第52話 名案だが気分は乗らず
カズマはモニターにシューティングスター城の衛星写真を映し出した。
カズマ:「シューティングスター城の攻略だが、基本Dシェルターの連中に任せる。」
マリ:「我々は参加しないのか?」
カズマ:「俺たちが参加するのは表向きの戦闘じゃない。」
シュウ:「少人数による潜入だべか?」
カズマ:「そうそう。Dシェルターの皆さんに陽動してもらって俺たちはシューティングスター城に潜入する。」
ドグマ:「モンスター軍をDシェルターの人間に任せて大丈夫なのか?」
カズマ:「今回と前回の戦闘でわかったがgunを使えばモンスター軍を防ぐのは問題ない。」
ドグマ:「攻撃の場合はまた別じゃないか?」
カズマ:「だからその辺もちゃんと考えた。まずこの地点に砦を作る。」
そう言うとカズマはモニターの地図を指さした。
シューティングスター城の城門から少し離れた所の平地。
そこに砦を建てるのがカズマの第一プランだった。
カズマ:「この平地に砦の資材を運ぶ。資材はあらかじめ切り分けして現地ですぐ組み立てるようにする。まあ30分もあればすぐ完成するだろう。」
ドグマ:「そんな・・・砦を30分で作る?無茶言うぜ・・・」
カズマ:「それはサンライト城の一般兵の皆さんに訓練してもらうよ。目標は10分だな。」
シュウ:「砦に籠って防御するだか。」
カズマ:「そゆこと」
マリ:「一般兵がモンスターに襲われるんじゃないか?」
カズマ;「そうならないように新兵器を使う。」
カズマは後ろに置いてあった布をとりあげ広げた。
不思議な事に布の広がった所の背後にあるカズマの体が消えている。
全員キツネにつままれたように首をかしげている。
ドグマ:「何なんだ一体?どうなってんだ?」
シュウ:「はー・・・なんかの魔法だべか?」
カズマ:「これは『透明マント』だ。この布で覆われたものは透明になる。」
マリ:「驚いたな・・・」
カズマ:「こいつを広げて作業すれば夜のうちなら敵に見つからずに作業できるよ。」
シュウ:「潜入にもコイツを使えるだな。」
カズマ:「そそ、それでシュウ君にお願いがあるんだがね・・・」
シュウ:「なんだべ?」
カズマ:「ちょいとシューティングスター城の侵入経路の調査に行ってもらいたい。」
ドグマ:「俺も行くぞ。」
カズマ:「オッサンは砦の建築訓練しきってよ。諜報活動はシュウが得意なんだからさ。」
シュウ:「了解だべ。」
ドグマは不満そうな顔をしている。
不満そうなドグマをなだめるようにカズマが声をかける。
カズマ:「適材適所だよオッサン。ただでさえ人材足りないんだ。アンタが頼りなんだ。」
ドグマ:「そうなのか?むむむ・・・ならば仕方ない・・・やってやるか。」
その様子を見てようやくマリに笑顔が戻った。
マリの笑顔を横目で確認したカズマは少し安心していた。
カズマ:「透明マントも万能じゃない。気配までは消せないと思うからモンスターの嗅覚には気をつけてくれ。」
シュウ:「了解、無理はしねぇだよ。」
カズマ:「最悪捕まった時は抵抗はせずに大人しくしてくれ。必ず助ける。」
シュウ:「気休めはいいっすよ司令官どの。戦争で人情を出しちゃ勝てねぇべ。」
マリ:「そんな言い方するなシュウ。仲間を救うのは当然だ。」
シュウ:「違うだよマリ様。オラを救おうとすれば死ぬ人間も出るかもしんねぇ。そういう作戦を司令官にしてほしぐねぇべ。」
カズマ:「そうだな・・・すまなかった。だが必ず生きて帰ってくれ。」
シュウ:「イエッサー!」
シュウはカズマに敬礼しながら叫んだ。
その後いたずらっぽく笑うとカズマもニヤリと笑い返す。
カズマ:「後は・・・今後のBシェルターの出方だな・・・」
ドグマ:「次はいつ来るのかわかるのか?」
