第18話 魔法という概念が存在しないのか?
さて、ここはどこなのだろうか。
やけに空気が汚れている感じがする。
王が上を向き空を見ると、星がかろうじて
飛行物体が移動しているのも見える。
とりあえず、文明のあるところのようだ。
自分の身体を確認。
「ステータスオープン」
レベル55。
!!
「・・スキルがほとんどなくなっている。 かろうじて言語翻訳と生活魔法だけは残っている感じか」
王はそうつぶやきながら考えてみる。
なるほど・・新たな世界に来る代償としてスキルを失ったのか。
しかし、私のスキルが少しでも残っているということは、この国も魔法が発達した文明なのか?
いや、余計なことは後でいい。
今なすべきことは、この国のトップに会い今の状況を伝えることだ。
王は即座に行動に移した。
歩きながら、もう一度念話を使ってみる。
『誰か、返事をしてくれまいか』
!!
失念していた。
スキルを獲得していかなければ使えないのかもしれない。
とりあえず誰か人を探そう。
ここは新宿、都庁横の公園、新宿中央公園。
王は高い建物が見える方向へ歩いていく。
大きな建物だ。
だが、魔素を感じない。
!!
まさか、技術だけで組み立てたのか。
なんと非効率なことをするのか。
ん?
この道路もそうか。
あの明かりも・・魔法ではない。
LED照明だが、王が知るすべもない。
魔素エネルギーを消費して光を作っているのか。
なんともったいないことをする。
魔素を循環したり取り出したりするのではなく、ただ消費させているようだ。
それではエネルギーの半分も得られまいに。
王はいろいろと観察しながら歩いていると、酔っ払い2人組の男に出会った。
良い気分のようだ。
右に左に揺れながら、フラフラおしゃべりをしながら歩いている。
王はゆっくりとした足取りで近寄って行く。
「少し、聞きたいことがあるのだが・・」
王は言葉をかけると酔っ払いは王の方を見てニヤニヤしだした。
「ん? おっさん、コスプレパーティか何かの帰りか?」
男たちはゆらゆらしている。
王はホッとした。
どうやら言葉は通じるようだ。
「コスプレパーティというのが何かわからぬが、一つ道を教えてもらいたい」
「道~? こっちが聞きたいよなぁ」
「あぁ、そうだな、しっかりしろ」
酔っ払いは二人して笑っている。
「で、どこへ行きたいのでありますか? 閣下は・・」
酔っ払いの一人が気をつけの姿勢をして、聞いてきた。
「ぎゃはは・・閣下ですね、閣下」
もう一人の酔っ払いもご機嫌のようだ
王のマントを見て判断したようだが、その直感は当たらずとも遠からずか。
「すまぬな、この国のトップの人に会いたいのだが・・」
王は真剣な顔で話している。
酔っ払い達は見つめあって大笑いした。
「ぎゃははは・・トップって、総理大臣か? そりゃいい」
「あぁ、そりゃいいな。 俺も会いたいぞ」
そんなにトップに会うのがおかしいのだろうか。
王は不思議そうな顔をする。
「この国のトップは総理大臣というのか。 その方に会いに行くにはどうすればよいのだ」
王がまた真剣な顔つきで訊く。
酔っ払い達はまたしても大爆笑だった。
「その方だってよ・・」
「そりゃ、官邸に行かなきゃな」
「そうそう、霞が関に行けば会えるんじゃね?」
酔っ払い達は、うんうんとうなずきあっていた。
「そうか、ありがとう」
王は礼を言うと軽く頭を下げた。
「じゃあな、コスプレおっさん」
「あぁ・・気をつけてな、コスプレおっさん」
そういうと、酔っ払い二人はフラフラと歩いて行った。
王はステータスを確認する。
スキルに探索1と気配察知1が獲得されていた。
さて、官邸というところと霞が関か。
ピッ!
王の頭の中にマップが表示される。
霞が関と官邸の場所を示す方向が見えたようだ。
なるほど、こちらへ行けばよいのだな。
まだ索敵範囲が狭いな・・だが、そのうち広くなるだろう。
しかし、この国、いやこの星は魔素がこれほどあるのに、無駄な技術を発達させたものだな。
我々の遠い過去にもそういった文明があったようだが。
だが、この魔素・・まるで制御の利かない洪水のような感じを受けるが、今は急がなければなるまい。
行くか!
王は軽く歩く速度を速め、一気に走り出した。
すぐ前に大きなビルが急接近。
表情を変えるでもなく、軽く飛び越える。
100メートルくらいはジャンプしただろうか。
垂直方向へだ!
目視できているものはいないだろう。
ビルの屋上で軽く足を踏み出し再加速。
マップ表示されている首相官邸方向へとジャンプした。
ビルの間を抜け、道路を駆け抜ける。
ほぼ直線で移動。
5秒もかかっていないだろう。
官邸付近に到着したようだ。
障害物にも傷をつけずに走り抜けた。
息も切れていない。
官邸の警備隊だろうか。
警備員がいる。
王は話しかけようと歩み寄る。
ただ、王の格好をみれば誰でも警戒するだろう。
警備員が接近してくる人物に気づく。
「と、止まれ!」
やや緊張した声が響いた。
警備員もゆっくりと近づいてくるマントを
王は立ち止まる。
「何者だ!」
最大級の警戒をしつつ警備員は声を荒げた。
時間も真夜中だ。
不審者に間違いない。
警備員はそう思う。
何者だ? はないだろうと思うが、警備員もそれ以外の言葉が出なかったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます