第38話 帰還

カズマはなかなか寝付けなかったがそれでも数時間は眠れた。


朝の5時にマナと待ち合わせした場所に行くとヒデとミツが待っていた。


カズマはやれやれと思ったが一応挨拶だけはしておこうと思った。




カズマ:「ではお二人ともまたお会いしましょう。」


ヒデ:「はい、勇者様。お待ちしております。」




カズマは気球を広げて膨らませる。


そうして気球が浮かびあがって来たところで乗り込んだ。




カズマ:「じゃあな。くれぐれも皆には隠しておいてくれ。」




カズマがそういってロープを話すと気球が飛び立っていく。


すると大広間に群衆が走ってきてカズマに手を振り叫ぶ。




群衆A;「勇者様~!お元気で~!」


群衆B「勇者様~!また来てくださいね~!」




皆口々に勇者様勇者様と連呼する。


カズマは頭を抱えた。




カズマ:「あんのクソオヤジ!」




カズマはヒデとミツを睨みつけた。


ヒデとミツは涙を流して抱き合っている。


その様子を見てカズマは叫んだ。




カズマ:「アホか!」




マナがケタケタと笑っている。


カズマはムッとしてマナを睨む。




カズマ:「何がおかしいんだよ?」


マナ:「いいじゃないですか。たとえ敵に勇者様の事を知られたとしても彼らが救われた事に比べたら大したことじゃないと思います。」


カズマ:「お前呑気だな・・・」


マナ:「私も昨日まですごく不安でした。でもカズマ様に労ってもらってわかったんです。カズマ様がくれた勇気があればどんな敵も怖くないって。」




カズマはあきらめたようにため息をついて嫌味を言った。




カズマ:「君たちはそれでいいよマナちゃん。でも僕の不安はどうなるの?昨日もあまり眠れなかったんですけど?」


マナ:「私の予測を話てもいいですか?すこしは不安が無くなるかもしれません。」


カズマ:「ほぉ・・・それは興味深いですなマナ先生。」


マナ:「あくまでも私がアレクさんだったらどうするかという話です。もし私がアレクさんならば勇者様に会いにいきます。」


カズマ:「会いに行くって悠長な・・・」


マナ:「ただ会いに行くだけではありません。直接勇者様に宣戦布告をする為、勇者様を直に見て能力を測る為です。」


カズマ:「だったらなおさら急いで帰らないと皆が危険じゃないか?」


マナ:「カズマ様はオークとゴブリンを撃退し、アレクさんに伝言をなさいました。『必ず会いに行くから待っていろ』でしたっけ?そう言われたらアレクさんは自分の目で確かめに来ます。おそらくたった一人で。」


カズマ:「一人で?スイートウォーター城の会談の時みたいにか?」


マナ:「あ、知ってましたか。あの時もヒデさんがアレクさんを挑発したんです。『和平を望むなら一対一で十分だ』みたいな。そしたらアレクさん護衛もつけずに一人で乗り込んで来たんです。」


カズマ:「か~相当な自信家みたいだな。」


マナ;「はい、だから私達がサンライト城に到着する頃にアレクさんは一人で勇者様に会いにきます。」




そう言うとマナはニッコリ笑った。

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