カズマ:「うーん、正直しばらく攻めてこないと思う。態勢立て直すんじゃないかな?どうですマナ先生?」
マナ:「・・・カズマ様の護衛を強化しましょう。」
マナの言葉にシュウ、ドグマ、マリだけではなくカズマも驚いた。
カズマ:「俺?奴らは俺を狙うって事?」
マナ:「はい。私ならばサンライト城の軍略の要であるカズマ様の暗殺を考えます。」
ドグマ:「お前・・・怖い奴だな・・・」
マナ:「カズマ様だけではなくマリ様も危険です。」
マリ:「私も?」
シュウ:「マナさんならマリ様の暗殺を考えると?」
マナ:「あああ、ごめんなさい。」
カズマ:「いや、ありがとうマナ先生。俺はそこまで考えてなかったが十分ありえる。」
ドグマ:「よし!カズマとマリ様の護衛を増やそう。」
カズマ:「勘弁してよオッサン・・・俺にもプライバシーってものがあるんだよな。」
シュウ:「ん~だどもしゃあねぇべ。暗殺防ぐには護衛増やすのが定石だべ。」
マナ:「あああ、あの・・・カズマ様とマリ様は常に一緒にいてください。その方が護衛しやすいです。」
マナの言葉でカズマとマリはお互い見つめ合い目を見開いた。
マナ:「えとえと・・・例えばお二人はこのコンピュータールームに籠っていただいて、護衛は上階のエレベーターの前で交代で見張ります。」
ドグマ:「なるほど!確かにその方が守りやすい。」
マナ:「あと食事に毒が入っていないか私がチェックします。」
シュウ:「毒見でもするだか?」
マナ:「いえ、解毒の魔法をかけます。もし毒が混入していれば取り除く事ができます。」
ドグマ:「おー、さすがじゃないかマナ。これで完璧だな。」
マナ、ドグマ、シュウがうなずいているなかカズマとマリは顔を真っ赤にしてしかめっ面をしている。
ドグマ:「なんだ?カズマ。何か問題あるのか?」
カズマ:「いや・・・完璧すぎて何も言えねぇ・・・」
苦虫を噛み潰したような表情でカズマはマナをにらんでいる。
ドグマ:「マリ様、こんな奴と一緒に生活するとなると窮屈でしょうがこれも我が国の為です。」
マリは頭を両手で抱えて机に伏している。
ドグマ:「お願いしますマリ様!ここはどうかこらえてください!貴方の安全の為です!」
マリ:「頼む・・・何か他の対策を考えてくれ・・・」
机に伏したままマリは絞り出すような声で懇願した。
マナ:「お二人の身の回りのお世話をする為に私もここに常駐したいのですがそれは流石に邪魔になりますよね?」
マナの言葉にマリは跳ね起きた。
カズマも同時にマナに飛びつき二人は必至にマナにお願いする。
カズマ:「いいえマナ様!お願いします!」
マリ:「マナ!それでいい!是非そうしてくれ!完璧だ!」
二人の必至の剣幕にマナは驚いている。
シュウ:「ほんじゃ問題解決だな。護衛の手配はドグマ隊長に任せていいだよな?カズマさん。」
ドグマ:「ああ!それは任せておけ!」
マナ:「では早速今日から籠りましょう。私は荷物をとってきます。」
ドグマ:「俺も準備にとりかかるぞ。会議は終りでいいな?」
カズマは何か言いたげだったがそれを飲み込んだ。
カズマ:「ああ、各自取り掛かってくれ・・・」
シュウ:「じゃあオラはこのマント借りるだよ。ちょっくら行ってくるだ。」
カズマ:「何かあったらワイヤレスマイクで知らせてくれ。気をつけてな。」
シュウ:「行ってきます。」
カズマ:「王女、アンタも着替えとか生活に必要な物を取りに行ってくれ。俺はここを改造しておく。」
マリ:「わかった。」
マリも何か言いかけたがやめた。
カズマもマリもお互い同じ思いだったのだろう。
言わずともそれがわかっていた。
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