第76話 初めまして、アニム王!
索敵は継続して使っていると案外MPを消費するようだが、歩くと自動回復ですぐに回復する。
名古屋以降順調で、しばらくすると左側に富士山が見えた。
こんな時なのに、富士山はきれいだな。
20代半ばに、1度だけ富士山頂に登ったことがある。
夜中、5合目に車を止めてタクシーで登山口まで移動。
そこから5時間半くらいかかっただろうか・・山頂は雨。
まったくご来光が見えなかった。
スニーカーにジーンズで登った。
登山を完全になめてる格好だっただろうな。
ウインドブレーカーは持っていて、途中で着用。
道淵で仮眠を取りながら登った。
9号目あたりで息苦しくなり、移動速度を緩めつつ登頂成功。
いい思い出だ。
北京都の友達と一緒に登ったが・・そういえば、あいつ無事だろうか。
落ち着いたら行ってみよう。
そんなことを考えながら移動していると、海老名サービスエリアの近くに来た。
ここは厚木基地の近くだな。
時間は正午前を表示していた。
厚木基地は持ちこたえているだろうか。
ほぼ米軍基地化しているけど、海上自衛隊だしな。
昔は俺もここに居たことがあった。
基地内には映画館やボーリング場、プールにゴルフ場まである。
映画なんて吹替じゃないから、見ててもわからないし。
基地内でお金もドルに両替できた。
そういえば、マクドナルドもあったけど、自転車でドライブスルーに入ったりした思い出がある。
また、円高の時は円で、ドル高の時はドルで買ったりしてたよなぁ。
だが、そんな感慨にふけることができそうもない。
近づいてみると静かすぎる。
ゴーストタウンのようだ。
ただ、建物は無茶苦茶に壊れていた。
厚木基地の外柵も壊れて、米軍の戦闘機なども使用不能だろう。
てか、誰もいないし・・都心部の近くってこんなものなのか。
・・・
何だ?
確かに人の気配は全くしない。
だが、とても驚いたような状態で動かない石像が結構な数、見受けられる。
こんなもの、基地内で作ったのか?
半分に折れてるものやそのままの状態で残っているもの、いろいろあった。
妙に生々しい。
・・・
!!
まさか、石化?
だが、どうやって。
魔法でも使う魔物がいるのか?
それとも石化させるスキルを持った魔物か。
俺の記憶の中には・・確かにある。
ゲームなどで存在しているコカトリスやバジリスク、ゴルゴンなど。
そんな魔物が出たのか?
そりゃ、都市部は壊滅だろう。
ふぅぅぅ・・・。
俺は大きく息を吐き出し軽く目を閉じる。
どうしようもないな・・。
俺は気の毒に思うと同時に、地方に住んでいて良かったと複雑な気持ちだ。
さて、後少しでアニム王に会える。
俺はそう思い、また歩き出した。
246号線に沿って向かおう。
移動速度はかなりペースダウンした。
というのは、この辺りになると、レベルの高い魔物だらけだ。
なかなか思うように移動できない。
魔物に見つからないように隠れながらの移動だ。
俺って隠れてばかりだな。
だが、見つかれば死ぬ。
そんな中、アニム王に念話で問いかけてみた。
『アニム王、テツです。 すみません』
アニム王からすぐに返事があった。
『何かな、テツ』
アニム王、なんか疲れてる感じがするぞ。
『アニム王、疲れてますか?』
『少しね・・で、何かな?』
いつも通りに答えてくれる。
『あと少しでアニム王のいるところへ到着できそうなのですが、レベルの高い魔物が増えてきて、なかなか進めないでいます。 もうしばらくかかりそうです、すみません』
アニム王はカラカラと笑う。
『あはは・・テツは謝ってばかりだね。 いや、すまない。 近くまで来ているのだね・・こちらから行くよ』
アニム王はそういうと念話を切った。
「え? あ・・」
俺は自分の居場所は伝えていない。
ただ近くにいると言っただけだ。
俺の今いるところは、二子玉川の辺りだ。
多摩川の手前で動けないでいる。
それにしても、見たこともない魔物ばかりだ。
こんな時に、本当に忍者でよかったと感じた。
マップ上にわかる範囲で表示されているだけで、
オーガ:レベル22が15体くらい。
後はほとんど単体だが、レベルが高すぎる。
そして、まんべんなく広がっている。
バジリスク:レベル31が1体。
ガーゴイル:レベル18が20体くらい。
ワイバーン:レベル33が1体。
スフィンクス:レベル35が1体。
・・・・
低いレベルの魔物はほとんど見当たらない。
俺は建物に隠れながらマップを感じていた。
どこを通って行っても渋谷に着くまでに、どれかレベルの高い魔物と遭遇してしまう。
しかし、ここまで来てアニム王に会えないままでは・・そんなことを考えていると、俺の肩にポンと手が置かれた。
!!
「うお!!」
ドッキーン!
俺には最大級の驚きだった。
驚き過ぎて声が出ない。
猫が毛を逆立てる感じで飛び上がる。
ドッドッドッド・・。
心臓が少し痛くなる。
全く気配を感じなかった。
俺は急いで振り返り相手を見る。
そして見た瞬間にわかった。
アニム王だ!
「やぁ、テツ・・だね。 アニム・オリホスです。 よろしく」
右手を胸の前に当て、ゆっくりとお辞儀をする。
俺はその美しい動作に見とれていた。
濃い青色のマントを羽織り、眩しいくらいの笑顔がそこにはあった。
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