第14話 じいちゃん、すごいな!!


さて、俺は食料を確保しにスーパーエイトまで行こうかと考えていることをみんなに伝えてみた。

「危ないんじゃないかい?」

ばあちゃんが心配ばかりしてくれている。

ありがとう!

「ばあちゃん、大丈夫だと思うよ。 俺も優もそれなりに動けるし・・」

俺の言葉に優もすかさず援護射撃をしてくれる。

「ばあちゃん、大丈夫だよ。 忍び足といって相手に気づかれずに移動できるんだよ。 それに気配察知というのもあって、相手がどこにいるかわかるから・・」

「な、優と俺だけで行って来るから大丈夫だと思うよ。 危なくなったらすぐに帰ってくるよ」

俺はやや強引に承諾を得た。


「それはそうと、ばあちゃん。 早速、俺と優を回復してみてよ」

心配そうにしているばあちゃんに俺は言ってみた。

「どうやってするんだい?」

ばあちゃんは当然の質問をする。

「正直わからない・・だが、ゲームなら相手に手をかざして、治るイメージでヒールとか唱えるけどね。 まぁイメージが大事だから、回復しろって言ってもいいかもしれない・・たぶん」

俺は頭に浮かぶまま口にしてみた。


「ごちゃごちゃ言うね、わからないよ。 でも、治るイメージを持てばいいんだね」

ばあちゃんはそういうと、優に手をかざしてみた。

!!

ばあちゃんの手の平のあたりがほんのりと緑色に光る。

「おぉ・・ばあちゃんの手が光ってるぞ」

凛や颯も不思議そうに見つめている。


「ん? ばあちゃん・・なんか楽になった気がする」

優がつぶやく。

「そうかい。 そりゃよかったよ」

ばあちゃんはにっこりとして優を見る。

ほんとか?

俺もしてくれ、ばあちゃん。

「ばあちゃん、俺も頼むよ」

俺にも同じようにしてもらった。

ステータスを見ているとすぐにHPが回復した。

もの凄く気持ちいい。

ゆっくりとお風呂に浸かっている感じがする。

なるほど・・自動回復とはえらい違いだな。 


職業の選択は間違えていなかったようだ。

俺はそう思いながら、ばあちゃんにお礼を言う。

「ばあちゃん、ありがとう。 一気に元気になったよ」

マジだ。

ばあちゃんはご機嫌になったようだ。

「ちょ、ちょっと・・今ね、頭の中で経験値を獲得しましたって、聞こえたよ」

ばあちゃんが俺の方を見ながら言う。

「マ、マジか・・それって、凄いな。 回復すればするほど経験値が稼げるってことだろ」

最強じゃね?


「何にせよ、役に立てて良かったよ」

ばあちゃんが嬉しそうに言う。

ん? 

横で凛がブーブー言っているのが聞こえる。

「凛も、凛も・・」

いやいや凛、お前・・疲れてないだろ。

凛がばあちゃんにまとわりついている。

ばあちゃんはニコニコしながら凛にも同じように回復をしていた。

「ばあちゃん、身体があったかくなった気がするよ」

凛がばあちゃんに言う。

「そうかい、それはよかったよ」

ばあちゃんはニコニコしながら凛をギュッと抱きしめていた。

いいね。

俺は微笑ましく見ていたが、1つ頭に浮かんだ。


そうだ!

じいちゃんにも聞いてみよう。

早速だが、なんか作れるかな。

「じいちゃん・・なんか作れそう?」

俺はいきなり言葉を選ばずに聞いてしまった。

これは唐突だったか。

「わからんな。 何を作っていいのか・・イメージがなぁ・・」

じいちゃんは少し困惑しているようだ。

なるほど・・イメージを誘導してやれば作れるのかも。

俺はそう思って、パッと頭に浮かんだものを言ってみる。

「じゃあ、刀みたいな武器を作ってみてよ」

じいちゃんが俺の顔をジッと見て言う。

「どうやって作るんだ?」

・・・

当然そうなるよな。

どうするんだ?


いろんなスキルや魔法・・イメージだよな。

だったら、刀をイメージして、なんか素材を打ってもらえばいんじゃないか?

俺はそう思うと、道具箱を取りに玄関横の倉庫まで取りに行く。

ついでに家庭菜園用の金属の棒を3本持ってきた。

「じいちゃん、俺もよくわからないけど、この棒を金づちかなんかで刀をイメージしながらたたき続ければいいんじゃないかな。 これでダメだったらまた考えようと思う」

俺は思うままに言ってみる。

じいちゃんが俺の方を少し見ていたが、立ち上がると横の居間に移動した。

ちょっと様子を見てから買い出しに行こう。


棒を並べて金づちを振り下ろそうとした。

「あ! このままじゃ、畳が傷むな」

じいちゃんがつぶやく。

ガクッ・・そりゃそうだ。 

棒を乗せる台が必要だ。

要らない机と1畳用のじゅうたんを倉庫から俺たちは持ってきた。

たたみの上にじゅうたんを敷き、その上に机を乗せる。

机も高さ40センチくらいだろうか、作業するには座る椅子もいるんじゃないか。

そう思っていたら、じいちゃんが倉庫まで行って椅子を持ってきていた。

なかなか始まらないな。 


なんとか作業ができそうな雰囲気になる。

・・・

ほんとにこれで刀みたいなのが作れるのか?

ただの金属の棒と金づちだけだぞ。

そう思っているとじいちゃんが息を吐く。

お、始まるな。

じいちゃんが金づちを振り下ろす。


キーン・・カーン・・。


いい音するじゃないか。

みるみる棒が変形していく。

みんなが声を上げた。

「おお・・じいちゃんすごいな」

「うん、じいちゃんすごいね」

「かっこいいな・・じいちゃん」

みんな勝手に口走っていた。

なんかじいちゃん、気合が入ってきたみたいだぞ。


キーン、キン、カーン・・・!!

・・・・・

・・・

金づちを止めて、先ほどまで棒だったものを見せてくれる。


わおお!!

パチパチパチパチ・・・。

自然とみんなから拍手が出た。

凄いな、じいちゃん。

形は刀になってるぞ!!


さて、切れるのかな?

新聞紙を持ってきてもらった。

刃の部分を上にして新聞を落としてみる。

刀にかぶさった。

「・・・」

当然といえば当然か。

刀のイメージだけで打ってもらったからな。

どっかの妖刀みたく紙が切れるわけもないだろうし。

でも、新聞を引っ張ったら軽く切れた。


「じいちゃん、凄いな」

俺は思わずつぶやいた。

凄い技術だ!

「うん、じいちゃんすごい」

優も同じ意見だ。

じいちゃんかっこいい、凄い、の喝さいが周りから降り注いだ。


じいちゃん、70歳を超えて絶賛されてるな。

この世界は、年寄りにも理想なのか?

じいちゃんのモチベーションが上昇したのは間違いない。

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