第30話 買い出しも終えたし、帰るとするか


しかし、これでわかったことがある。

説明すると面倒だ!

説明できるほど俺も理解もしてないぞ!

そんなことを思いながら、買い物かごに乾きものやレトルト食品を入れていった。


これくらいあれば、家族全員で1週間くらいは何とかなりそうだ。

レトルトならまた買いにくればいい。

店長と呼ばれる男を見ると、まだ話し合っていた。

・・・・

このまま帰ってやろうかな。

いや、それじゃ万引きだな。

そんな姑息なことはしたくない。


俺たちは店長のところまで近寄り会計をお願いした。

「・・ああ、すみません」

店長は頭を軽く下げながら、レジの方へと一緒に行ってくれる。

他の店員は店内を片づけ始めた。

「しかし、お客さん、よくこんな時に買い物に来てくださいましたね。 何か・・ホッとしました。 それに助かりました」

店長はそう言いながらレジを打ってくれた。

案外、この店長冷静だな。

レジを打ち終わり、店長が声をかけてくる。 

「お客さん、このステータス画面で何ができるんですか?」

だから、わからんと言ってるだろ!

心の声です、はい。


「いや、わからんのです。 探りながらいろいろやってます。 ほんと・・それだけですよ」

俺の回答、間違ってないよな。

「そうですか・・ありがとうございましたぁ」

店長にお辞儀をされた。

まぁ、こっちはお客だしな。

「では、また買いにきますね」

俺は優と一緒に外へ出て行く。


優が近寄ってきてささやく。

「おやじさん・・もっと説明してやればよかったんじゃないか?」

優、お前もか。

「いや、無理だな。 説明しても理解できるかどうか。 それに、次から次へと質問攻めだぞ。 こっちだって、よくわかってないのに・・」

「あのスーパーのおっちゃん、やばいんじゃない?」

後ろを振り返りながら優が俺に言う。


「う~ん・・どうかなぁ? でもまた、あの扉に逃げ込めば、何とかなるんじゃないか?」

俺の回答に優は冷たいんじゃないかという風な顔だ。

「おやじさん・・助けてあげなくていいのか」

俺は迷ってしまった。

いや、助ける助けないじゃない。

優に説明することだ。

「優・・助けられると思うか?」

俺はそれだけを言った。

優は黙っている。


続けて俺は言う。

「誰でも彼でも助けてどうなる? 俺は勇者じゃないし、できないぞ!」

まだまだ続けた。

「それに、武器や防具・・全員分をじいちゃんが受け持つのか? 他人のために俺たち家族が死ぬぞ。 そんなのはごめんだ・・いや、言い方が悪いな、すまん。 ただ、助けれる場面であれば助けよう。 だが、そのために自分の命をかけることはないと思う」

優に怒っても仕方ない。


優は納得してるようなしてないような・・わからないな。

俺もわからん。

でも、優はまだ純粋な年齢だから・・無理するだろうな。

よく物語に出て来る英雄譚。

確かに一般市民の不安が高い時には評価される。

だが落ち着いて来るとどうか?

邪魔者になる。

ならなくても、誰もが意見を言えない独裁者扱いだ。

余程自分がしっかりしていないとロクなことにならない。

そして、あまりにも強大なために守ってきたはずの連中からうとまれる。

そして最悪は暗殺。

繰り返されてきたシナリオだ。

もしかして、魔女なんていう西洋の物語も、突出した何かの能力とかを危惧したんじゃないのか?

それで火あぶりの刑などにされたんじゃないだろうか。

・・・

やめた!

これ以上考えると、暗い闇に沈んでいきそうだ。


「さぁ、優帰るぞ。 それよりも、さっき無茶苦茶早く来れただろ。 車よりも速かったぞ、たぶん・・」

俺はそう言いながらカバンを前で担いだ。

優も考えるところはあるだろうが、前を向いて一緒に走り出す。


走りながら、少し思ったことがある。

あの店長・・・お客を放置して、自分たちだけが助かったんだな。

ま、そういうものか。

俺も同じ立場ならそうするだろう。


帰りも30秒ほどで家についた。

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