第66話 待てドグマ
カズマとメイ、トライの三人がトランプで遊んでいる頃、マリはスイートウォーター城の援軍受け入れ準備に奔走していた。
こういう雑務は大抵マナかドグマが用意してくれていた。
ワイヤレスマイクでマナとドグマに聞きながらようやく500人分の宿と食事を確保する。
それが終わった頃にスイートウォーター城のヒデから援軍出発の知らせが届く。
マリは援軍の受け入れ準備は万全であると伝えた。
ヒデとの通信を終えた後マリはマナとドグマにワイヤレスマイクで通信を繋いだ。
マリ:「マリだ。援軍の受け入れ準備は整った。二人ともありがとう。」
マナ:「お疲れ様でした。マリ様。」
ドグマ:「いやいやこちらこそありがとうございます。お陰様で機械の操作は完璧に覚えました。」
マリ:「今からコンピュータールームへ向かう。二人はどうする?」
マナ:「私も今から参ります。」
ドグマ:「私も今から参りますがその前にひとつマリ様にお伺いしたい事がございます。」
マリ:「何だ?」
ドグマ:「この世界が救われた後マリ様はどうなさるおつもりですか?」
マリ:「え?・・・」
ドグマ:「カズマに聞きました。一緒に旧世界に行こうと言われているようですね?」
マリ:「ああ・・・」
マリはカズマの甘い誘いを思いだし赤面した。
ドグマ:「守衛隊長としては断固反対です!」
マリ:「そうだよな・・・」
寂しく思いながらも引き留められてマリは少し安心した。
ドグマ:「しかしひとりの人間ドグマとしては大賛成です!」
マリ:「何だって?」
ドグマ:「カズマという男は信頼できる男です。奴ならマリ様を必ず幸せにしてくれると信じています。」
マリ:「ちょっと待てドグマ・・・」
ドグマの声がやや上ずっている。
感情が高ぶりまた涙ぐんでいるようだ。
ドグマ:「男ドグマ!マリ様が幸せならば笑ってマリ様をお見送りいたします!」
マリ:「ちょっと待てドグマ!」
暴走しているドグマにマリが怒鳴る。
マリ;「私はまだ行くと言ってない!早合点するな!」
ドグマ:「え?そうなんですか?」
マリ:「カズマからそういう誘いがあったのは本当だがまだ返事はしていない!」
ドグマ:「そういえばカズマも返事待ちと言ってたような・・・」
マリ:「一時の感情で国を捨てる程私は愚かではない!」
ドグマ:「いや・・・ハハハ・・・そうですな・・・お恥ずかしい・・・」
マリ:「決めたぞドグマ、私は旧世界へは行かぬ!」
ドグマ:「そ・・・そうですか。そうですよね?ハハハ。」
マリの決断にドグマは乾いた笑いしか出てこなかった。
どうやらドグマの早とちりでカズマのプロポーズ的アプローチは失敗に終わったようだ。
マリ:「この話はこれっきりだ!いいなドグマ!」
ドグマ:「わ。わかりました。マリ様。」
マリはワイヤレスマイクの通信を切るとコンピュータールームへ向かった。
一時の感情で国を捨てる・・・
愚かだがそうしたい自分がいる。
ドグマへの宣言とは裏腹にマリはまだ迷っていた。
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