第77話 アニム王、よろしくお願いします!!


「あ・・は、はじめまして、アニム王、テツです。 いつもいろいろありがとうございます・・って、何言ってんだ俺・・」

俺は驚きと焦りとで何を言っているのかわからなかった。

クスクス・・アニム王は笑いながら言う。

「突然で驚かせてしまったかな」

「いえ・・いや、はい。 驚きました」

俺は緊張のあまりうまく言葉が出せていない。


「少し結界を張るからね」

アニム王がそういうと、俺とアニム王を囲むように結界を張ったようだ。

俺は周りを見渡して少し歩いてみた。

境界面近くまで行くと、分厚い空気の壁があるような感覚がある。

グッと進めば通れそうな感じだ。

「驚かせたかな。 安心してくれたまえ。 この結界がある限りほとんどの魔物は感知できないし、侵入もしてこない」

アニム王は言う。

マジですか・・俺は呆然としている。

「これで落ち着いて話ができるだろう。 テツ、本当によく来てくれた。 ありがとう」

アニム王はそういうと手を差し伸べてくる。

一瞬その手を見て、アニム王を見る。

俺は急いで握手をした。

この握手を俺は一生忘れないだろう。


「アニム王、なんと言葉にすればよいやら・・とにかくお会いできて、光栄です。 本当にうれしいです」

挙動不審な俺を見て、アニム王は微笑みながら言葉を発する。

「テツ、わざわざ会いに来てくれたのだ。 余程大事なことがあったのではないのかね」

・・

あれ?

何かあったっけ?

・・・

俺は少し考えていた。

う~ん・・ただ、アニム王に急に会いたくなったから、それだけだな。

「アニム王・・・ただ、お会いしたかっただけです」

「・・テツ、私にそういう趣味はないよ」

!!

「ち、違います。 私もそんな趣味はありません!!」

俺は焦ってしまった。

まさか、ギャグで返されるとは・・。

・・・

・・

それから、俺にとってはとても有意義な、そして幸せな時間が流れた。

いろいろと聞くこともできた。

たくさんの情報があり過ぎて困ってしまうくらいだ。


おっと、ステータスについても聞きたかったんだ。

「アニム王、ステータスなんですが、スキルとか職業とかどんな種類があるのですか」

もうかなり慣れてきて、俺もほとんど緊張しなくなってきた。

「スキルはね・・かなりラフなんだよ。 神の気まぐれというか、適当だね。 でも、本人の不利にはならないと思うよ」

アニム王は言う。

なるほどな。

俺を見ながらアニム王は続ける。

「職業も、人の生きてきた時間が反映されやすい。 私などは選べないのだがね。 王族として固定されてる。 そして光の神の使徒だ」

アニム王が少し難しそうな顔をしている。


え?

神の使途?

それがどういうものなのか、俺には理解できない。

「そうなのですか・・良いのか悪いのか、私には判断しかねますが・・」

俺がぼんやりと答えると、アニム王は苦笑いしている。

・・・

その後、少し他愛ない会話をして俺は聞いてみた。

「・・それで教えてほしいのです。 職業というのは、上位職へと移っていきますが、今まで選択で捨ててきた職を選んだりできますか?」

アニム王は少し驚いたような顔をした。


「それは可能だよ。 しかし、上位職を捨てる人は珍しいね。 いないわけでもないが、また初めからやり直しだからね」

アニム王は言う。

「身体能力や獲得スキルが失われたりするのですか?」

俺も興味深々といった感じで聞く。

「失うことは稀にあったり、能力も低下することもあるね。 ただ、能力は今獲得してるところ辺りを維持できたと思うけど、私も話で聞いた程度だよ。 あまり参考にならなかったかな? すまない・・」

「い、いえ、問題ありません。 ただ、どうなのか気になっただけですから・・」

「テツは前の職を選択したいと思っているのかね?」

アニム王は興味深く聞いてくる。

「はい、選択してみたいとは思っているのです。 ただ、余りにも能力が低下するのは嫌だなと思ったりもしています」

俺も明確な答えはない。


アニム王も何か考えていたようだ。

「テツ、レベルアップの方法は知っているね。 魔物を倒せばいいわけだが、パーティを組んでも、その経験値は振り分けられる」

「はい」

俺は力強くうなずく。

「私とパーティを組めればいいのだが、私は誰とも組むことができないからね。 それよりも、この周辺にいる、結構レベルの高い魔物の経験値をテツが得てみてはどうかな?」

アニム王が変なことを言う。

「え?」

「せっかく私に会いに来てくれたのだ。 何かしたいじゃないか。 私なら、このあたりの魔物は問題なく対処できるからね。 それに強い人が増えれば、安全度が上がる。 テツは悪ではないようだから」

アニム王が軽く言ってくれる。


マジか?

そりゃ、願ったりかなったりだが本当にそんなことができるのか?

なんか申し訳ないようなうれしいような。

レベルアップか・・王が提案してくれているのだ。

断るわけにもいくまい。

いや、それどころか俺にはありがたいボーナスだ!

「よろしくお願いします!!」

俺は子供のように大きく返事をした。

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