第68話 ヤンキーどもか
<テツ目線>
俺は道路に降り、人の集団の方へゆっくりと近づいていく。
ヤンキーどもか・・俺は一目見てそう判断する。
関わりたくないなと思うと同時に、どうしてここに人がいるんだと妙な違和感を覚えた。
レベルもある。
どうやってそのレベルを手に入れたのだろう。
まぁ、生き延びるためには、周りの連中を見捨ててもそれは構わないと俺は思う。
それは個人の自由だ。
でも、こいつら都市部から来たのだろう?
見捨てるにしても、よく逃れられたな。
都市部では地方よりもレベルの高い魔物がいるはずだ。
アニム王は都市部で高レベルの魔物を排除していると言っていた。
一体どうやってここまで来れたんだ?
そんなことが頭の中で駆け巡る。
そして、それが違和感につながっていた。
・・・
当然、ヤンキーどもも気づいている。
お互いの距離が30メートルほどまでに接近。
俺はさらに歩調を緩めた。
完全に相手からガン見されている。
同時に声が飛んできた。
「おっさん! そこで止まるっすよ!」
ヤンキーどもがニヤニヤしながらこちらを見ていた。
お、おっさん?
俺は軽く振り返ってみる。
・・
俺しかいないよな。
ちょっとショック。
!!
ヤンキーどもの手に拳銃が握られていて、銃口がこちらに向いている。
なるほど、仲良くはなれないな。
俺はとりあえず気持ちを落ち着け、静かに見つめる。
・・・
拳銃なんて日本では警察官以外は持っていないだろう。
それにこいつ等、どうみても警察官じゃない。
俺は敵と認識した。
「そうそう、止まれよおっさん!」
「止まっても、撃つけどな、キャハハハ・・」
下ッパーズが面白がっていた。
「おっさん、こんなとこで何しよっとですか?」
ユウジは拳銃をもう1丁構えて、両手でテツに銃口を向ける。
「ユウジさん、あのおっさん動かないですね」
「キャハハ・・動けねえんだよ、キャハハ・・」
ヒロキ達は、自分たちのレベルが上がり、身体能力が普通の人間を超えたことで舞い上がっていたのだろう。
人は狩られる獲物くらいにしか見えていないのかもしれない。
「ヒロキはん、どうしますか? 撃っちゃってええっすか? あないなおっさんじゃ、たいした経験値にもなりゃしまへんでしょうが」
ユウジが言う。
経験値?
こいつら今、経験値って言ったよな?
それにしても俺が経験値か。
俺は確信する。
こいつら、人で経験値を獲得したんだな。
それにしても、俺にこいつらを斬れるのか?
「ユウジさん、このおっさん、刀みたいものをぶら下げてますよ」
「あ、ほんとだ・・かっこいいね、おっさん!」
「キャハハ・・ビビッて声も出せねぇってか! キャハハ・・」
下ッパーズがはしゃぐ。
言いたい放題だ。
「おっさん、その刀俺らにくれよ・・」
「そうそう、どうせもらうけど素直に渡せば、一撃・・いや、頭をきちんと撃ち抜きますよ」
「キャハハ・・そうそう、キャハハ・・・」
下ッパーズがうるさく言う。
俺は無言のまま観察していた。
拳銃をみんなが所持している。
人のことを経験値と言っていた。
こいつら、警察官も
「おっさん、黙ってたらわからへんよ。 まさか、俺らが怖いんっすか?」
ユウジは拳銃を構えたままだ。
「「・・ヘイヘイおっさんビビってる~♪」」
「まぁ、俺ら人を超えましたから~」
ユウジはやけに雄弁にしゃべっていた。
「おっさん、俺らね・・人助けをぎょうさんしたんすよ~!」
ヒロキは黙って聞いていた。
「俺ら・・死にそうな人をぎょうさん助けましてね~。 そしたら、いっぱいいっぱい、経験値をくれはりました~」
ユウジがそう言うと下ッパーズも調子に乗ってきたみたいだ。
「そうそう、俺ら人助けをいっぱいしたんだよな~」
「みんな苦しんでるから、手助けしてあげたんだよなぁ・・」
「そうそう、そんでもって、役に立たない警察官もいっぱい処分してさぁ・・」
「キャハハ・・そうそう、キャハハハ・・」
・・・
俺は聞きながら、こいつらを言葉をしゃべる魔物として自分に認識させる。
ユウジと下ッパーズは、言葉で死刑執行書にサインをした。
ヤンキーたちのしゃべるに任せて俺は聞いていた。
ふぅ・・俺は心を静かに落ち着けていく。
なるほど・・こいつ等は無抵抗な人や怪我をして動けない人、それらの人を経験値に変えたわけだ。
頭の中が妙に冴えていく。
そして、身体が深い湖に沈んでいくような感じを覚えた。
・・・
こいつらは人の姿をした魔物以下だな。
俺も自分や家族のためになら、他の人を見捨てるくらいはするだろう。
だが、自分の経験値のために人を狩れるだろうか。
それはないと断言できる!
俺はヤンキーどもを完全に敵として確定する。
そして、迷えば自分が殺される。
既に、向こうはやる気満々だ。
最初の一太刀だな。
いや、そんな余計なことは考えるな。
集中しろ!
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