第54話 下心満載
その頃シュウはシューティングスター城に向かって森の中を進んでいた。
サンライト城とシューティングスター城のちょうど中間あたりー
敵と遭遇してもおかしくない領域に入りつつある。
もしアレクがカズマやマリに暗殺者を仕向けるとしたら鉢合わせになる可能性もある。
シュウは警戒を強めながら足早に森を駆け抜ける。
そうしているうちにシューティングスター城が見えてきた。
シュウはカズマにもらった『透明マント』をはおり姿を消す。
『これは本当に便利だべ・・・』
シュウは消えたままBシェルター周辺の地図を取り出す。
『今ちょうどこの辺りだとすると・・・こっちの平野に砦を建てればいいんだべか?』
シュウはそんな事を考えながらシューティングスター城を一周していく。
『これは下水道?だとすれば内部につながってるだな。』
シューティングスター城周辺の堀には水が流れていて下水道があった。
シュウの考え通りここはシューティングスター城の内部につながっていた。
排水溝をすすむと迷路のように張り巡らされていてどこに出るのかまるでわからない。
『これは骨が折れるべ・・・』
シュウは地道に迷路探索をはじめた。
食事を終えた後、カズマはドグマを呼び出し、組み立て砦のパーツの取り付け方を説明した。
パーツの接合部は全て釘などを使わずに取り付けらっれるように加工してあり、手順にしたがって組み立てれば通常の建物よりも頑丈な砦が完成するように作られていた。
カズマは組み立て砦の設計図と組み立て解説書をドグマに渡し、マナが手配した人員に明日から訓練を施すように指示した。
ドグマ:「ほー、こんなに簡単に砦ができるとはなぁ・・・」
カズマ:「まあ最初は手こずるだろうが慣れれば誰でも手早く組み立てられる。オッサンならすぐにできるよ。」
ドグマ:「ふふん、まあ自身はあるぞ!」
ドグマのドヤ顔に苦笑いしながらカズマはエレベーターにパーツを積み込む。
カズマ:「あくまでもこれは一般兵の人間に作ってもらうものだからな。オッサンはなるべく手を貸さないようにな。」
ドグマ:「ああわかってる!任せておけ!」
ドンと胸を叩いてドグマはエレベーターに乗り込んだ。
マナ:「ドグマ様~待ってください~。」
マナが三人分の食器を持ってエレベーターに駆け寄ってきた。
エレベーターの扉が閉まりかけた所をドグマが止める。
タイミングよくマナがスッとエレベーターに乗り込んだ。
マナ:「はぁはぁ・・・間に合った。あ、カズマ様食器を片付けてきます。」
マリ:「マナ!私も行く!」
マリはエレベーターに追いすがるがマナは素早くドアを閉める。
マナ:「マリ様ごめんなさい。外に出ないでくださ・・・」
ドグマ:「マリ様ステイ!カズマ!マリ様を頼ん・・・」
二人とも言いかけた所でエレベーターの扉が閉まる。
間一髪エレベーターに乗れなかったマリの背後からカズマは近づいた。
カズマ:「王女様。ドグマ隊長にお願いされちゃいました。お部屋に戻りましょう。」
カズマは茶化し気味にマリの肩をポンポンと叩く。
マリはハーと深いため息をついてからカズマを無視して部屋へ戻る。
マリはテーブルの席に座り突っ伏して頭を抱えている。
カズマはマリの向かい側の席に静かに座り、冷ややかにマリの頭を見ている。
カズマ:「そんなに俺と一緒にいるのが嫌か?」
うずくまったままマリが答える。
マリ:「嫌だ・・・」
カズマ:「俺がアンタを襲うからか?」
マリ:「そうじゃない・・・オマエはいずれいなくなる人間だからだ。」
カズマ:「・・・」
突っ伏した顔をあげるとマリは髪をかきあげてカズマを見つめる。
マリ:「この世界を救ったらオマエはメイを連れて旧世界に戻るのだろう?」
カズマ:「そうだな・・・」
マリ:「旧世界に戻ったらこの世界には二度と戻らない。」
カズマ:「そうだ・・・」
マリ;「二度と会えなくなるとわかっている人間を思うという事がどういう事か知っているのか?」
カズマ:「大体想像はつくが・・・」
マリ:「私の父は不治の病だった。助からないとわかっていたが亡くなってしまうとやはりとても寂しかった。」
カズマ:「・・・」
マリ:「いっそ死んでしまいたくなる程の絶望だ・・・もうあんな思いをしたくないのだ。」
カズマ:「俺と一緒に旧世界へ行かないか?」
カズマの意外な申し出にマリは驚いた。
マリ:「貴様正気か?」
カズマ:「俺は本気だ。この世界を救ったら俺と一緒になってくれ。」
マリ:「無理だ!ここを出ていくことなんてできない・・・」
カズマ:「大丈夫だ!皆には俺が話をする。土下座して皆を説得する。」
マリの瞳が潤んでいく。
カズマは立ち上がりマリに近寄った。
マリも顔を紅潮させて立ち上がる。
マリ:「でも・・・私は旧世界の事を何も知らない・・・」
カズマ:「旧世界の事は俺が教える。そして何があってもオマエを守る。」
カズマはマリを引き寄せ顎を持ち上げる。
マリの呼吸が乱れる。
カズマがマリに顔を近づけるとマリはそっと目を閉じた。
マナ:「マリ様~!ただいまもどりました~!」
エレベーターの扉が開きマナが大声で叫んだ。
あわててマリはカズマを突き飛ばし二人は離れる。
真っ赤になったマリと悔しそうにしているカズマ。
マナがマリに駆け寄るとマリはマナに覆いかぶさるように抱きついた。
マリ:「助かった・・・マナ・・・」
マナ:「うわわわわ・・・どうされました?マリ様」
力なくしがみつくマリをよろよろと支えるマナ。
マリの額に手を当てる。
マナ:「大変!すごい熱です!寝室にお連れします。」
マリ:「大丈夫・・・歩けるから支えていてくれ・・・」
マナはよいしょよいしょといいながらマリの肩を抱えながら寝室へ向かった。
二人の様子を見ているカズマ。
『あともう少しだったのに!』
カズマは心の中で叫んでいた。
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