第98話 エルフだ!!!


とにかく今は目の前のミノタウロスだ。

俺は何も考えず刀の影に隠れるように思いっきり前に出る。

ダッ!!

そして、ミノタウロスの胸の辺りを目掛けて身体ごと突っこんでいく。

「うぉりゃぁぁ!!!!」

刀が少し光ったような気がした。

ドン!!


どうなったのかよくわからないが、地面に着地する感覚がある。

どうやらミノタウロスを貫いたようだ。

ゆっくりと後ろを振り向く。

ど、どうだ?

身体の真ん中に穴を開けたミノタウロスが倒れるのが見えた。


『経験値を獲得しました』

『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』

天の声が聞こえる。

俺は天の声を聞きながら、その場に仰向けになった。

立っていられない。

「はぁ、はぁ・・た、助かった。 ふぅ・・しかし、あの矢はいったい?」


声が聞こえてくる。

俺はその声の方をゆっくりと見る。

そこにはきれいな金色っぽい長い髪の女の人がいた。

「そこの人間、大丈夫か? というか、言葉・・わかるか?」

その女の人が声を掛けながら、俺の方へ近づいてくる。

ピョンとジャンプして、俺の前にふわりと静かに着地した。

!!

「ん? どうしたんだ? 驚いたのか?」

きれいな女の人は言う

あぁ、驚いたとも!

俺は人生で一番衝撃を受けただろう。

アニム王に会った時以上の衝撃だ!


エルフだ!!

一目見てわかった。

間違いなく、外見はエルフだ!!

やや長い耳、透き通るような肌。

金色か銀色かわらないが、輝くきれいな長い髪。

アニメキャラか?

無茶苦茶美人だ。

片手に弓を持ち、腰にはレイピアのような細剣をぶら下げている。

胸は・・ペッタンだ。

俺は無言で、頭から足下まで何度も目線を動かして見ていた。


「おい、人間。 今、失礼なことを考えなかったか? というか、言葉通じてるか?」

きれいな女の人が同じように聞いてくる。

「あ、あぁ、はい。 言葉は通じています。 それと先ほどの矢はあなたですよね? ありがとうございます。 助かりました」

俺は慌てて身体を起こし、お礼と返事をした。

「うむ」

きれいな女の人、偉そうだな。

「こちらに大きな魔素を感じたので来てみたら、魔物と交戦中の人間がいるではないか。 余計なお世話だったかな?」

きれいな女の人はニコッと笑い、俺に前の方へ近寄って来る。


俺は久々に緊張した。

まさか、エルフと出会えるとは思ってもみなかった。

ありえねぇ。

アニメや想像のものでしか見たことがない。

それが動いて、しゃべっている。

夢じゃないよな?

俺は目を閉じ、一呼吸して目を開いた。

・・・

やはりそこに存在している。

夢じゃない。


「おい、どうした? 大丈夫か?」

きれいな女の人は俺をのぞき込むように見てくる。

!!

そんなに接近してきたら、抱きつくぞ!!

いやいや、それでは犯罪だ!

いや、もうそんな秩序はないな・・アホな妄想ばかりが駆け巡る。


「い、いえ、大丈夫です・・ほんとに・・」

俺はうまく言葉を出せずに、ただ妙に緊張していた。

免疫がないとドキドキするよな。

きれいな女の人が片膝をつき、俺の肩に手をおいて顔を覗き込んでくる。

な?

なんですか?

もしかして、いきなりキスしてくれるんですか??

俺は思わず目を閉じてしまった。

「うむ・・大丈夫そうだな。 人間・・お前、かなり強いな」

きれいな女の人が微笑みながら言う。


え?

いったい何だったのですか、今のシーンは?

「え?」

俺はゆっくりと目を開けながらエルフを見る。

「いや、さっきの魔物はミノタウロスだろう。 普通は数人のパーティを組んで倒すような魔物だ。 まさかソロで対峙たいじしているものがいるとはな。 この星の住人はそれほど強いのか?」


この星?

「あの・・すみません。 あなたは一体誰なのですか?」

俺は困惑していた。

「あぁ、私はフレイア。 エルフ族のフレイアだ」

エルフって言ったよね?

アニム王に会った時だって、こんな変な感じじゃなかったぞ。

もしかして、一目惚れってこんな感じなのか?

そんなアホなことを思いつつも、俺は返答をする。

「フレイアさん・・ですね。 私はテツといいます。 この星の住人です」

「そうか、テツ。 よろしくな。 アニムから聞いている」

エルフは言う。



え、アニム?

アニム王のことか?

これが逆に俺を冷静にさせた。

「フレイアさん、アニムって・・アニム王のことですか?」

「そうだが、それがどうした?」

いや、どうしたってねぇ。

何でアニム王のことを・・というより、いつ会ったんだ?

それに、なんかとっつきにくい人だなぁ。


「フレイアさん・・」

俺は声を掛けてみる。

「ん? なんだ?」

フレイアは微笑みながら返答する。

くぅ・・その眼差し、俺には強烈です。

「いや、エルフが全員かどうかわかりませんが・・とてもきれいですね」

俺は言わずにいられなかった。

別によこしまな思惑はないぞ。

素直にそう思っただけだ。

フレイアは少し驚いたような感じだった。

「な、い、いきなり何を言っている? まだ、会ったばかりだぞ。 それを好きなどとは?」


俺の方が驚いた。

「いえ、違います。 きれいだと言ったのです」

「き、きれいだと? そうか・・ありがとう」

フレイアは少し顔を赤くして、照れているようだった。

エルフって天然なのか?

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