セーラー服とエプロン

a.kinoshita

第1話

「はるちゃーん、いってらっしゃーい」

「日高先輩、行ってくるね!」

私は、軽く手を振った。

毎朝、これが登校前の日課になっていた。

「がんばってね」

「うん」

頷いて。

私は、桃山はるか、十七歳。女子高っぽい高校に通っている。

なぜ、ぽいのかというと、我が校には二割の男子が、ひっそりと在籍している。決して主張して来ないし、女子を立ててくれる。(逆らうと怖いから)

「おはよー」

「あ、はる来たー」

「はるー」

いつもの仲間たち。

「今日も日高先輩に会ったの?」

って言ったのは、連ちゃんこと一条連音つらね

学校というか、全国レベルの秀才。自称、天才。

それから、超料理上手の木戸きどめい。

「うん、会ったよ」

カバンを置きながら。

「いいなー」

って、めい。

私たちが言う、日高先輩は、旧姓花村日高。

今は結婚して月城つきしろ日高となっている、二年上の先輩で。

演劇部の部長で。

モデルのアルバイトもしていて。

本当にきれいで憧れの的だった。

当時、私も演劇部に入っていた。

しかも、サヨナラ公演は、

「はるは、いつか必ず部長になるから」

って言って。相方に指名してくれた。

でも。

卒業と同時に、十五歳年上の銀行マンと、あっさり結婚してしまった。

私は。

あの日から、時間が止まったままだった。

でも。

日高先輩が、また、このまちに越して来て。

毎朝、一階の、ほんの手すら届きそうなベランダから、私の姿が見えなくなるまで見送ってくれるようになってから。

ちょっとずつ、時計の針は動き出した。

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