと伸びる。

やられたな。

こんな美人を見たこともないだろう。

後で友人の留学生の子とか何とか言ってごまかそう。


フレイアが俺の方へ近寄って来て、服を引っ張る。

「テツ・・この星の住人って、こんな感じなのか? 気持ち悪いぞ」

小声で言った。

はい、その通りです。

みんな、あなたみたいなのに弱いのですよ。


さて、それよりも颯が気になる。

さっきから座ったまま動いていない。

「颯・・どうしたんだ?」

俺は声をかけてみる。

!!!

颯の目から涙があふれていた。

手には魔石を持っている。

何があったんだ?


聞くと、颯は外に出て、スラちゃんとウルフと遊ぼうと思ったそうだ。

ウルフが普通の大きさに戻った時に、ご近所の人がワーウルフがいると思ったらしい。

即、討伐されたという。

まさかテイムされてるとは思わなかったようだ。

ご近所さんは悪くない。

颯も悪くない。

俺は言葉を失った。


するとフレイアが颯の横に行き、そっとしゃがみこむ。

「君・・その魔物が大好きだったんだね」

颯はうなずいていた。

「ちょっと、お姉さんにその魔石、見せてもらえるかな?」

颯は言うがままに魔石をゆっくりとフレイアに差し出した。

フレイアはそのまま、その魔石に触って目と閉じる。


フレイアの魔石に触れてるところが光っている。

「・・なるほど・・ウルフっていうんだ」

フレイアは目を閉じたまま言う。

颯はまたうなずく。

!!

颯は、名前なんて一言も言ってないぞ!

俺は驚きつつも見ていた。

ご近所さんたちも、やや離れたところで嫁と一緒に颯とフレイアを見ている。


「君、名前は?」

フレイアは優しく聞く。

「颯・・」

「そう、ハヤテね。 ハヤテ・・ウルフはハヤテがとても好きだって。 短い時間だったけど、楽しかったって言ってるよ。 もうすぐ、いなくなるけど、ありがとうだって・・」

フレイアはそう言って颯を見つめた。

「ほんと? ウルフはそう言ってるの?」

フレイアは大きくうなずく。

「ありがとう、お姉さん」

颯は涙を拭き、立ち上がる。

フレイアにお礼を言うと、魔石を持ったまま家の中へ入って行った。


その様子を見ていたご近所さんもホッとしたようだ。

頭を下げたり、すみませんとか言葉が聞こえたりした。

嫁も気にしないでくださいとか言ってたような気がする。

ただ、男の目線は俺に殺気を込めているよな。

ご近所さんを見送ると、嫁がフレイアに礼を言っていた。

「ありがとうございます」

フレイアは微笑んで返す。

「で、パパさんは何してたの? それに、この人誰?」

嫁が厳しい目線で聞く。

俺の心を奪ったエルフです。

心の声です、はい。


「え、いや、その・・ま、家の中へ入ろう。 フレイアもどうぞ」

俺はそう言ってとりあず家の中へ入って行く。

優もフレイアに見とれていたようだ。

だろ? 

美人だろ?

だが、これからどうやって説明しようかと俺は悩み出していた。

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